スカイラインクーペ、10回目の1年点検に行く

最初に下書きを書いてから、はや3週間が過ぎてしまった。この記事をオクライリにすると2017年10月の記事数は「0本」になり、そのままブログ自体を書かなくなってしまうだろう。私はある目的を持ってこのブログを書いているので、ここで挫折したくはない。

というわけで3週間も前のハナシで恐縮だが、心苦しくも公開する次第である。



 

まずはじめに

2017年10月7日(土)、愛車・スカイラインクーペの法定1年点検に行ってきた。2008年2月の納車以来、実に10回目の1年点検である。(主に悪い方で)話題にはコト欠かない日産であるので、いつもと同じただの点検が、今回は結構楽しかった。

 

2017年10月上旬:神奈川日産川崎元木店の展示車

さて、点検のときのお楽しみ、「展示車チェック」。3週間も前の展示車だが、例の件でクルマの入替もままならないと思われるので、現在でもさほど状況は変わっていないだろう。

すべて乗り込んでインテリアも写真に収めたが、前回またはそれ以前の点検記事に書いたクルマばかりなので、今回はエクステリアのみをさらっと掲載する。

ちなみに、時間に余裕があったので営業さんに試乗も勧められたのだが、さすがに買う気がカケラもないクルマに試乗するほどズーズーしくはないので、丁重にお断りした。

日産・ノート(e-POWER)

頼みのセレナが期待したほどは売れていない中、孤軍奮闘するノート e-POWER。
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コミコミ200万円台前半で買えて、コンパクトなのにソコソコ広くて、燃費もまあまあ良くて、同クラスの中ではいちばんパワーがある。「これで売れなければおかしい」ってほど、売れる要素が詰まったクルマである。クルマをただの移動手段として考えるなら、現状では最高のクルマかもしれない。

日産・ジューク

このテのソリッドでヴィヴィッドなカラーだと、クルマってよりはオモチャというか、何か得体の知れない有機体にも見えるジューク。
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「シトロエン(C3)がデザインをパクった」とかおっしゃる自動車評論家もいるが、似ているのはヘッドライト類の配置だけだと思う。

日産・エクストレイル

展示してあったのは、もちろん6月にマイナーチェンジした最新バージョン。このようにグリルを大仰にするのが昨今のハヤリらしいが、私はあまり好きではない。
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今回のマイナーチェンジでは、「リモコンオートバックドア *1」が装備されている。

キーを持っているわけじゃないので開かないのはわかっていたのだが、試しにリヤバンパーの下に足を出し入れしていたら、それを遠くで見ていたのだろう、新顔の若い営業さんが寄ってきて、キーを渡してくれた。見られていたと思うと少しコッパズかしかったが、せっかくなので試してみた。

足を出し入れする位置やスピードなど、最初はちょっとコツがいるが、それさえ掴めばあとは確実に反応してくれる。ひとつ問題なのは、うまく反応しないからといって近づき過ぎると、バックドアで顔を強打する恐れがあることだ。

日産・セレナ

この個体は最上位グレードの「G」で、かつエアロパーツを始めとしたオプション類をふんだんに装備しているせいで、ミドルサイズのミニバンのくせにコミコミ400万円を超えていた。
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高級車ゆえ、ダッシュボードにもステッチが入って・・・・
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・・・ってこれはもちろんダミーで、ダッシュボード表面は皮革風に加工されてはいるが、実際はただの樹脂。しかもソフトパッドでさえない、カチカチの樹脂である。それなのに、見た目だけのステッチ(笑)を入れるって、こういうセンスはまったく理解できない。

 

新型リーフについて

オーソドックスだけどシャープ

店内のメインステージには、当然のごとく発売されたばかりの新型リーフが展示されていた。
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夜間には、駅からの帰り道にある神奈川日産(株)環状3号南戸塚店で既にそのエクステリアは目にしていたが▼、
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(▲ライティングの妙だろうか、この外観にカタマリ感を感じて、不覚にも「カッコいい」と思ってしまった)

明るい場所で見たのはこれが初めてであった。

3代目マーチ(K12) の「カエル的デザイン」への賞賛が忘れられず、二匹目のドジョウを狙ってモノの見事に失敗した先代のマノビしたデザインから打って変わって、新型は意地悪な表現をすれば「オーソドックス」ではあるものの、随分とシャープに生まれ変わった。

メーカーはユーザーを裏切ってはいけない

さて、10月7日の神奈川日産・川崎元木店には、ラディアント・レッドも鮮やかなもう1台の新型リーフが国道15号への出口を塞ぐように駐めてあった。
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屋外に置いてあるにもかかわらず、ぱっと見でわかるとおりナンバーが付いていない。

そう、(ブログを更新しない間に神戸製鋼の一件があったり、スバルでも同様の問題があったりで異様な盛り上がりを見せているが)例の件▼で
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「ゼロ回車検」ができなかったために試乗車として使用できず、やむを得ずこうして屋外に展示してあったのだ。

つい最近(でもないか、去年の1月)まで、

  1. わが愛車「スカイラインクーペ」
  2. 「GT-R」というデザインはともかく性能だけは飛び抜けたスーパー・スポーツカー
  3. 「フェアレディZ」というイニシエからのイメージを守り続けるトラディショナル・スポーツカー

と、この国ではほとんど見向きもされない2枚ドアのスポーツ/スペシャルティモデルを、3つもラインナップに揃え続けていた日産というメーカーが私は好きである。

が、結局「INFINITI Q60」は「次期スカイラインクーペ」としては発売されないようだし、GT-RもフェアレディZも、はや10年/9年選手にもかかわらず、フルモデルチェンジの話はとんと聞こえてこない。そこに来て、今回の一件である。日産ユーザーの気持ちはさらにメーカーから離れていき、他メーカーのユーザーからは「三菱自動車との『不正連合』(笑)」などと揶揄されていることだろう。

有資格者と無資格者とで、完成車の点検にどれほどのがあるかはわからない。きっと現場には、いろいろな事情があるのだろう。やむにやまれずやっちゃったことだと信じたい。

ただ、規則は規則だ。それに違反すれば、マスメディアの格好の餌食となり、ブランドイメージは地に落ちる。三菱ふそうしかり、三菱自動車しかり、フォルクスワーゲンしかり。日産の当事者たちも、よもやそのことを知らなかったわけではあるまい。

ユーザーを裏切り、すっかりブランドイメージを失墜させてしまった日産が、一気にイメージ挽回する起死回生の策はただひとつ。「INFINITI Q60」を、大至急「次期スカイラインクーペ」として発売することだ。そうすれば、少なくともこの国で私を含めた100人ぐらいは、「日産よくやった!」と諸手を挙げて賞賛するはずだ。

「INFINITI Q60」を国内向け「スカイラインクーペ」仕様にするためにかかるコストと、初年度でさえ1,000台も行かないであろう販売台数によって生じる利益が、見合うことは決してないだろうが。

各部のインプレッション

というわけで、「▼コミコミ450万円超!」という高級車である新型リーフの、走らせてはいないが眺めて座ってみたインプレッションを書く。
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リアセクション

フロント同様、リアのデザインもずいぶんシャープでカッコよくなった。
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先代の、「ひと目でリーフとわかる」ことだけが取り柄の、ナメクジみたいなズングリムックリデザインとは大違いである。

ドライバーズ・シート

「エアリーグレー」という名前のオフホワイトな「一部本革」シートは、なかなかオシャレである。
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が、ホールド感はほとんどない。ハンドリングマシンでないことは自明だが、電気自動車ゆえの強烈な加速力を持つリーフである。「もうちょっとカラダを支えて欲しい」と感じることもあると思われる。

インストルメント・パネル

インパネ全体▼も、
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メーターまわり▼も、
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「未来感」を出したい余りにワチャワチャしていた先代とは打って変わって、フツーの乗用車然とした、スッキリ・シンプルなデザインになった。

スピードメーターの隣にある7インチの液晶パネルには、「パワーメーター」だの「予想充電時間」だのが切換表示されるのだが、キーがない状態で表示されるのは「ドアオープン警告表示」ぐらいだった。 

「プロパイロット パーキング」だけは体験できた

「プロパイロット パーキングだけでも試してみますか?」
点検作業が長引いて退屈になってきた頃、ナイスなタイミングで営業さんが話しかけてきた。 ナンバーが付いていないので公道での試乗はできないが、店舗敷地内で試せる「自動駐車システム」なら問題ないというわけだ。

「やりますやります、やりたいです!」
乗る前から概ね予想ができる、例えばエクストレイルなんかの試乗は特に興味が湧かなかったが、未体験のシステムなら話は別だ。

・・・と、ここで動画でも撮れれば良かったのだが、私ひとりで来店しているので、そんな気の利いたことはできない。ヨコ向き+片手では操作ができないスマホしか持っていなかったので、写真1枚さえも撮ることができなかった。

というわけで、「プロパイロット パーキング」を体験して感じたことを言葉だけで列挙してみる。

駐車位置の設定はめんどくさそう

駐車位置の真ん前までは私が運転して、「どこにどう駐めるか」の設定は営業さんがやってくれた。でも、彼もまだ慣れていないらしく、設定に20秒ほどかかった。もしこれが一般の駐車場で、せっかちなヤツが後ろにいたら、クラクションを鳴らされてしまうような時間である。私のように車庫入れがヘタクソでも、そこまでは時間はかからない。
ちゃちゃっと設定できるようになるまでは、相応の慣れが必要である。「こんな手順を覚えるぐらいなら自分でやった方がマシ」そう感じる人も多いだろう。

ハンドルがクルクル回るのはコワイ

設定さえ終われば、あとはクルマはテキパキと動く。駐車位置めがけてバックするとき、ハンドルが「グワワワーッ」って勢いで回る。ちょっとコワかった。

ピッタリ真ん中に駐まる

これは素直に驚いたのだが、クルマを降りて見たら駐車位置のピッタリ真ん中に、まっすぐ駐まっていた。ヘタクソな私の場合、左か右のどちらかに寄りすぎていたり、ラインに対して曲がっていたりするのがデフォルトなのだが、その点、「プロパイロット パーキング」は優秀である。これだけは写真に撮ろうと思えば撮れたのだが、すっかりコーフンしてそんな考えは吹き飛んでいた。

 

点検風景

言うまでもなく工場内に立ち入ることはできないので、入口からコッソリスマホを差し出して数枚撮影した。
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もちろんここでは、ちゃんと資格を持った人が点検にあたってくれている(はず)。

 

請求金額

請求金額は、18,417円
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点検にかかる費用はメンテプロパックで前払いしているので本来は1円も払わなくていいのだが、いつもどおり営業さんに勧められたメニューをすべて受け容れるとこうなる。「燃料系洗浄剤」にしろ「エンジンリフレッシュ」にしろ、それによって得られる効果はプラシーボとたいして違わないわけだが、それでもいいと私は思う。
(お、なんかキモチイイ気がする
そう思えるなら、1万数千円ぐらいは喜んで支払おう。

 

帰り道で思ったこと

前の週にタイヤ+ホイールを換え、この日はエンジンオイルを換えたので、ここ数年では最高の状態がウレしくなって、いつもの川崎・京浜工業地帯をドライブしてきた。
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が、そこは土曜日。日曜と違ってトラックが多く、「ガラガラの広い道路を思いどおりに走る」というわけにはいかなかったが、それでもフツーの道よりは全然走りやすい。

川崎を離れていちばん残念なのは、この稀有なドライブコースに気軽に来られなくなってしまったことである。

ヒール・アンド・トウを華麗にキメ(ウソ)、シフトレバーをセカンドに叩き込んでアクセルをグッと踏み込み、耳に心地良いとは決して言えないVQ37VHRの、重く鈍いエンジン音に浸る。やっぱクルマはマニュアルだよ、と思う。

このブログでは何度か書いているが、プチ富裕層向けの高額車ならともかく(例えば「BMW M2」なんて、あんなんで800万円超!)、私のような庶民でも買える「マニュアルトランスミッション+2枚ドア+4座」のスペシャルティー・クーペは、もうこの国には存在しない。

国産車だと「スバル WRX STI」とかも未だにMTで販売されていてウレしい限りだが、ムダにドアが4枚もある。2枚ドアじゃ売れないからか、もともとの出自であるWRCラリーのためなのかは知らないが、イラねえじゃん、後ろのドアなんて。ん?ハチロクBRZ? なんかちょっと違うんだよなあ、アレは・・・。

今から思えば「最後の悪あがき」に過ぎなかった「日本に、クーペのときめきを」のコピーと、ケン・ワタナベのハリウッド的ドヤ顔をフィーチャーした傑作CMに魅せられ、さらにMTが用意されていることにコーフンを覚えて、思わず衝動買いしてからはや10年。青空駐車ゆえ、すっかりヤレてしまったエクステリアに萎えつつも、天性のアマノジャクにとってコレほどふさわしいクルマはなかったと、無理をして買って良かったと心から思う。


NISSAN SKYLINE CM + Watanabe Ken

「この国が、ドキドキするクルマの似合う国であってほしい。」
件のCMにおけるケン・ワタナベの願いはついぞ叶えられないまま、この国の道路は

  • ロクに税金も払ってないくせに図々しく追越車線を占領する軽自動車と
  • 「便利さ」だけがその存在意義であるハコ型ミニバンと
  • ムダにデカい、人間に例えれば「ただのデブ」であるSUVと
  • キミョーキテレツなデザインのトヨタ謹製ハイブリッドカーで

埋め尽くされてしまった。

そしてさらに悲しむべきことに、数多の日本人に受け入れられているのは大仰なメッキ・グリルである。かつての日本人が持っていた繊細な美意識は、いったいどこに行ってしまったのだろうと思う。

無粋かつ無意味かつ無遠慮にギラギラしたクルマばかりが跋扈するこの国で、虚しく散った徒花=スカイラインクーペ。 今回の件で、より一層国内市場にイヤケが差したであろう日産が、その美しいルーフラインを国内に向けて出荷することは、もう二度とないだろう。

日産が最後に咲かせようとした花の一輪をなんとか拾い上げ、それを枯らせずに10年間持ち続けていることを、今は誇りに思う。

 

*1:キーを持っていれば、リヤバンパーの下に足先を入れて引くだけでドアが自動で開閉する機能