広島テレビ制作「ある夏の記録 (1967)」を見て思う

地方ローカル局で戦争関連ドキュメンタリー番組を放送するという話

一昨日(2015年7月6日)の日経夕刊最終頁([文化]欄)に

「戦争の記憶 映像で後世に 各地のテレビ局、番組内特集や再放送」

という記事が載った。

「沖縄や広島のローカル局で、過日の戦争を後世に伝えるためのドキュメンタリー番組を一挙放送する」という内容であった。

 

広島テレビ放送(広島市)は今年、これまで以上に原爆関連の報道に力を入れている。 〔中略〕 過去に制作した111本のドキュメンタリー番組から20本を選び、4月末から5月初旬にかけて深夜に放送。

原爆ドームの補修と被爆者の闘病生活を映した「ある夏の記録」(1967年)などの過去の番組を、当時の状況を記録した貴重な資料と位置づける。8月にも再び放送する。

- 日本経済新聞 2015年7月6日夕刊

「うわ・・・そりゃ見てえなあ・・・でも広島ローカルじゃ見られねえか・・・広島に行こうかな、でも8月の広島なんて、もうホテル空いてねえだろうなあ・・・」

なんて考えていたら、

 

広島テレビやNHK沖縄放送局はウェブ上に特設ページを作成。全国の視聴者に向けて、複数の番組を無料で動画配信している。

「まじか! ネットってすげえなあ・・・ インターネットを発明した人は偉大だわ・・・誰かは忘れたけど(笑)」

 

「ある夏の記録(1967)」

 

民放連盟賞金賞受賞「ある夏の記録」

放送日:2015年8月9日(日) 26:45〜(10日 2:45〜)

保存工事が進行する原爆ドームと、闘病生活に苦しみながら原爆病院で生涯を閉じる被爆者。その怒りと悲しみ、平和を願う心を描いた。

初回放送日:1967.12.24 45分

原爆ドームが、ちょうど私が生まれた頃に修復されたことは、この番組を見て初めて知った。8年前、現地に見に行ったとき、「ほぉ~鉄骨で補強してあるんだ・・・そりゃこんなんじゃ、ほっといたら崩れちゃうもんなあ」とは思ったが、その補修工事が自分が生まれた頃と時を同じくしていたとは、偶然とは言え感慨深いものがある。

▼撮影日:2007年9月14日 撮影者:私f:id:ToshUeno:20070914154013j:plain

そして、「原爆ドームの補修工事」と並行して、3人の幼い子供を持つ33歳の女性に原爆症と思われる病が見つかり、やがて極限までやせ細って死んでいくまでの経過をたどる。

戦争にまつわるドキュメンタリー番組は大概つらくて泣いてしまうけれど、この番組ほどつらいものは見たことがない。

あまりにもつらくて、つらすぎて、まいってしまった。

 

「天寿を全うする」ということ

かの戦争では、多くの人達が理不尽な殺され方で不意に人生を奪われていった。広島、長崎、沖縄、東京・・・

「大下靖子さんの夏服」については2年前にも一度書いたが、まあ誰も見ていないと思うのでもう一度書く。

2007年9月、広島平和記念資料館でこの服を見た”瞬間”に、人目も憚らず号泣してしまった。

 

大下靖子(おおしたのぶこ)さんの夏服
  http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/visit/vit_ex/vit_ex1/img/1_natufuku.jpg
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/virtual/VirtualMuseum_j/visit/vit_ex/vit_ex1/img/1_syumizu1.jpg

何が悲しかったかというと、この服を実際に見ると異様に小さいのだ。もちろん、経年変化で多少縮んでいるとは思うが、とても13歳の女の子が着るサイズには見えない。

 

6月28日 木曜日 天候晴

今日、数学の時間に、私たちの身長体重(身長137cm、体重32キロ)を全国高等女学校生徒の平均(身長141cm、体重34キロ)と比べてみますと、大分おとっているので、宮本先生がもっともっと体を丈夫にしなければいけないとおっしゃいました。

「大下靖子さんの日記」より

「身長137cm」は、下記リンクの統計によると現代の10歳女子の平均身長である。

そんな小さな女の子が、一瞬で全身を焼かれるような、理不尽な殺され方をした。その姿が、苦痛に歪んだ顔が、焼け焦げた夏服の向こうに見えた気がしたのだ。

ちっぽけな私には願うことぐらいしかできないけれど、すべての生きとし生けるものは、天寿を全うして欲しい。ナニモノも、ナニモノかの手によって理不尽な殺され方をされるようなことは、あって欲しくない。

もし、この「大下靖子さんの夏服」をまだ見たことがないという人は、ぜひ見に行って欲しい。私の拙い文章では伝わらないだろうが、実際に見れば、私の言っていることがわかっていただけると思う。

 

広島テレビが伝えてきたヒロシマ

日本テレビ(=広島テレビのキー局)は、くだらないバラエティ番組を垂れ流すくらいなら、地方ローカル局のこういった秀逸なドキュメンタリー番組を全国放送すべきだろう(「NNNドキュメント」で地方局制作の良質なドキュメンタリーを放送してるのは知ってるけど、それだけじゃなくてね)。

「広島テレビが伝えてきたヒロシマ」-まずは、貴重なドキュメンタリー番組の数々を「ネットで動画配信」してくれた広島テレビ関係者の方々のご配慮に、心より感謝する次第である。