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スリ抜けもしないオートバイなんて

長年オートバイに乗っている身としては、何をいまさら?という気もするが、「スリ抜け」について考えてみた。



 

伊豆の帰り道の渋滞コンボ

先日 (2017年2月4日)、伊豆半島沿岸部をぐるりと一周した帰り道での話。

沼津市の市街地を抜けて東名道に入り、一気に拙宅を目指すのが私の伊豆ツーリングの常である。通い慣れた道であるゆえ、カーナビに頼る必要はまったくないのだが、帰宅時間を知るために東名道・沼津IC近くのガソリンスタンドで「目的地=自宅」にセットした。

カーナビが導き出したこの日の帰宅予想時刻は「19時5分」。

はたして、東名道はいつもどおりの渋滞であった。土日祝日の夕方以降、東名道・上り線が渋滞していないことなどめったにないので、(ああ、やっぱ渋滞か)ぐらいの感覚だが、この日は事故渋滞 秦野中井~横浜町田 17km」であった。

((一般道に比べれば遙かに運転の難易度が低い) 高速道路で事故ってんじゃねえよ・・・)と思うが、そもそも「車線変更の前にウインカーを出す」といった、ごく基本的な操作すらしようとしない横着者が多すぎるので、完全自動運転な世の中にでもならない限り、こうしたツマラない事故渋滞はなくならないだろう。本当に嘆かわしいことだが、それが現実だからしかたない。

一度入り込んだら、10km以上そこから逃げ出すことができない高速道路での渋滞ほどウンザリするものはないので、東名道はとっととあきらめて秦野中井ICで下道に下り、西湘バイパスに入る。

(あー、やっぱり西湘バイパスは空いてる、よかったー)

でも私は知っている。この“開放感”が、束の間のものであることを。(いや、ひょっとすると今日は違うかもしれない・・・)そんなわずかな期待も虚しく、やはり国道134号との合流が近くなると、いつもどおりの大渋滞が待っていたのだった。

国道134号は、数年に渡って延々と続いた拡幅工事が2015年に終わり、道幅がだいぶ広くなって路側帯側をスリ抜けできるのでまだマシである。いちばんの問題は、その後なのだ。

新湘南バイパスに入るとガラガラでひと息つくが、その後の国道1号では、また延々と渋滞が続く。しかも、一級国道の“ボス”のくせに旧態依然とした道幅の国道1号は路側帯側のスペースがほとんどないため、車列の間を走るしかない。

私の場合、渋滞によって完全に流れが止まっているか、あるいは流れが滞って、オートバイが自律走行できないような遅いペースの時しかスリ抜けはしないが、車列の間のスリ抜けで問題なのは、「協調性のないクルマ」によって生じているスペースに、隣の車線のクルマが“ノー後方ルック”で突っ込んでくるケースである。車列の間のスリ抜けは、本当にギャンブルそのものなのだ。

結局、戸塚に入って脇道に逸れるまで延々と渋滞は続き、這這の体で拙宅にたどり着いたのは、カーナビ予想到着時刻の「35分後」であった。

 

「スリ抜けはダメだ!」という主張

帰宅後、「楽天マガジン」でクルマ/オートバイ雑誌に片っ端から目を通した。絶景大好きオートバイ雑誌「BikeJIN」2017年3月号の巻頭特集は、「カッコよく乗りたい」。ライディング指南からウェアの着こなしに至るまで、「イマドキのカッコいい乗り方」を様々な角度から教示してくれる、ありがたい企画である。

BikeJIN/培倶人(バイクジン) 2017年3月号 Vol.169[雑誌]

BikeJIN/培倶人(バイクジン) 2017年3月号 Vol.169[雑誌]

 

まずはお約束とばかりに、「カッコ悪い乗り方」の例が冒頭に挙げられている。その中に「スリ抜け」に関する記述があって、ちょっと驚いてしまった。

周囲をヒヤッとさせる危ないスリ抜け

渋滞に巻き込まれないのがバイクの特権・・・と誤解されがちだが、そもそもスリ抜けは立派な交通違反渋滞しているからといって、その横を走り抜けるのはNG

アクシデントを避けるためにも、交通ルールの範疇でバイクの機動性を活かそう。

- 「BikeJIN」2017年3月号 33ページより

「スリ抜けは立派な交通違反」「渋滞している横を走り抜けるのはNG」だそうだ。ふーーーん。本気で書いているのか、マスメディアゆえのタテマエなのかはわからないが、オートバイ雑誌のくせに渋滞時でさえスリ抜けを“完全否定”するとは、私には新鮮な驚きであった。言うにコト欠いて、「渋滞に巻き込まれにくい」という数少ないバイクの特権を「誤解」だとは・・・。

  • スリ抜けは交通ルール的にはグレー (ビミョー)
  • 渋滞している横を走るのはやむを得ない

・・・それが、多くのオートバイ乗りにとってのコンセンサスではないだろうか。念のため「スリ抜け 交通違反」で検索して、ざっと確認した限りでは、ネット上の意見も概ねそのとおりのようだ。

 

どうしてオートバイに乗るのか

ちなみに私はクルマにも乗るが、クルマに乗っていて渋滞しているとき、オートバイがヨコをフツーに (無節操な爆音とかを立てずに) 走り抜けるぶんには何とも思わない。

逆に、ノロノロ運転のクルマといっしょになってヨタヨタと進むオートバイをときどき見かけるが、もしそんなヤツが自分のクルマの前にいたら、(早くスリ抜けして前に行けよ)と思う。見るからに不安定なオートバイほど、視覚的にジャマな存在はない。周りのクルマに余計な気を遣っているのか、あるいは臆病またはヘタクソ過ぎてスリ抜けできないのかは知らないが、もしBikeJIN編集部のように“ポリシー”でやっているのだとしたら、まったく以て無意味なポリシーだと個人的には思う。

大昔はともかく、現代のクルマは至って快適で、安全な乗り物である。

このクソ寒い季節でも、エアコンから温風は出てくるわ、シートだけでなく、最近はステアリングホイールまで温かくなったりする。だから近所のコンビニに行くような格好で、気軽に乗り込むことができる。ヘルメットで髪がペチャンコになることもない。

Bセグメントの安グルマでも衝突安全性は担保され、「自動ブレーキ」や「車線逸脱防止支援」などの衝突回避システムもどんどん普及してきている。

その一方、オートバイはどうか。

電熱ウェアで全身を包み込むことができるお金持ちはともかく、私を含めた多くのライダーは未だアホみたいに重ね着しつつ、それでも早朝や夜間は寒さに凍えながらマシンに跨がっている。雨が降ればズブ濡れになり、風が吹けばマシンもろとも飛ばされそうになる。

安全性能においても、ようやくABS装着が義務化されようとしているというレベルだし、そもそも「放っておいたら倒れる」という二輪の性質上、クルマのような安全性能を求めるのは不可能・・・

www.itmedia.co.jp

やっぱホンダはスゲーな・・・。ま、2017年の現時点では、放っておいたらオートバイは倒れ、ライダーは投げ出され、路面に叩き付けられるわけだ。

そんな、天候の良し悪しや季節に翻弄される過酷さと、二輪の乗り物が本質的に持つリスクを自ら背負っているライダーが、クルマという安全快適な乗り物が大挙して発生させる渋滞に付き合わなければならないという道理はない。

どうしてオートバイに乗るのか。それは、自由な乗り物だから。

過酷さやリスクと引き換えに手にした自由を、快適かつ安全に移動している人間たちに奪われる筋合いはない・・・それが、私がスリ抜けをする大義名分である。

 

交通ルールの他に守らなければならないこと

とは言え、「ルールはルール」である。こちら▼の方が図解付きでまとめてくれているように (わかりやすい!) 、「正しい (という表現が適切かどうかはわからないが)」スリ抜けをしなければならない。

sites.google.com

なぜなら、今年(2017年)の11月4日までは、警視庁および各道府県警の交通課の皆さんに決してパクられるわけにはいかないからだ。

toshueno.hatenablog.com

それまでにパクられたら、今度は暗黒の「60日間免停」なのである(恥)。拙宅から駅まで原付二種スクーターで通っている現在、退屈な平日に作り出した唯一の「楽しい時間」を奪われることだけは、どうしても避けたい。

上で引用した「いわゆるリターンライダー=遠藤恒雄さん」の記事によると、「正しい」スリ抜けのポイントは主に2つ。

  1. いわゆる「イエローカット」はしないこと
  2. 路側帯は走らないこと

私の場合、イエローカットだけはしないように普段から心がけているので、まずこっちは問題ない。問題は「路側帯」の方である。

だいぶ前に「渋滞時の高速道路において、二輪は路側帯通行を許可すべし」と書いたとおり、

toshueno.hatenablog.com

高速道路の渋滞にハマった時はもちろんのこと、冒頭でも書いたとおり、スリ抜け時は基本的に路側帯側を通る。なぜなら、そっちの方がより安全だからだ。遠藤さんは「路側帯を通るのは初心者が多い」なんて書いているが、リスクの大小にスキルは関係ない。

高速道路においては、車列の間を走ると“ノー後方ルック”で車線変更するクルマは頻繁に出現するが、いきなり路側帯に停めようとするクルマは滅多にいない。一般道では、左側にガードレールしかないのに突っ込んでくるクルマは殺人鬼でもない限りいないはずだから、コンビニ・ファミレス・ガソリンスタンド・その他もろもろのロードサイドにある店舗の駐車場の入口や、脇道にさえ注意すれば良い。どちらがリスクが大きくてどちらが小さいかは、言わずもがなだろう。

でも悲しいかな、リスクが小さい方が交通ルール上は「アウト」なのだ。不条理な世の中だとは思うが、そもそも道路交通法は二輪のことなんて考えていないのだからしかたない。だから、高速道路の渋滞は路側帯には極力入らないように左端を通り *1、ICにたどり着いたらとっとと下りるようにしている。

一般道では・・・まあ「路側帯以外の左端のスペース」なんて皆無なので・・・ま、もしパクられたら、泣いて懇願でもしてみよう。いいトシこいたおっさんがマジ泣きでもすれば、気持ち悪がって見逃してくれるかもしれない。

そして、交通ルール以上に守らなければならないことがある。「絶対にスリ抜けで事故らないこと」だ。事故った時点で、“負け”である。BikeJIN編集部のような「スリ抜け断固否定派」のヤツらに、「スリ抜けNGの論拠」を与えてはならない。

決してパクられないよう、 決して事故らないよう。街や、道路や、クルマの状況に対する注意力を切らさず、冷静かつ淡淡と、スリ抜けをするのみである。

 

*1:まあ路側帯側の車線を踏んでいるクルマも珍しくないので、ほぼほぼ無理だけど