ホンダ・PCXでやり直す8輪生活(4):各部検証篇後篇
正直に告白すると、ホンダ・PCXに跨がってもヤマハ・NMAXのときほど昂揚感がない。たとえ完全なる「通勤のためのマシン」であっても、NMAXには乗り手をかき立てる「何か」があった。が、スムーズでジェントルでソフィスティケーテッド(笑)されたPCXには、それがない。
とは言え、PCXにはPCXの良さがある。振動のない滑らかな乗り味には、どこかクルマ的な快適さを感じる(こともある)。
まずは燃費の話
先日(6月19日)、納車直後の給油からヒト月と2日後に2度目の給油をした。
バージョンアップしてひどく使いにくくなってしまったHONDA Moto LINCがハジき出した燃費記録は「40.08km/L」。
ギリ、ほんとうにギリギリ、40km/Lを超えた。
他のユーザのインプレッションでは、「50km/Lを超えた」なんてコメントも散見されるPCXである。「40.08km/L」という燃費は最低最悪の部類に属すると思われるが、それでも「短距離・短時間+急発進・急加速」を繰り返す、しかも「じゃない方」の横浜特有の坂道が多い私の使用環境において、これだけの数値が出れば御の字だ。
給油は燃料計が目盛り1つになった時点で行ったのだが、給油量は「7.06L」であった。給油時に、つい勢い余って少し「お漏らし」してしまったので(恥)、「0.06L」はタンクに入っていないと思われる。
つまりPCXの「タンク容量=8.0L」からすると、まだ1Lはガソリンが残っていたワケで、1Lで40km走れるということは、1日の通勤で往復10kmしか走らない私の場合、単純計算であと4日はガソリンが持った計算になり、「給油は1カ月+1週間に一度で済む」という結論に至る。
早朝5時40分に拙宅を出て、深夜帯に近い時刻に帰ってくるクソ社畜な生活においては、ガソリンスタンドに寄るのも結構な手間なのだ。NMAXの「3週間に一度」という給油スパンからの大幅な改善は、「退屈なマシン」PCXから与えられた多大なる恩恵である。
なお、「アイドリングストップ機能」は最初の2日ほどしか使用していない。理由は後述する。
スイッチボックス
オートバイにおけるマンマシンインタフェースの中心を成すのは、なんと言っても左右のスイッチボックスである。シンプル極まりないNMAXのそれに対して、PCXの場合は機能と「ツッコミどころ」がテンコ盛りなのだ。
右側の使わないスイッチ2つ
スターターボタンしかなく、ゆえに書くことも何もなかったNMAXと違って、PCXの右側スイッチボックスにはスターター以外に2つのスイッチが装備されている。
アイドリングストップモード切換スイッチ
スイッチボックス上部には、PCXの最大の特徴であり、セールスポイントでもあるアイドリングストップ機能をON/OFF するスイッチが装備されている。アイドリングストップ機能は、まったく問題なく動作するし、最初はおもしろがって使っていた。
(朝は0.1秒でも速く発進したいからアイドリングストップはOFF、帰り道は別に急いでもいないからONにするか)
てな具合に。
が、(エンジンが止まっているのだから当然だが)どうしてもキモチ始動が遅れるのが性分的にどうしてもガマンできなくて、すぐにまったく使わなくなってしまった。
ハザードスイッチ
右側のスイッチボックスの、グリップと平行に親指を伸ばした位置にスライドスイッチがあると、私も含めた往年のライダーは「ヘッドライトのON/OFFスイッチ?」と思ってしまうが、 これがハザードスイッチである。
個人的には、
(ハザードはプッシュ式じゃなきゃダメなんじゃねえの)
と思うのだが、コストなのかスペースなのか、何らかの事情があってこの位置・このカタチに落ち着いたのだろう。
このPCXには片道10分の通勤でしか乗らないため、ハザードを“焚く”シーンはまずない。それでも、いざという時のために、NMAXには装備されていないハザードがあるのは喜ばしいことだ。
ちなみに「ハザード状態」をリア側からみると 、こんな感じ▼になる。
ウインカー・バルブがLEDなのはイマドキでいいのだが、ちょっと小さくないだろうか。
左側に隠されたナゾ
納車のときに丸富オート販売・藤沢店のスタッフさんに説明を受けて驚いたのだが、最近のホンダ車は、ウインカー・スイッチとホーン・スイッチの位置が上下逆になっているそうだ(その理由までは教えてくれなかった)。
御多分にモレず、PCXもこのように▼「上下逆」になっている。
私が思うに、ウインカーはともかくクラクションってのはとっさに鳴らさなければならないシーンが多いワケで、そういう場合に長年慣れきった位置にスイッチがないのは非常に問題である。
ホンダの開発者もその辺をちょっと不安に思ったのか、スイッチ自体はかなり大きめにデザインされている。それでも、先日右側から急に前方に割り込もうとしたバカグルマに向けてクラクションを鳴らそうとしたら、やはりコンマ何秒か遅れてしまった。
比較のために、NMAXの左側スイッチボックス▼をあえて掲載しておく。
うーん・・・わざわざこの「不朽のデザイン」をなぜ変える必要があるのか、私にはまったくわからないのだが・・・。
ちなみに、ウインカー・スイッチには節度感があって非常に好感が持てる。この点は、ふにゃふにゃウインカーのNMAXに対する大きなアドバンテージである。
ヘッドライトはすばらしい
LEDによるヘッドライトが「ロービーム=左右2灯」「ハイビーム=左右+中央の3灯」なのは、NMAXと同様である。
ハイビームにしても「3灯が全部バラバラに光っている」感のある仕様で、せっかくのLEDの恩恵が感じられなかったNMAXに対して、PCXのヘッドライトは「ちゃんとまとまっている」。
配光に不満はなく光量もじゅうぶんで、戸塚区小雀町周辺の「山道」ぐらいなら不安なく走ることができる。
シートの「段差」はイラない
最初に乗ったとき、エンジンの振動の少なさとともに驚いたのが、シートの「段差」である。
ごく自然な姿勢で前方に脚を投げ出して着座すると、この段差がジャマでしょうがないのだ。初期型PCXにはバックレスト然とした小さな「コブ」が付いていたようだが、その名残なのだろうか。
いずれにしても、ライダーの自由度を奪うだけのこの余計な意匠は、前篇で酷評したグラブレールに次ぐPCXのウイークポイントである。どこかのパーツ屋でいいシート出してないかなあと思って検索してみたが、さらに「段差」を強調したヤツとか、ゲヒンな装飾を施したヤツとか、「ローダウン」を謳ったヤツとかは多々あるが、「おお、コレだ!」という理想的なカタチをしたヤツはひとつもない。
しかたなく、段差をケツでツブしながら、座っている私である。
もうひとつ使わないモノがあった
フロントカウルの左側にはグローブボックスがあって、「ただの穴」に過ぎなかったNMAXに対して、リッパな「フタ」が付いている *1。
で、フタを開けると、そこに「アクセサリーソケット」・・・要は「電源」が付いている。
PCX公式サイトでは堂々と「スマホが充電できる」と謳っているが、「POWER OUTLET」と記されたカバー *2 に隠れているのはいわゆる「シガーソケット」なので、USBを使用するには変換プラグが必要である。
まあ私の場合は片道10分の通勤限定なのでコレを使うことはまずないのだが、万が一PCXでツーリングに出かけることがあれば、その時はきっと重宝することだろう。
なぜパーキングブレーキがないのだろう
NMAXのときも書いたが、フットブレーキもギアもないスクーターには「パーキングブレーキ」は必須だと思うのだが、NMAXと同様にこのPCXにも、なぜか装備されていない。ユーザの使い勝手を大きく左右するこの重要な装備を省くなんて、天下のホンダにあるまじき怠慢である。現に弟分である「Dio 110」には、ちゃんと装備されているではないか。
・・・と文句を言ったところで、付いていないものはしかたがない。幸いなことに、NMAXとは違ってPCXには、「 ADIO (アディオ)」というパーツ屋からアフターパーツが販売されている。納車後すぐに、Amazonで注文した。
アディオ(ADIO) ブレーキストッパー クロームメッキ PCX150(12年6月以降) PCX125(前後期共通:2010年3月以降) BK41105
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Amazon価格で「4,550円」。そんなにするのに、Amazonダンボールに梱包されていたのは「ビニール袋」と「紙」だけの、脱力なパッケージ。大キライなポップ体で「ブレーキレバーがロックできる~」って(泣)。
モノ自体も、とても4,550円もするシロモノとは思えない。
ホームページによれば従業員3人の小さな町工場なのでこの値段なのだろうが、それなりの規模のメーカーが大量生産すれば、せいぜい780円ぐらいだと思われる。
取付は、不器用な私でもさほど難儀せずにできた。
が、いかんせんレバーが短すぎて、フツーにグリップを握った状態からでは人差し指を思いっきり伸ばさないと届かない。手が小さいヒトだと、左手だけで操作するのは難しいと思う。
最低限の機能は果たしてくれるが、やはりツメがアマい。レバーをもっと長くして手前側に湾曲した形状にすれば格段に操作性は向上すると思うが、小さな町工場の加工技術では、これが限界なのだろう。
マニュアル類に同梱されていたハガキでホンダに「お客様登録」したら、ご丁寧に返信が届いた。
(▲お客様登録さえないヤマハに比べれば、すばらしいサービスっぷりだが・・・)
「お客様」にこんな余分な出費と面倒な手間と残念な使い心地を押し付けておきながら、「より魅力ある商品づくり」を目指す天下のホンダの開発者達は、心が痛まないのだろうか。
(この項おわり)