映画「はだしのゲン 涙の爆発 (1977)」を観た

「はだしのゲン」バブル

今月7日に映画「はだしのゲン」について書いた。

こんな昔のマイナーな映画について書いても、誰も関心を示さないだろうと思いながら書いたのだが、予想に反して「はだしのゲン」による検索流入が1日数十件あって、今月のアクセス数向上におおいに貢献してくれたのだった。

かみさんは「『はだしのゲン』の感想文を書く宿題が出てて、そのネタを検索してるんだよ」なんて言ってたが、はたして今日日「はだしのゲン」が”教材”として取り上げられることなんてあるのだろうか。

ま、かみさんのテキトーな推理はともかく、そんなわけで”二匹目のドジョウ”を狙って、「はだしのゲン3部作」の2作目「はだしのゲン 涙の爆発」について書く。

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またちなみに、私にとって「はだしのゲン」は「夏の季語」みたいなものなので、8月中に書いておきたいという思いもあったのだ。

 

学芸会レベル

冒頭の30分ぐらいは登場人物のほとんどが子供で、しかも演技のレベルが低すぎて、ガキのくせに「子役戦国時代」の現代で切磋琢磨しながら大人顔負けの芝居をする子役たちを見慣れた目には、とても観るに堪えなかった。

まあでも、ガキの頃観ていた「ケンちゃん」シリーズや「あばれはっちゃく」シリーズなど、「子供が主役の子供向けドラマ」を思い出せば、当時の子役のレベルはこんなもんだったろうと思う。

映像技術の進歩は、この映画の1970年代と現代では比べるべくもないが、人間自身の表現のスキルも、年々向上しているってことなのだろうか。

 

母親役:宮城まり子さん

「はだしのゲン3部作」の2作目である本作は、1作目とキャストが総取っ替えされていて同じ役者はひとりも出ていない。

ゲンの母親役の宮城まり子さんは、私にとっては「『ねむの木学園』の園長」というイメージしかなく、役者をやられているのはあまり見た記憶がないのだが、「気丈である一方で弱々しい」雰囲気は、原作の母親のイメージにぴったりで、その点では1作目の左幸子さんより良いと思った。

でも、いかにも「ザ・女優」な雰囲気の左幸子さんと比べてしまうと、 芝居自体は力不足な感は否めない。

ビジュアルだけではもちろんダメだし、演技力があるからと言って、必ずしもその役の人物を表現しきれるわけでもない。役者ってのは、本当に難しい仕事だと思う。

 

ゲン役:春田和秀さん

主役のゲンは、「春田和秀」という子役で、上述のとおり芝居はいまひとつだがなかなかの美少年で、こちらも1作目より原作に近いと思った。f:id:ToshUeno:20150827231320j:plain

春田さんは既に役者は引退されているようだが、名前で検索するとご本人のFacebook*1がヒットする。もちろん現在では年相応のおっさんなのだが、昔の面影を色濃く残したかなりのオトコマエで、しばし写真に見入ってしまった。

さらに調べたら、なんと映画「砂の器 (1974)」で加藤嘉さんと全国を渡り歩く、あの子役だったという(ご本人のFacebookにもチラッと書いてある)。

人に歴史有り。子役に歴史有り。

言いようのない「昭和の陰鬱さ」が全編に渡って流れる「砂の器」がまた見たくなってしまった。

 

映画としてはいまひとつだが・・・

本作は、原爆が落とされて以降の「被爆者」として差別を受け続けるゲンたち家族の様子を、原作に忠実に描いている。数十年前に読んだ原作を未だに覚えているひとりのファンとしては、「ああ、こんな話あったよね」というシーンが目白押しである。

ただ、1作目の三國連太郎さんのような圧倒的な存在感を示す役者も出ておらず、(何度もしつこく書くが)子役の芝居のレベルも低く、被爆直後の広島市内を再現したセットもショボく、それらのせいもあって感情移入できるシーンはほとんどなかった。

この映画のハイライトのひとつである原爆症によって皮膚が破壊された「政二さん」についても、はたしてどこまで再現できてるか興味津津だったが、「ああやっぱり、この頃の日本映画じゃこんなもんだよね」程度の映像表現だった。

それでも、「政二さん」は当時の超売れっ子役者・石橋正次さんであり、その回想シーンに登場する「お嫁さんにしたい女優No.1」だった頃の竹下景子さんが超絶かわいいのは見所のひとつではある。f:id:ToshUeno:20150827231938j:plain

そんなわけで、映画としてはいまひとつの出来だが、「はだしのゲン」ファンや当時の「被爆者差別」の実態に興味がある方は、観ても損はないだろう。

 

*1:閲覧にはFacebookにログインする必要があります