”アンポ”の季節:アサヒグラフ:1960年6月緊急増刊

2015/06/14、国会前でデモ

もちろん、私自身が参加してきたわけではない。こう言っては大変申し訳ないが、デモに意味があるとは到底思えないので。

 

沖縄で米軍基地問題に取り組む名桜大3年の玉城愛さん(20)=沖縄県うるま市=もマイクを握り、「若い世代が訴えれば訴えるほど社会は変わる」と呼びかけた。

「戦争させない」安保法制反対デモ 国会周辺を取り囲む:朝日新聞デジタル

この玉城愛さんの言うとおり・・・かどうかは過去の事例に照らし合わせると承諾はしかねるが、若い人がこういう”催し物”に参加するのはいいことだとは思う。

ただ、夕方のニュース映像で私が見た限りでは、デモの集団の中に若い人はおらず、(見た目)50代以上がその中心だったようだ。まああくまでテレビ映像を見ただけの印象なので、実際にどうだったのかはわからないが。

アサヒグラフ:1960年6月緊急増刊「安保の嵐・一ヵ月」

私の実家には蔵があるのだが、その押入の奥に保管されていたのを、中学の頃だったか、30年以上前に”発掘”した物である。貴重な資料なので、こういう物に興味がある人間はもう誰もいない実家から”救済”してきた。

その”発掘”当時でもだいぶ古かったが、今はさらにボロボロ・バラバラで、”本”の体裁を成していない。
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しかも、酔っ払ってるときになぜか「コロコロ」でホコリを取ろうとして、表紙破いちゃうし(笑)。”救済”したくせに、ぜんぜん大事にしてねえじゃん。

そんなワケで、いつ朽ち果てるかもしれないこの貴重な資料を、まさに55年後の「6月=”アンポ”の季節」の今、掲載するものである。

6・18空前の大デモ

冒頭の朝日新聞の記事によると、今日の国会前のデモの参加者は約2万5千人。

この▼アサヒグラフ緊急増刊号の最初のページにある1960/06/18のデモの参加者は、約33万人!・・・だが・・・
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自民党の単独採決で衆議院を通過した新安保条約は、参議院での審議を経ないまま、19日午前零時に自然承認された
前日の18日には、国会周辺や首相官邸前に一般市民やデモ隊が集結した。その数は安保改定阻止国民会議の発表では約33万人と、これまでの最高を記録した。

昭和毎日:新安保条約自然承認 - 毎日jp(毎日新聞)

デモに何十万人集まろうが、システムには抗えないのである。なんだよ「自然承認」って(笑)。国会も参議院も、何の意味もねえじゃん。

デモ隊の唯一の成果

▼シンゾウさんのおじいさん。デモ隊の”成果”は、この人を退陣させたことぐらい。
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シンゾウさんも強引なことばっかりやってると、じいさん同様、足をすくわれるだろう。

6.15 流血の国会デモ

年寄りばかりの現代と違って、当時のデモの中心は若者たちだった。「反体制」にカコツけた、いいストレス発散になったことだろう。
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こういう血気盛んな当時の若者たちの記録を見るにつけ、冒頭の記事で玉城愛さんが言ったとされる「若い世代が訴えれば訴えるほど社会は変わる」は、妄想に過ぎないことがよくわかる。それとも今どきの若者たちは、「訴え方が間違っていた」なんてコマシャクれた言うのだろうか。

このページ▼の上の写真は、国会構内での乱闘が沈静化した後、負傷してへたり込んだ学生達を警官達が取り囲んでいる。
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「権力」と「反権力」の縮図を見るようだ。

そして、樺美智子さん

そして”ハシャギすぎた”あげく、ひとりの優秀な女性を失うことになる。もちろん警官隊も責められるべきだが、学生達にも責任はあるだろう。

以前、樺美智子さんと同時期に東大に在学していた人と話す機会があったので、その当時のことを聴いてみたが、その人自身は、彼女の死や当時の学生運動に感慨も感心もなかったようで、何の逸話も聞けずに落胆したことがある。
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でも、それも当然のことだ。当時を知らない人間からすると「みんながみんな学生運動に参加していた」みたいな錯覚に陥るが、もちろんそんなことはなく、政治(というか、いわゆるただの”アンポブーム”だった*1のだと思うが)に興味がない学生だってたくさんいたのである。

最後に著作権法の話

今朝の日経新聞に以下の記事があった(※「有料記事」なのでリンクは張らず、ごく一部を引用)。

 

番組・本、2次利用しやすく 著作権法改正へ

政府はテレビ番組や書籍で著作権の権利者が多い著作物の2次利用をしやすくする。〔中略〕
作品をアーカイブ(記録資料)やネット配信で2次利用する場合、原則として権利者全員の許諾を得る必要があるが、出演者や執筆者が多数だと連絡がつかない例も多い。〔後略〕

今回、「55年も前の雑誌だったら怒られないだろう」と思って掲載してみたが、こんな昔の雑誌でも、やっぱり「権利者全員の許諾を得る必要がある」のだろうか。
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巻末に「編集人 松島雄一郎」とあるが、当然故人だと思うので、やはり朝日新聞社にお伺いをたてる必要があるのだろうか。

まあそんなことはともかく、こんな▼コジャレたサイトを作るよりも、

こうして当時の雑誌を”そのまま”載せた方が時代の空気が伝わると思うのだが、いかがだろうか。

・・・なんて書いてたら、結構なお値段で”そのまま”を閲覧できるサービスがあった(ただし「図書館向け」サービス)。

いま現在見られるのは「1923年から1956年まで」のようだが(2015/06/14現在)、おそらくそれ以降も作成中で、そのうち公開されるだろう。こりゃやっぱり怒られるかな・・・

 

*1:小室直樹や西部邁などは「安保反対と言って騒いでいた中に安保条約の中身を読んで反対していた人間はろくにいなかった」と公言している(安保闘争-Wikipedia)。