「Honda Collection Hall」に行ってきた:二輪市販車篇(4):本流と傍流
「Honda Collection Hall 訪問記」も今回で7回目。
唯一の“リアル読者”であるかみさんに、そろそろ「いったいいつまで書いてんだよ」とツッコミが入る頃だが、こんな記事でもずっと書き続けていると、浜松の小さな“エンジン屋”から二輪では文句なしの世界第1位、参入してわずか50年ちょっとの四輪でも世界第8位 *1 の販売台数を誇る巨大メーカーにまで上り詰めた「ホンダ」の歩みを理解することができるのだから、意味はあるのだ *2。
レジャー用オートバイいろいろ
「Honda Collection Hall」で「レジャーバイク」と題した一角に集められていた、「モンキー」を始めとしたいわゆる“変わりダネ”マシンの数々。
その“ツートップ”は、「モンキー」シリーズの元祖「Z100 (1961)」と、2代目「CZ100 (1964)」であった。
「スズキ・バンバン」を筆頭として、このテのマシンは他メーカーにもあるが、これだけバリエーション豊富なのはホンダならではだろう。
ホンダ モンキー Z50M (1967)
「モンキー」シリーズの元祖は2つ上の写真の2台だが、最初に国内で市販されたのはこの「Z50M」である。よって日本国内では、1967年が「○○周年」の起点となるそうだ。
「レッド×アイボリー」のカラーリングとチェック柄のシートが、フラワームーブメント全盛期の、時代の空気を反映している・・・
・・・ま、「フラワームーブメント」って書きたかっただけで、実際には何の関係ないだろうけど(笑)。
ホントのところは、ホンダ自身によるこちら▼のサイトに詳しい。
そしてホンダのエラいところは、このテの“キワモノ”を現在までずっと販売し続けているということで、現行には「くまモンバージョン」なるものもある。
税込336,960円。結構お高いのね(驚)。
画像出典:Honda|バイク|Monkey(モンキー)|KUMAMON × MONKEY
「熊本」と言えば話は逸れるが、テレビ東京系「Youは何しに日本へ?」という番組で「アメリカ人・ネイサン氏 (通称『Mr.カブ』)+スーパーカブ110」による西日本30日間ツーリングを紹介しているのだが *3、2016年2月15日放送分で訪れたホンダの「熊本製作所」で、Mr.カブに工場を案内していた女性がアイドル級にかわいくて驚いた。
あんなステキな女性に工場を案内されたら、私の場合はオートバイどころではなくなってしまうだろう。閑話休題。
「1967年生まれ=私とタメ年」ということで親近感も湧くわけだが、来年は「誕生50周年記念モデル」は発売されるのだろうか。楽しみである。
ホンダ モトラ (1982)
「レジャーバイク」の一角でもっとも目を惹いたのは、このマシンである。
モーターサイクル+トラック」で「モトラ」。わかりやすい。語感的には、どこか怪獣の名前のようでもある。
現地でひと目見たとき、この車格からニーハンかと思ったが、なんと原チャリだった。「排気量わずか49cc・4.5馬力のエンジンで、この立派なパイプフレームの車体がまともに動かせるのだろうか?」と不安になるが、通常の3速に「低速3速」の副変速機を付け付けて登坂性能を向上させているという。
ただ奇を衒った“見かけ倒し”でなく、きちんと実用性を持たせるところも、さすがホンダである。
フロントとリアにたいそう立派なキャリアが付いているのも特徴的だが、ただ排気量50cc未満の最大積載量は「30kg」なのである。いったい、ここに何を積めというのだろう?
・・・ま、そんなツッコミも虚しくなるほど、武骨かつ機能をストレートに表現したデザインが秀逸な、隠れた名車である。
スーパーカブシリーズと広告戦略
「スーパーカブ」も、色鮮やかなマシン達が一角に集められていた。
スーパーカブで注目したのは、オートバイそのものよりも、そこに添えられていた広告であった。
すばらしき人ホンダに乗る(HONDA CA100 (1962))
この「CA100」はスーパーカブの輸出仕様で *4、国内仕様の「スーパーカブ」と大きな違いもないため改めて書くこともないのだが、注目すべきは説明書きプレートに添えられた「YOU MEET THE NICEST PEOPLE ON A HONDA」の広告である。
さすがにこの▲写真ではちょっとチッチャすぎるので・・・
拡大したものがこちら▼。
画像出典:Daily Turismo: Eau de toilet seat: 1971 Honda CT90
古い(笑)オートバイ好きなら、雑誌等で一度は見たことがあるだろう。カラフルでポップなこの広告がきっかけとなって、一大「HONDA」ブームが巻き起こったそうだ。
注目すべきは下段左端のサーフボードを抱えた若者で、「クラッチレス」というスーパーカブの特徴をナニゲに活かしているところが白眉なのである。
女性誌初のオートバイ広告
上の広告は過去に何度となく目にしたことがあったが、こちら▼の広告は「Honda Collection Hall」で初めて目にした。
「スカートのご婦人にも、乗ってもらうんだ」
誰の発言なのか明記されていないのでわからないが、本田宗一郎氏の言葉だろうか。時は1960年、「ロードパル v.s. パッソル」の一大ムーブメントによってオートバイが女性にも広く受け入れられるずっと前に、女性誌に初めてオートバイの広告を載せたのもホンダであった。
上の写真は、現地でしばらく眺めてしまった。とてもいい写真だと思う。ちなみにもともとの宣材は左側に小さく写っているとおり (※写真要拡大) カラー写真で、せっかくなので載せたかったのだが・・・
こちら▼のサイトに「写真、資料の無断転載に付きましては、固く断り申し上げます」と明記されているので自粛する。
上2段を占めるスーパーカブシリーズの宣材写真はどれもすばらしい。ぜひ、カラーで見ていただきたいと思う。
欧州車から覇権を奪う
こちら▼も有名な、当時の「ドリーム CB750 FOUR」のカタログを飾った写真である。
ホンダ ドリーム CB750 FOUR (1969)
世界の二輪メーカーの勢力地図を塗り替えた稀代の名車。
「二輪市販車篇」の最初で取り上げたので省略しようとも思ったが・・・
やっぱり外せないでしょ、このマシンは。ま、上の過去記事に掲載したヤツとは「色違い」なのでカンベンしてください。
上記に引用した過去記事では、「ヨンヒャクよりちょっと大きいぐらい」なんて書いたが、当時の400ccクラスといっしょに並べてあるのを見ると、やはり車格の違いは歴然である。
ホンダ ドリーム CB400 FOUR (1974)
稀代の名コピー「おお400。おまえは風だ。」で有名な、ザ・カフェレーサー。
CBスーパースポーツの原点に帰り、欧米に流行のきざしがみえたカフェレーサースタイル、4イン1エキゾーストをいちはやく採用、高い人気を得た。
- 「Honda Collection Hall」解説プレートより
「CB750 FOUR」を“剛”だとすると、こちら「CB400 FOUR」は“柔”という感じだろうか。シンプルかつスリムなシルエットが、このマシンの“孤高感”を高めているように思えて、私はとても好きなのである。
そして、4in1エキゾーストパイプの曲線もまた美しい。
「CB750 FOUR」に見られる技術革新だけでなく、「CB400 FOUR」に見られるように、「流行をいち早く市販車に採りいれる」術においても、ホンダというメーカーは長けているように思う。それらを含めた総合的な開発力を高めることによって、ホンダは欧米メーカーから二輪業界の「覇権」を奪ったのである。
本流と傍流
私はこれまで、「CBシリーズ」に代表されるスーパースポーツ系がホンダの「本流」で、それ以外は言わば「傍流」なのかと思っていた。
でもこうして様々なジャンルのマシンを実際に目にして、自分なりにまとめてみると、いやいやどうして、「スーパーカブシリーズ」や「レジャーバイク系」の開発にも様々な工夫が凝らされ、それを世間に知らしめるためにもまた、いろいろな広告が展開されてきたことを改めて知って、大変勉強になった。
大きさや排気量やスタイルによって、オートバイには多種多様な楽しみ方がある。ホンダにとっては「本流」も「傍流」もないのだ、ということがよくわかった。
(つづく)
*1:2014年1月~12月。出典:世界・車メーカー販売台数ランキング ※2014年1月~12月の販売台数 | 中古車検索・中古車査定の総合情報サイト【クルビア】
*2:「書いている本人が理解できる」って話。読んでくれた人が理解できるかどうかはわからない
*3:近日中に「本州篇」を放送予定とのこと
*4:ちなみに「CA100」は単なる車名で、排気量は49ccである