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Honda Collection Hall 訪問記・四輪市販車篇(1):ホンダ車の本質はスポーツではない

というわけで、「Honda Collection Hall(通称ホンコレ)訪問記」である。今回からは「四輪市販車篇」である。

「もうこのネタいいよ」と、唯一のリアル読者であるかみさんにツッコまれ続けて久しいが、クルマにも触れておかないと自分の気が済まないので、誰にも相手にされなくても私は書くのである。



 

四輪メーカーとしてのホンダ

「四輪の地図を塗り替えようじゃないか」

2階北棟「四輪市販車コーナー」に足を踏み入れると、入口ヨコにある写真に掲げられたスローガンに、まず目を奪われる。
f:id:ToshUeno:20160212142925j:plainそのスローガンどおり、自動車製造に参入してから数十年で、日本国内では(日産の自滅があったとは言え)大トヨタに次ぐシェアを獲得してしまったのだからスゴい。

ま、2位と言っても、2015年の登録車のシェアは「トヨタ:45.1%」に対して「ホンダ:12.1%」と、4倍近く差を付けられているのだが。(しかしなんで日本人はトヨタ車ばっかり買いたがるんだろう?)

そもそもホンダは「スポーツカーメーカー」ではない

F1を始めとしたモータースポーツに積極的に参加しているために「ホンダ=スポーツ」というイメージがあるせいか、近年のミニバンにばかり偏ったラインナップから「ミニバン屋」などと揶揄されるホンダではあるが、もともとホンダというメーカーの軸足はスポーツカーにあるわけではない。ホンダは、ポルシェやロータスではないのだ。

フロント中央にドデカい「H」の文字を掲げたちっちゃな商用トラック「T360」が2階北棟フロアで唯一のお立ち台に上がっていることが、その証左でもあるだろう。
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ホンダの本質は、大衆に遍く受け入れられるようなクルマ=つまり大衆車を、サーキットで培った技術によって他社とは違った視点で作り出すことにある。 f:id:ToshUeno:20160212143631j:plain
今回はそんなホンダっぽいと私が考えるクルマ達を、「ホンコレ」2階北棟フロアの展示車から厳選して掲載する。

 

エポックメイクな大衆車:シビック

ホンダ シビック CVCC (1973)

「しーぶいしーしぃーー♪ ?ほぉんだぁーしぃびぃーっくっ♪」

私の記憶の中にある、最も古いクルマのCMである。オボロゲな記憶によれば、昭和の地方局でよく見られた「静止画(笑)」のテレビCMだったように思う。
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「CVCC」が何を意味するのか、もちろん当時はこれっぽっちもわからなかったが、「そのアルファベットは『シーブイシーシー』と読む」ということだけは、片田舎の保育園児に教えてくれたのである。
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まあそんなことはともかく、初代シビックは

  • CVCC・複合渦流調速燃焼方式エンジン
  • ストラット式4輪独立懸架サスペンション
  • 3ドアハッチバック・台形スタイル

という数々の革新を携えながら、日本のコンパクトカーの概念を確立したクルマだった。

ちなみに「CVCC」とは、下記のそれぞれの頭文字だそうだ。

  • C (Compound):複合・複式
  • V (Vortex):渦流
  • CC (Controlled Combustion):調速燃焼

ものすごく平たく言うと、「排気ガスから有害物質を取り除くために、燃料供給方式や燃焼室内部での燃焼方式をアレコレ工夫したエンジン」ということのようだ。

(詳しくはこの▼コラムの4, 5ページ目を参照してください)

www.honda.co.jp

ホンダ シビック(ワンダーシビック) (1983)

   I see trees of green, red roses too
   I see them bloom for me and you
   And I think to myself, what a wonderful world

サッチモの「What a Wonderful World」 が、力強く静かに流れるCMが鮮明な記憶として残る「ワンダーシビック」。

ちなみに「What a Wonderful World~このすばらしき世界」は、ベトナム戦争真っ盛りの時代のアメリカで作られた曲で、「この世界は素晴らしい・・・はずなのに、現実は決してそうではない」というこのテの曲にありがちなアイロニカルな背景を持つ。閑話休題。

上述の「シビック」や後述の「CR-X」もそうだが、(個人的には)ホンダのCMには記憶に残るものが多い。
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カクカクしたデザインはさすがに古さを感じさせるが、リア周りの斬新さは、とても30年以上前のクルマとは思えない。f:id:ToshUeno:20160212143750j:plain
このクルマのデザインのは、私がいまもっとも好きなモータジャーナリストである池田直渡氏によるこちら▼のコラムに詳しい。

thepage.jp

 

ちょっと“ヘン”なクルマ

二輪だと「モンキー」に代表されるようなちょっと変わったマシンを、ちゃんと四輪の方にも揃えているのがホンダである。

バモスホンダ (1970)

知る人ぞ知るヘンなクルマの代表格「バモスホンダ」。現行の軽商用車みたいなヤツは「ホンダ バモス」だが、この当時の「バモス」は車名が前に来るのが正しい。「リトルホンダ」や「ダックスホンダ」と同様である。

小学校3、4年(1976-1977年)の頃だったと記憶するが、私はこのクルマのプラモデルを持っていた。 自分で買ったのか、親か親戚にもらったのかはまったく覚えていないが、もし自分で買ったのであれば、ガキの頃の自分のセンスの良さに心底ホレボレしてしまう(たぶん誰かにもらったんだと思うけど)。
当時は塗装のスキルがなかったので、プラスチック素地(色はアイボリー系だった)のまんま、ただ組み立てただけのプラモデルを今でもよく覚えている。f:id:ToshUeno:20160212145151j:plain

ちなみに「バモス」とは、スペイン語で「レッツゴー」の意味だそうだ。つまり「レッツゴー!ホンダ」である。こんなクルマで、ホンダはいったいどこに向かおうとしていたのだろう。
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雨風が強い日には絶対に乗りたくないクルマだが、インパネまわりはちゃんと防水仕様になっているとのこと。「だったらなんでそこをアップで撮らねえんだよ」と、内装はこの写真▼しか撮らなかった自分を責めたい。f:id:ToshUeno:20160212145209j:plain

ホンダ シティ カブリオレ (1984)

1980年代のホンダを代表する名車「シティ」ももちろん展示してあったが、ここではあえて「シティ カブリオレ」の方を選んだ。シティもじゅうぶんヘンなクルマだが、カブリオレの方はもっとヘンだからだ。
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ソリッドカラーのグリーンで、これだけキレイな色にはなかなかお目にかかれないだろう。ただし「いまコレに乗れるか?」と問われたら、全力で「NO!」と答えるけど。
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内装もチェックしたら、3ペダルのマニュアルトランスミッションだった。この頃はまだ、マニュアル車が全然フツーだったのだ。f:id:ToshUeno:20160212144207j:plain

ちなみに、アラフィフオヤジのバイブル誌「昭和40年男」の最新号 (Vol.36) の表紙を飾っているのは、この「シティ カブリオレ」である。さすが、わかってるなあ・・・。

www.crete.co.jp

 

なんちゃってスポーツカー

決してスポーツカーじゃないのに「スポーツ」を名乗ったり、スポーツカー的な意匠を身にまとったり。そんな2台。

ホンダ バラード スポーツ CR-X (1983)

個人的にこのクルマは、クルマどうこうよりも「サロンミュージック」によるCMソング「Spending Silent Night」に尽きる。


ホンダ バラードスポーツ CR-X CM

1983年当時、このクルマにはたいして興味はなかったが、エアチェック(死語)したそのCMソングをヘビーローテーション *1 していた私であった。

この記事を書くに当たりサロンミュージックについて調べたのだが、なんとまだ活動中ということで驚いた。そして、Wikipediaによると、サロンミュージックは「渋谷系のパイオニア」だそうだが、言われてみれば確かに、「フリッパーズ・ギター」と似たような空気感(笑)が漂っているかもしれない・・・おっと、クルマぜんぜん関係なくなっちゃった。
何十年ぶりかで見た実車はかなりチープだったけれど、妙にカッコ良かった。
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ま、なんかのパズルみたいなテールランプは、時代を感じさせるけど。f:id:ToshUeno:20160212144345j:plain

「イタってフツーなんだけど、フシギとカッコいい」
やっぱりこういうクルマが、いちばんホンダっぽいと思う私である。
f:id:ToshUeno:20160212144402j:plain現行の「CR-Z」もその線に近いっちゃあ近いのだが、なんかちょっとカッコつけすぎなんだよなあ・・・。

ホンダ アコード エアロデッキ (1985)

スポーツカーでもなんでもないのに、なぜかヘッドライトがリトラクタブルなのが特徴の「アコード エアロデッキ」。スラントしたノーズとロングルーフの、絶妙なバランスが美しい。
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リアのハッチバックはルーフ後方からガバッと開くので「ガルウイング型テールゲート」と名付けたそうだが、2枚ないと(つまり片翼だと)「ガル」とは呼べないと思う・・・というツッコミも、この美しいデザインの前には無粋というものだろう。f:id:ToshUeno:20160212143958j:plain
上京した頃 (1986年) に街中でときどき見かけて(カッコいいなあ)と思った記憶があるが、当時は毎月2万円で生活し、月末はオフクロさんに送ってもらった「リンゴ1個」で飢えを凌いでいた私にとって、クルマを所有するなんてのは「夢のまた夢の、さらにまたもひとつ夢」であった。

私の人生の折々には、往時のクルマの記憶が重なっている。
それが美しいクルマであればあるほど、辛い思い出ばかりが蘇ってくるのもまた、不思議なものである。

(つづく)

 

*1:もちろんカセットテープなので、いちいち巻き戻しながら繰り返し聴いていた