波勝崎で猿を見て人間の愚かさを嘆く:後篇

2017年2月18日土曜日、一大観光地「波勝崎」訪問記の後篇。

猿の生態と人間の愚かさについて、さらに長井崎に関して知った新事実についても書く。

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波勝崎で波と猿に戯れる:後篇

(前篇からつづく)岩場の突端に立って写真を撮っていたら波をモロかぶりしそうになり、驚いてコケそうになり、冒険家気取りもすっかり醒めて、そんなんしてるうちに海辺で遊ぶ猿たちをコレ見ヨガシな一眼レフで撮影していた中年夫婦はいなくなっていた。

売店のある場所から海辺までは、かなり歩きにくくキケンな岩場を通る必要があるため、大概の客は寄り付こうとしない。猿は大勢いるが、今なら人間は貸切状態である。よし、今のうちに砂浜の方に移動しよう・・・。

海猿

これを「砂浜」と呼べるかどうかは非常に心許ない。

「石浜」という言葉でもあれば、そう呼ぶのがもっとも相応しいだろう。ただ、小さな石ころが敷き詰められた浜辺は、砂場よりも全然歩きやすい。だから猿たちも、ここで遊ぶのだろうか。
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具体的に何をしているのかと言うと、例えばケンカしたり(▲写真右側の2匹)、

誰かが捨てていったのか、それともたまたまこの浜に流れ着いたのか、ずいぶんキレイなバレーボールで遊んだり(写真▼中央)、海を眺めたり、海藻を食ったりしているのだった。f:id:ToshUeno:20170218141323j:plain

このクソ寒い中、別に水浴びがしたいわけでもないようだ。波打ち際で何かしていても、波が来れば必死こいて走って逃げたりして、その様子がなんとも微笑ましかった。
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老猿と海、そして僕のオートバイ

見たところ海辺に来るのは若い猿ばかりで、長老格は離れたところから海を眺めることが多いように思ったのだが、この猿▼は例外だった(実際に何歳なのかはもちろん知らないが、私には年寄りに見えた)。
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それにしても、「会津」という海から遠く離れた地域に生まれ育ち、海に憧れながら少年期を過ごしてきた私からすると、こうして一生を海のすぐ傍で過ごせるなんてうらやましい限りだ。

私も願わくば海の近くに家を買いたかったが、津波も恐いし、そもそも藤沢にしろ茅ヶ崎にしろ海辺の街はどこも住宅価格が高いので、稼ぎの少ない私には手が出なかった。

でも猿と違って、私はオートバイに乗れる。

オートバイに乗れば、いつでもこうして海に来ることができる。この猿たちは死ぬまでこの海の傍で暮らすのだろうが、私も死ぬまでオートバイに跨がっていたい・・・と書くと、まるで事故って死にたいみたいだが、そういう意味ではない。

荒波の前に佇む猿を撮りたい

とにかくどの猿もせわしなく動いて、じっとしているということがほとんどない。

よって、その姿を正面から写真に収めるのも難しい。こんなとき、大枚はたいて買ったPanasonic「DMC-LX9」の「4Kフォト秒間30コマ連写」機能があれば・・・なんで忘れちゃうかなあ・・・。

この日は風が強かったせいか、波も荒々しかった。荒波をバックに猿の姿を撮りたかったのだが、なにぶんスマホのカメラには光学ズーム機能がないので、アップで撮ろうと近づくと、どの猿も逃げてしまう。
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南伊豆町ポータルサイト「波勝崎苑」紹介ページには「約300匹の親子猿が人なつこく寄って来ては愛嬌をふりまいています」なんて書かれているが、ぜーんぜん。私はこの国でベスト1万に入るぐらいの動物好きだと自認しているが、その私をもってしても、猿たちの頑なな心を開くことはできなかった。

そんな中、この猿▼だけはワリと逃げなかった。
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ただ、「勝手に撮ってんじゃねえよ」と言っているように見えなくもない。

進化の過程で失ったもの

じゅうぶん猿を観察し終えた後、この丸くて巨大な石の上を、自分の歩幅が届く範囲で足を置くのに適当な石を探しつつ、上に乗っても大丈夫か・崩れやしないか確かめながら、這這の体で売店まで戻った。

距離にすると30mぐらいしかないのだが、5分ほどかかっただろうか。
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いっぽう猿たちは、ものの5秒である。

石の上をぴょんぴょんと飛び跳ねながら、あっという間に向こう側にたどり着く。人間は猿より「進化」しているらしいが、なぜあの身体能力を失ってしまったのだろうか。

 

長井崎の真実

さて、波勝崎を離れた後は、いつもどおり休憩もそこそこに、西伊豆沿岸部のグネグネ道を堪能しながら帰路に着いた。

長井崎に着く頃にはすっかり陽も傾いていたが、急いで帰ったところで神奈川県に入ればどうせ渋滞だらけなので、のんびり帰ろう。そうだ、Googleローカルガイドのハシクレとして、前回来たときにうっかり撮り忘れた「長井崎中学校」を撮影していこう・・・。
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この写真▲をGoogleマップにアップするために、「長井崎中学校」を検索して驚いた。ただの中学校なのに、なぜかクチコミが49件もある (2017年2月22日現在)。なんでだ??

コメントを読むと、どうやらここ長井崎中学校が「ラブライブ!サンシャイン!!」とかいうアニメの舞台になっているらしい。Googleマップのコメントも、ほぼそのアニメファンのもので埋め尽くされている。いわゆる「聖地巡礼」ってヤツだ。なるほどね。

前回ここに来たときに書いた記事に「若者たちがこんな場所に来るのは、きっと例のあのゲームのせいだ」なんて書いたが、とんだマト外れだった。

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確かに、(あのゲームをやってるにしちゃ、あんまりスマホ見てねえなあ)とは思ったのだ。あまりにマト外れ過ぎてちょっとコッパズかしいが、ブエノスアイレスと同様、アニメは私からもっとも遠い所にあるものなので、知らないのもやむを得ない。

ま、「聖地巡礼」なんて、どうせ今だけのことだろう。

そのアニメの影響力がどれほどのものかは知らないしカケラほどの興味もないが、次の冬が来る頃には忘れ去られて、またこの場所を訪れるのは長井崎中学校の生徒および学校関係者と、ミカン畑で農作業するジイさんバアさんだけに戻っているはずだ。

私はこの土地に縁もゆかりもないし、雑誌や他人のブログやツーリングガイドの類を見て来たわけでもない。

他の多くの場所と同じようにたまたま通りかかって、たまたま見つけただけだが、この風景を眺めるためだけにもう何年も訪れ続けている。これからもずっと、伊豆半島への旅の最後は、ここ長井崎で締めくくられることだろう。f:id:ToshUeno:20170218172145j:plain

あなたと来なくたって

わたしはもとから この海が好き

- 松任谷由実「潮風にちぎれて

 

進化とはなんだ

さて、今回は前々週より寒かったせいかオートバイ乗りの数は少なく、必然的に「何人たりともオレの前は走らせねえ」な人もほとんど見かけなかったが、公道を走る愚かな人間どもはたくさんいた。3つほど例を挙げる。

公道をサーキット化するオチャメなスーパースポーツ2台

ブサイクな顔をミラーシールドで隠したライダーが駆るスーパースポーツ2台が、追越禁止車線などフルシカトで縦横無尽に車列を縫うように走り、私および他のクルマをぶち抜いていった。

1台はナンバープレートをカチ上げ、後方から確認できないようにしていた。どうせ違反するなら堂々としてみろや、このイクジナシが。

人の真横を猛スピードで駆け抜ける恩知らずチャリンカー

幅的にスリ抜けできずに停車している時、ロードバイク(笑)が私の左腕のわずか3cm真横を全力で駆け抜けていきやがった。それも計3台。ぶつからなきゃいいってもんじゃねえだろうが。

普段(ったくチャリンコ邪魔だな)と思っても *1、追い越す際はできるだけチャリンコから離れて通ってるのに。恩を仇で返すようなマネしやがって、このクズどもが。

障害者用等駐車枠に駐車する五体満足なガキども

東名道がネイティブ渋滞していたので、鮎沢PAでホットココアを飲みながらのんびり休憩していると、二輪車用駐車スペースの真横にある障害者用等駐車枠に頭の悪そうなカスタマイズを施したミニバンがあり得ないスピードで滑り込んできて、中から頭の悪そうな4人のガキども (男2+女2) が降りてきた。頭は悪そうだが、身体はいかにも健康そうだ。女2人は妊娠しているようにも見えない。

やがてこのバカどもがガキを産んで、またバカが量産される。バカは決して絶滅しない。

「進化」とはなんだ

今回も、嘆かわしい愚かな人間たちの姿をたくさん見た。ふと、疑問に思う。はたして、人間は「進化」したのだろうか?

テメエのことしか考えず、思うに任せて行動する。自制心のカケラもない。猿と何も変わらないではないか。「見ず知らずであっても他人を思いやる」そんな当たり前のことができて初めて、「人間」と呼べるのではないのか。

人間という「動物」の愚かさに絶望して暗澹たる気持ちになった、波勝崎からの帰り道であった。

  • 走行距離=384.1km
  • 走行時間=9時間34分 *2
  • 平均燃費=18.7km/L

(この項おわり)

 

*1:一般国道の坂道を自分の「練習場」にして、車道に思いっきりハミ出てちんたら坂を上るロードバイク(笑)をちょいちょい見かけるが、あいつらは「自分たちが交通の妨げになっている」という自覚はあるのだろうか?

*2:Googleマップ「タイムライン」にオートバイ乗車時間として記録されたもの