「なんだかなあ」と阿藤快さんを悼む
阿藤快さんが亡くなった。享年69歳。
“生”を謳歌していない私からすれば、「69歳まで生きればじゅうぶんか」とも思うが、平均寿命でさえ80歳を超える現代においては、「まだ69歳」なのだろう。
デイリースポーツの記事によれば、
13日夜には、電話でスタッフと仕事の打ち合わせも行っていた。
だが15日に仕事先に姿を見せないことから、スタッフと家族に連絡を取り、自宅を訪れ、ベッドに横たわって亡くなっているのを発見した。
発見したスタッフによれば「苦しんだ様子もなく、“快さん”と呼びかければ起き上がりそうだった。眠ったまま亡くなったようだった。部屋のカーテンも閉まったままでした」という。
11月13日の夜まではお元気で、15日に亡くなっているのが発見された、とのことなので、ほぼ「突然死」に近い形で亡くなったのだろう。「苦しんだ様子もなく」「眠ったまま亡くなった」というのは、こう言ってはなんだが、「理想的な死に方」だと思う。
きっと、「なんだかなあ」と独りごちながら、静かに息を引き取ったのだろう。
「野獣死すべし」でのエリート役
「阿藤快、ついこの前、何かに出てなかったっけ?」と思ったら、「下町ロケット」第1話に、うだつの上がらない弁護士役で、いつもの「阿藤快節」で出演されていたのを観たばっかりだった。
阿藤快さんと言えば、やはり私は一連の松田優作主演作に、脇役として出演されていた印象が強い。
特に、稀代のハードボイルド映画「野獣死すべし」で、およそ東大出身のエリートには見えないのに(すみません)東大同窓生の食事会を仕切り、そこでウエイター役の鹿賀丈史と丁々発止のやり取りをするシーンが、とても印象に残っている。
しかし何万回見ても、このスチルはたまらんですなあ・・・
名脇役としての生き方
Wikipediaで出演されたテレビドラマを確認したら、「太陽にほえろ!」だの「西部警察」だの「特捜最前線」だのと、1970~80年代の傑作刑事ドラマに何度かクレジットされている。そのひとつひとつを覚えているわけではもちろんないが、おそらく、ほとんどが「悪役」としての出演だろう。
その大柄な体格とイカツい容貌から、若い頃は悪役が多かったと思うが、いつの頃からか、ひょうきんな役どころを得意とするようになっていた。
ご本人にどのような転機があったのかはわからないが、あえて“ケレン味”たっぷりに演じる芝居に思わず吹き出してしまうこともあったし、「あの顔を見たり、あの声を聞くとなぜかほっとする」という人も多かったのではないか。
私も、そのひとりだった。
またひとり、好きな役者さんが亡くなってしまった。
まずは、心から阿藤快さんのご冥福をお祈りいたします。