そしてクルマは、FRに回帰する



 

マツダが次世代プラットフォームでFRを採用へ

日経Automotive」という高級雑誌(1冊2,470円!)の最新号に、注目すべき記事が載った。

マツダが部品メーカーに提出した見積依頼書によると、2020年前後にフルモデル・チェンジする「アテンザ」などのDセグメント車種で、FR化が予想されると言う。

 

FRに転換する最大の目的は、ブランド価値の向上にある。FRの方が運動性能が高く、運転する楽しさを顧客に訴求しやすくなるからだ。

- マツダ、次世代で「FR転換」を検討 高級路線を推進 :日本経済新聞

現行のマツダのフラッグシップ「アテンザ」は車格も立派で、デザインもとても魅力的なクルマだが、ただひとつ「FFである」という点が、いちクルマ好きとしては残念だと思っていた。

「4WDが発売された」と聞いたときは、うれしくて記事にも書いたが▼、

乗り味(©岡崎五朗)はどんな感じなのだろうか。FFベースの4WDゆえ、やっぱり「FFっぽい」のだろうか。

今度試乗してみようかしら、と思ったが、案の定、「4WD+MT」の試乗車はほとんど用意されていないようだ *1f:id:ToshUeno:20151021124903p:plain
 

FF代表:マツダスピードアクセラ

以前乗っていた「マツダスピードアクセラ(2006年モデル)」は、大出力FFの代表格のようなクルマであった(2.3Lターボ・264ps・38.7kgm(!))。f:id:ToshUeno:20070521080117j:plain

シグナルダッシュよろしくアクセルを思いっきり踏み込むと、路面の状態によっては盛大なトルクステアに見舞われ、「隣の車線に吹っ飛ぶんじゃないか」と思うことさえあった。助手席のかみさんに「なにやってんだよ!」と怒鳴られたこともある。

もちろん、標準装備である「DSC (Dynamic Stability Control)」をONにすればそんなことは起きないのだが、そうすると挙動が極端に”もっさり”した感じになるので、それを嫌って基本的にOFFにしていたのだ。

また、決して大きいクルマではないので、先日チョイノリした「セレナ」のように「何かを引き摺っているような感覚」こそないものの、 FFゆえの「前方から引っ張られるような感覚」があり、それは決して気持ちのいいものではなかった。

 

FR代表:スカイラインクーペ

それに対して、現在乗っている「スカイラインクーペ(CKV36)」。
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「大きめの車格+長大なホイールベース+重めの車重」ということで、間違っても「ハンドリング・マシン」ではないのだが、そこは腐ってもFR、「自分を中心としてクルマが旋回するような感覚」は、じゅうぶんに味わうことができる。

先日行った三重県は国道42号での、「グネグネ山道+雨で濡れた路面+漆黒の闇」という三重苦状態でも、そのカッチリとしたハンドリングに不安を覚えることはなかった。

これがもし、「マツダスピードアクセラ」や、その前に乗っていた「ファミリア Sワゴン」だったら、後方をビタ付けしてくる品性の欠如した地元のクルマに、そそくさと道を譲っていただろう。

 

もうFFには戻れない

やはり、一度FRに乗り慣れてしまうと、FFには戻れない、戻りたくない。

もちろん、「マツダスピードアクセラ」と「スカイラインクーペ」では、車格も違えばボディ剛性等も違うので、ひと括りに比較はできないのだろうが、運転感覚に対して駆動方式の違いがもたらす影響は、とても大きなモノだと思う。

昔は、「カローラ」や「サニー」でさえ、FRだったのだ。コストや居住性を重視するあまり、日本車に限らず、世界中のクルマの多くはFFになってしまった。

そんなFFが主流の現代において、マツダが下した「FRに回帰する」という判断は、いちクルマ好きとして、とても喜ばしいものである。

マツダが現在の好調ぶりを維持し、それによって得るであろう潤沢な資金を投じて開発する次期型「FR・アテンザ」を、いまから楽しみにしておこう。

 

*1:試しに[AT]でも検索してみたが、FFのみで4WDは1件もヒットしなかった(※東京都の場合)