Honda Collection Hall 訪問記・四輪市販車篇(2):それでもやっぱりスポーツカーが好き
「ホンダ車の本質はスポーツではない」と前回書いたものの、クルマ好き兼スーパーカーブーム(笑)世代としては、やっぱりスポーツカーを採り上げたいのである。
というわけで、満面の笑みを浮かべて「S500」を駆る偉大なホンダの祖・本田宗一郎氏に敬意を表して、
「Honda Collection Hall (以下“ホンコレ”)」2階北棟に展示された数少ないスポーツカーをふり返る。
- ホンダ S800 (1966)
- ホンダ ビート (1991)
- ホンダ インテグラ タイプR (1995)
- ホンダ シビック タイプR (1997)
- ホンダ インサイト (1999)
- ホンダ NSX-R (1992)
- なぜ「S2000」が展示されていないのか
ホンダ S800 (1966)
ホンダ最初のスポーツカー「S500」ももちろん展示されていたが、「1階ロビー篇」で一度採り上げたし、
2階北棟にあった個体は、1階ロビーの方の完璧なレストアっぷりに比べると、若干見劣りがした。
というわけでココでは、S500の上位車種である「S800」を採り上げる。ま、パッと見はほぼ同じなんだけど。
この角度から見ると、「トライアンフ GT6」や「MG ミジェット」等の英国車に範を取っていたことがよくわかる。
「ホンコレ」の四輪市販車でオモシロかったのは、このサイドウインドウに貼られた各車の諸元と短い紹介文。展示されているすべてのクルマにコレが貼られていた。
合理的と言えば合理的だし、ジャマだと思えばジャマだが(笑)。
ホンダ ビート (1991)
日本の自動車史に燦然とその名を残す、稀代の名車「ビート」。
軽規格(しかも車長3.30m・車幅1.40mの“旧”規格)でミッドシップを造ってしまうのが、いかにもホンダである。
軽自動車とは言え、泣く子も黙る「ミッドシップエンジン・リアドライブ」なのだから、これは問答無用のスポーツカーなのだ。
このインパネを初めて見たとき、(VTかなんかのメーター持ってきて“ポン付け”したのかな?)と思ったが、さすがにそこまでケチったわけではなく、あえてオートバイ的なデザインを施したようだ。
後継“車”である「S660」はいかにも軽自動車っぽく“キャシャ”に見えるのに、こっちはなぜか“キュッ”と引き締まって見える。私の気のせいだろうか?
ホンダ インテグラ タイプR (1995)
このクルマを「スポーツカー」と呼べるかどうかは議論が分かれるとは思うが、天下の称号「タイプR」を名乗っているので、ホンダ的には「スポーツカー」にカテゴライズされるのだろう。
個人的にこの大仰な“羽根”はキライだが、スッキリとまとまったクーペボディは、よく見ると美しい。
そして、この記事を書くにあたり「タイプR」について調べて初めて知ったのだが、そう名乗ることを許されるのは、マニュアルトランスミッションのクルマのみだそうだ。すばらしい。
少なくとも私の左脚が動いているうちは、3ペダルのマニュアルトランスミッションが各メーカーで造り続けられることを常日頃から願っている私にとって、「タイプR」の定義は何よりも貴重なのである。
ホンダ シビック タイプR (1997)
「インテグラ」以上にスポーツカーにカテゴライズすることが憚られる「シビック」であるが、とりあえずコッチも「タイプR」を名乗っているので、仲間に入れておこう。
この頃はまだ、前後に申し訳程度のスポイラーが付いているぐらいだったが・・・。
現行の「シビック タイプR」は、なんだかスゴいことになっていた。
画像出典:2016 honda civic type r geneva 2015 1 関連フォトギャラリー - Autoblog 日本版
しかも、「希望小売価格:4,280,000円!(税込)」である。もはや往時の「シビック」ではない。そして、日本国内限定750台は既に完売したそうだ。
世の中には物好きがいるもんだ (※ホメ言葉)。そして、この国のクルマ好きもまだまだ捨てたモンじゃないと思う。
ホンダ インサイト (1999)
もちろん“中味”はスポーツカーでもナンでもないのだが、「シビック タイプR」はもちろん、「インテグラ タイプR」よりもスポーツカー的なビジュアルに思えたのは、この初代インサイトであった。
「燃費スペシャル」を極めるあまり、何を血迷ったか2シーターにしてしまったあたりに、ホンダらしからぬ「どこかスズキ的なニオイ」を感じてしまうのだが、それでもこのボディは本当に美しいと思う。
そしてこのリアスタイルを見て・・・
コレ▼を連想するのは私だけではないだろう。たぶん、きっと。
ホンダ NSX-R (1992)
“トリ”を飾るのは、やはり大御所「NSX-R」である。
まるでヒラメのように平べったいボディに、ホンダの“ホンキ”が感じられるのである。
「ゴルフバッグを積めるトランクを設置するためにリアオーバーハングを延ばした」というのはどうやらガセネタのようだが、当時はどこか不自然に見えたこのスタイルも、いま見ると逆に未来っぽい。
(NSXについて、めちゃくちゃ詳しく解説したサイトを見つけた▼)
折しも、今日(2016/03/18)の日経新聞朝刊に、現行の2代目「NSX」の記事が載っていた。「現行『NSX』は、欧州プレミアムブランドであるフェラーリやポルシェに対抗するクルマとして練り上げられ、最大の市場であるアメリカに最先端の専用工場を構えて生産される」、そんな内容だった。
私のようなシガナイ庶民には、これっぽっちも縁の無いクルマではあるが、「『NSX』のようなクルマがラインナップされている」ということが、クルマメーカーとして重要なのである。
なぜ「S2000」が展示されていないのか
ところで、何よりも不思議に思ったのは、「S2000」が展示されていないことであった。
「インテグラ タイプR」や「シビック タイプR」なんかより、よっぽど“採り上げ甲斐”があると思うのだが・・・。
まあそれはともかく、願わくば現行「NSX」の弟分として、「S2000」のように庶民にも手が届く、本格的な“FRの”スポーツカーをまたホンダには造って欲しい。
そしてそのクルマには、もちろん「タイプR」を、つまりマニュアルトランスミッションを用意して欲しいと願うのである。
(この項おわり)