「Love Letter (1995)」を観た

今日はもう仕事・・・というか職場の人間にホトホト嫌気が差して(ま、向こうもそう思ってるだろうけど)早めに帰ってきたので、Netflixでひさしぶりに映画を観た。

岩井俊二監督の初期の代表作「Love Letter」である。 



Love Letter [Blu-ray]

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この映画は、映画館で観たのか、レンタルビデオで観たのか記憶がまったく定かではないが、とにかく公開された1995年頃に観たはずだ。今のかみさんとは違う、当時いっしょに暮らしていた人と観た記憶があるので。 

 

監督・岩井俊二

この映画で岩井俊二という監督さんが好きになって、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」とか「スワロウテイル」とかを続けて観たのだが、ものすごく期待して観た「スワロウテイル」が思いの外つまらなかったので、その後は1本も観ていない。

岩井俊二も後述の中山美穂も、この映画がピークだったのかもしれない・・・なんて評価は、中山美穂はともかく、この作品は彼にとって劇場用長編映画の1作目なので(しかも「スワロウテイル」より後の作品は観ていないので)失礼極まりないだろうが、「それまでCMやテレビドラマの制作で培った、ほとばしる若い感性を1本の映画にブチ込んだ」と解釈すれば、あながち間違いでもないだろう。

 

主演・中山美穂 

中山美穂という人は、昔から(「毎度おさわがせします」のワチャワチャしたイメージの頃から)あまり好きではなかったが、この映画における彼女の静かな佇まいは、とても好感が持てる。

クライマックスで、かつての婚約者が命を落とした雪山に向かって叫ぶシーン(A)や、ラストシーンで、中学時代の同級生によって図書カードの裏に書かれた自分のポートレートを見たとき(B)の表情は、この女優さんの持つ、とてつもないポテンシャルを感じさせる(が、この映画の後、「女優として大成した」というわけでもないのが不思議ではある)。

ちなみに、上記の(A)(B)は別の人物であり、中山美穂は一人二役でそれを演じ分けているのだが、映画の最初の方ではどっちがどっちの人物かわからなくなるところがある(私だけか?)。

もっと髪型やメイクを変えるとか、演出上の工夫があった方が良かったと思う。

 

音楽・REMEDIOS

この映画の音楽は、「REMEDIOSレメディオスと読む)」という人によるものである。私がガキ(高校生)の頃、「麗美」という芸名で、ユーミンの曲とかを歌ってた人だ。

この映画のための静謐な一連の曲もすばらしいが、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」の方がもっといい。 

「打ち上げ花火、下からみるか? 横からみるか?」Soundtrack

「打ち上げ花火、下からみるか? 横からみるか?」Soundtrack

 

このサントラのメイン・タイトル「Forever Friends」は、まさに稀代の名曲である。 

 

雪景色の美しさ

冒頭の、俯瞰で撮られた雪景色は本当に美しい。

このブログでは何度も書いているが、私はガキの頃イヤと言うほど雪で苦労したせいか、「雪」というだけで頭の中が嫌悪感で満ち溢れるのだが、画の中で見るぶんには、雪景色というものはただただ美しい。

この映画では、冒頭だけではなく、随所で雪景色が効果的に使われている。

私がもっとも好きなシーンは、父親の葬式の後、酒井美紀が靴のままで雪道を滑るシーンである。真っ黒な森と、降りしきる雪の白のコントラストの中で躍動する、少女の華奢な肢体が美しい。

そしてふと立ち止まった場所で氷に閉じ込められ、動かなくなったトンボを目にして、父親が死んだことを実感する。f:id:ToshUeno:20151210004847j:plain
このシーンを見ると、ガキの頃のいろいろなことが思い出されて泣いてしまうのである。

雪国で、北国で生まれ育った人なら、このシーンの切なさがわかってもらえるのではないだろうか。

 

映画って本当にいいもんですね 

この映画を初めて見たときから、もう20年もの時間が流れた。当時20代だった私は、50歳目前の、問答無用のおっさんである。

決してガキの頃に戻ることはできないが、こういう優れた映像作品を観ていると、それに呼応するかのように・・・好きだった女の子のこととか、おやじさんやおふくろさんのこととか、実家の庭の風景とか、あの頃感じていたいろいろなことが思い出されて、現時点での殺伐とした心の中が浄化されたような感覚になる。

水野晴郎ではないが、映画ってのは、本当にいいもんだ。

・・・それにしても、「ワープロ専用機」って、ちょー懐かしいね。

(以上、敬称略)

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