映画「ザ・ウォーク / THE WALK」は手に汗握る最高のスペクタクルだ
- 「ザ・ウォーク」+3D+MX4D
- 「世紀の芸術的犯罪」
- なぜかノスタルジーをかき立てられる
- ワールドトレードセンターを仮想体験できる
- 3D+MX4Dの効果を存分に楽しめる
- 「STAR WARS」より「ザ・ウォーク」を観るべし
「ザ・ウォーク」+3D+MX4D
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を観て文字どおり“覚醒”して、すっかり「3D+MX4D」にハマった私である。
昨日(2016年1月30日)は、今は無きワールドトレードセンターの、ツインタワー間の綱渡りを“体感”するために、まいど御用達の「TOHOシネマズ 川崎」で現在公開中の映画「ザ・ウォーク」を観てきた。
「世紀の芸術的犯罪」
映画「ザ・ウォーク」は、1974年8月7日、フランス人の「ザ・ワイヤー・ウォーカー」であるフィリップ・プティによって敢行された、ワールドトレードセンター:ツインタワー間の命綱無し(!)での綱渡りと、それが実行されるまでの経緯を描く。
そう、この映画で描かれるエピソードは、ひとりのクレイジーなフランス人による実話なのである。その内容は、“事件”から40年後の2014年8月7日に「History.com」というサイトで公開された、下記▼の記事に詳しい。
そして次の一文が、映画「ザ・ウォーク」のテーマを象徴してもいる。
On the 40th anniversary of the French aerialist’s high-wire walk between the Twin Towers of the World Trade Center, look back at what has been called the “artistic crime of the century.”(フランス人の空中曲芸師による、ワールドトレードセンター:ツインタワー間の綱渡りから40年目を記念して、「世紀の芸術的犯罪」と呼ばれた出来事をふり返る)
- The Twin Towers High-Wire Walk, 40 Years Ago - History in the Headlines
“artistic crime of the century” =世紀の芸術的犯罪。
いったいどういう罪に問われるのだろうか。完成間近のワールドトレードセンター (WTC)に無許可で忍び込んだのだから、日本の法律で例えると「住居侵入罪/建造物侵入罪」はまあわかるが、あとはどんな罪に問われるのだろうか。
映画の中で、綱渡りをしているフィリップに「あなたは100の法律に違反しています *1」と警官が警告するシーンがあるが、訴訟大国・アメリカには細かい法律がいろいろあるのだろう(知らないけど)。
まあ、「人騒がせ」な行動によってWTC関係者に迷惑をかけたことに違いは無いのだろうが、そんな些末な“罪状”はさておき、この突拍子もない芸術的行動をきっかけに、建設当時は「まるで巨大なファイリング・キャビネットだ」と揶揄されていた無機質な2つの塔が人々に愛される“象徴”に変わったからこそ、その行動から約40年経った今、こうして映画化までされたのだろう。
なぜかノスタルジーをかき立てられる
映画は、美しいパリの街並みから始まる。
主人公フィリップ (ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)が、「なぜ綱渡りに魅せられているのか」、「最初の仲間=共犯者であるアニー (シャルロット・ルボン)とどのように出会ったのか」を説明する、大事なシーンである。
「古き良き」を絵に描いたようなパリの街並みに対して、1970年代当時の「最先端」であっただろうニューヨークの街並みは、CGによって忠実に描かれている。さらに、1974年8月7日のその日、フィリップ・プティの空中大道芸を地上から見届けた人々の70年代ファッションに至るまで、細かく再現されている。
私はどちらの街にも行ったことはないが、なぜかとても懐かしい気持ちになった。それは、巨匠ロバート・ゼメキス監督によって作られた映像が、国や地域に囚われない、その時代特有の雰囲気を的確に映し出していたからだろう。
ワールドトレードセンターを仮想体験できる
フィリップ・プティと並んで、この映画のもう一方の主役が「ワールドトレードセンター (WTC)」である。
もちろん私は、かつてニューヨークの象徴であったその巨大な建造物を写真や映像でしか見たことはないが、
ビルの中央にエレベーターやライフラインを集中させ、それらを多くの支柱で囲み、さらに外壁全体に鉄骨の支柱を配して重さを支える、いわば鳥かごの中に鳥かごがあるような構造であった。
という特徴や“質感”までもが、スクリーンの向こうから伝わってきた。
それ程までに、徹底的にこだわってWTCの細部を映像で忠実に再現し、さらに加えて、3Dも作り込んでいるのである。
後日、「世紀の芸術的“偉業”」を讃えられて、フィリップにWTCの展望台のフリーパスが贈られた。その有効期限欄には、“Forever”と記されていたと言う。
エンディングで語られた、今となっては哀しいそのエピソードは、ロバート・ゼメキス監督によるWTCへの鎮魂詩だったのだろうか。
3D+MX4Dの効果を存分に楽しめる
2回目のMX4D
「MediaMation MX4D™」を体験したのは、先日(1月11日(月))観た「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」に続いて、今回が2回目である。
座席は、前回と同じ最前列右端の「A8」。
ほぼ満席だった前回と違い、今回は最前列の席は私たち夫婦しかおらず、後方にもパッと見で10人程度しかいない、ガラガラ状態だった。だったらB列の方が字幕は見やすいのだが、「視界のすべてがスクリーンで占められる」のは、やはり最前列なのである。
字幕はすべて0.5秒以内で読んで、あとは映像に視線を移す。かえって、集中力が高まって良い(と、自分に言い聞かせた)。
今回は、右側アームレストの前方にある「吹出し口」もしっかりと撮影。
それにしても、ここ「TOHOシネマズ 川崎」にMX4Dが導入されてから間もないのに、なんでこんなに傷んでいるのだろうか?
3Dの効果は絶大
「ザ・ウォーク」において、3Dはとても効果的に使われていた。クライマックスであるWTCでの綱渡りのシーンはもちろんのこと、そこにワイヤーを張るシーンでも、「まるでその場所にいるかのよう」という表現が少しもオーバーでないほど、臨場感を高めるのに一役買っていた。
特に、フィリップが初めて観衆を前にして綱渡りをして落下するシーンで、バランスポールがこちら側に飛んでくるのだが、思わず避けてしまったほどだ(笑)。
MX4Dのアクションは満遍なく
フィリップがWTCで綱渡りをするシーンでは、MX4Dの様々なアクションが駆使されるであろうことは容易に想像できたものの、(それ以外のシーンで使うところあんのかな?)と疑心暗鬼だったが、地味ながらも、随所に各アクションが散りばめられていた。
例えば、上述した冒頭のパリの街並みのシーンでは、フィリップが自転車で走り抜けるのだが、石畳の道路を自転車で走るときの凸凹具合を「ランブラー (地響き)」で表現していた。
(▲撮影場所:スズキ歴史館 *2 )
そして、「スター・ウォーズ」では認識できなかったアクションのひとつ「ウォーターブラスト (水しぶき)」は、
- パリの街角での突然の雨降り
- フィリップが観衆を前にしての最初の綱渡りで池に落下するとき
の2回も体験することができた。ちなみに水の量は「霧吹きで軽く吹きかけられる」程度で、ほとんど濡れることはない。
さらに、これまた前回認識できなかった「セント (香り)」も、フィリップがニューヨークの雑踏に立つシーンで2回“発生”した。ただ、あれは何のニオイなんだろう? 排気ガスのニオイでもなければ、決して「いいニオイ」ってワケでもない。他に例えようのないニオイであった。
総じて、「スター・ウォーズ」ほどシートが揺れることもなく、満遍なくアクションが使われた感じがした。「スター・ウォーズ」では“MX4D酔い”で気持ち悪くなってしまったかみさんも、今回は何ともなかったようだ。そういう意味では、「ザ・ウォーク」のMX4Dアクションは「初心者向け」と言えるかもしれない。
ただひとつ、フィリップが“視察”のため、WTCの屋上に最初に立ったシーンで、「ウィンド (風)」がまったく吹いてこなかったのは不満だった。(なんでここで風を出さねえかなあ)と思ったのは、私だけではないはずだ。
「STAR WARS」より「ザ・ウォーク」を観るべし
「ネタバレ」になってしまうので各シーンの細かい描写は避けるが、「世紀の芸術的犯罪」が完成するまでには数々の紆余曲折がある。そんなハラハラドキドキ *3 のシーンの連続に、手が汗でビッショリになってしまった。
個人的には、「大宇宙」というスケールと「未来」という架空性にカコツけた、しょうもない「戦争映画」なんかより、映画の世界にどっぷり入り込むことができて、よほどオモシロかった。
MX4Dの場合、通常の大人料金1,800円に1,500円が加算されるため、「3,300円」と、たかが映画を観るだけなのに結構なお金を取られる。
この時機、どうせ「3D+MX4D」に同じ金を払うなら、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」よりも、ぜひ「ザ・ウォーク」を観ることをオススメする。