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「普通自動車免許で125ccオートバイ」はアリなのか

オートバイ 社会

ごく一部で話題沸騰しているらしい「四輪の普通免許で125ccまでの二輪を乗れるようにする」規制緩和について、遅まきながらイチ四輪/二輪乗りとして考えてみた。



 

国沢さんの炎上商法で規制緩和を知る

数日前のYahoo! ニュースに、国沢さんのアオリ記事が掲載された (Yahoo!ニュースはすぐリンク切れになるので、下記のリンクは元ネタ)。

   興味深いことにSNSのフェイスブックやツイッターで、125ccまでの免許制度緩和のニュースに否定的なコメントを書いてるのはアイコンにアニメを使う層ばかり。口を揃えて「危険だ」「事故が増える」「やめろ!」。

国沢光宏

あー、またやってるよ・・・と、苦笑しながら読んだ。「アイコンにアニメを使う」って表現も、ちょっとヘンだし。「アイコンにアニメのキャラクターを使う」ならわかるけど。ま、どうでもいいかそこは。
こういう余計なことを書いて、わざと敵 (≒アクセス数) を増やすのはこの人の常套手段だが、もういいトシこいたおっさんなんだからさ・・・。

ま、国沢さんの“無駄グチ”はともかく、彼の主張はこうだ。

  • 原付免許 (つまり普通自動車免許も含む) で二輪は125ccまで乗車可能にせよ
  • 「講習+実技」は現行の原付免許取得時に実施しているものを倍増せよ
  • 125ccのオートバイは80km/hのリミッターを付けよ
  • 原付免許には年齢制限 (18歳未満は50cc限定)を設けよ

この「原付免許で125ccのオートバイまで乗れるようにする」という経産省による規制緩和の動きは、国沢さんの別の記事によれば2010年からあったそうだが、恥ずかしながら私は初めて知った。国沢さんありがとう。

そこで、二輪 (125cc、1,800cc) も四輪も乗るひとりのおっさんとして、その規制緩和はアリなのかナシなのか、国沢さんの主張を通して考えてみた。

 

「普通自動車免許だけで原チャリに乗る人」を考える

「クルマの免許がある人=原チャリに乗るテクがある人」ではない

ここでは、「普通自動車免許だけで二輪に乗っている人/乗ろうとしている人」について考える。つまり、「クルマの免許しか持ってないけど原チャリに乗ってる人、あるいは乗ろうとしている人」だ。

国沢さん曰く、

   実際、普通免許を持っているような人なら、50ccも125ccも大差ない。50ccバイクに乗れるテクニックあれば125ccだって乗れると思う。(※原文ママ)

国沢光宏

だそうだ。この2つの文はサッと読むと同じことを言っているように思えるが、実は違っている。「普通免許 (つまり四輪の免許) を持っている人」と、「50ccバイクに乗れるテクニックがある人」 は違うからだ。

「50ccバイク (=原チャリ) に乗れれば、125ccも乗れる」これはわかる。私も概ね同意する。ただし、「クルマの免許を持っている人=原チャリに乗れるテクニックがある人」ではないだろう。

四輪の免許しかない人は、はたして二輪になど乗るのだろうか

そこでふと疑問に思うのは、

普通免許しか持っていない人で、日常的に原チャリに乗る人はどれぐらいいるのだろう

ということだ。

ざっと検索した限りでは見当たらなかったが、はたしてそんな統計はあるのだろうか。私の数少ない (※両手でさえ余る(笑) ) 知人の例で考えると、普通免許しか持っていない人の中に原チャリに普段乗っている人はひとりもいない。
エビデンスとしての統計もなく、友達がいない私の想像に過ぎないが、二輪に乗った経験がなく、四輪の免許しか持っていない人は、原チャリには乗らないんじゃないだろうか・・・と思ったが、駅前の二輪車専用駐車場の原チャリの多さからすると、そんなこともないのだろうか。はたして実態はどうなんだろう。

いずれにせよ、国沢さんが主張するように件の規制緩和が実現した場合に問題なのは、

原チャリは制約が多くて乗る気にならなかったけど、125ccなら制約もないし、オートバイにでも乗ってみようかな

という人が、必ず一定数現れるであろうことだ。

これはヤバい。必ず事故が増える。ラッタッタとかパッソルとかが、チャリンコもまともに乗れない主婦層にバカ売れして事故が急増したのと同じような現象が、またこの国で見られることだろう。

なお、国沢さんは「125ccは80km/hでリミッターを稼働させれば安全面も確保できる」などと宣っているが、既に世の中に出回っている125ccのオートバイすべてにリミッターを付けることなど不可能なので、この提案はまったくナンセンスである。

 

50ccと125ccは同じか、それとも違うのか

上述したとおり、「50ccのオートバイに乗れれば、125ccも乗れる」という国沢さんの主張には、私も概ねは同意する。

問題は、「二輪に乗るのが初めての人にとって、50ccと125ccは同じなのか?」ということだ。「現行の規制を緩和する」ということは、「二輪初心者でも125ccクラスにいきなり乗れちゃう」ってことだからだ。

スクーターの例で考える

一口に「125ccのオートバイ」と言っても、スーパースポーツもあれば、オフローダーやモタードだってある。だが現代において小排気量のオートバイのメインストリームは、何と言ってもスクーターだろう。 ことスクーターにおいては、国沢さんのおっしゃるとおり、50ccも125ccも大差ないと思う。

私が現在、「通勤専用マシン」として愛用しているヤマハ・NMAXも、車格こそ50ccスクーターよりやや大きいが、最高速度はがんばってもせいぜい100km/h程度 *1 だ・・・
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・・・というのはガキの頃からずっとオートバイに乗っている私の感覚であって、二輪に初めて乗る人にとっては、50ccの最高速度=60km/hと100km/hとでは、雲泥の差があるのではないのだろうか。

スーパースポーツの例で考える

国内メーカーのラインナップには加えられていないが、125ccクラスにはこんな▼本格的なロードスポーツもある。

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(画像出典:YAMAHA YZF-R125 ABS ('15EU) :レッドバロン)

www.bikebros.co.jp

あくまでネットで拾った情報だが、このYZF-R125は最高速度も130km/hぐらいは出るそうだ。似たようなマシンは、ホンダにも、外国メーカー (アプリリア、KTM) にもある。

まあ今日日、教習所にも行かずにいきなりこんなマシンに乗る人間はそう多くはないだろうが、国沢さんが主張する規制緩和が実現すれば、(制度上は) いきなりこんなのにも乗れちゃうわけだ。

現行の免許制度で考える

現行の免許制度では、普通自動車免許を持っている人が125ccの“クラッチ操作あり”オートバイを載るための免許「小型限定普通二輪免許」を教習所で取得するためには、技能教習を10時間も受ける必要がある。 

www.jmpsa.or.jp

そして、“クラッチ操作なし”125ccを乗るための「AT小型限定普通二輪」でさえ、求められている技能教習は8時間だ。(いったい、8時間も何をやるんだろう?)

www.jmpsa.or.jp

技能教習を受けたからってウマくなるわけではもちろんないが、二輪特有の挙動を身体で覚えたり、「自分がいかに乗れないか」を知るためには、必要な時間だろう。

それをいきなりスッ飛ばして、100km/hものスピードが出て、ちょっとしたことで転倒し、ひとたび転倒すれば命を落とすことさえある乗り物にいきなり乗ることを許しちゃうっていうのは、無理があるんじゃないだろうか。

 

結論:やはり規制緩和はすべきでない

国沢さんは「たかが125ccクラスで、こんな厳しい免許制度を導入しているのは日本だけだ」とおっしゃるが、それを言ったら「二輪はノーヘルでもオッケー」な国だってある。
ここは日本だ。狭い国土に造られた狭い道路に、歩行者と自転車とオートバイとクルマがひしめき合っている。なんでもかんでも、外国に合わせる必要はないのだ。

125ccクラスでも、とりあえずアクセルをヒネれば前に進むスクーターなら、平坦で真っ直ぐな空いている道を走る分には、誰でもすぐに乗れるかもしれない。ただ、道路には高低差もあればカーブもある。(地域差はあるが) 渋滞なんか日常茶飯事だ。マンホールやペイント等の、さまざまな“トラップ”もある。雨の日には、そのトラップがより強力になる。

二輪特有の「事故パターン」を挙げればキリがないけれど、四輪と違って二輪は簡単にコケて、コケれば身体が路上に放り出されるのだ。50ccよりパワーがある125ccでは、コケたときに身体が受けるダメージも当然大きくなる。そのいちばん重大なマイナス面をスルーして、プラス面ばかりで持論を展開するのは片手オチというか、ズルい。

私は、国沢さんが大好きな「アイコンにアニメを使う層」でもなければ、「極めて行動範囲の狭い人達」にも属さないつもりだし、125ccクラスが活況を呈して、二輪メーカーが元気になるのは喜ばしいことだとは思う。

でも、「現行の原付免許で125ccのオートバイまで乗れるようにする」規制緩和は、「四輪に乗れるからといって、二輪にも乗れるわけではない」というシンプルな真理に鑑みれば、やはりすべきではないと思う。

 

*1:私が実際に、一般道で100km/h出したわけではありません