ヤマハ・コミュニケーションプラザに行ってきた:その2
ヤマハ発動機(株) (以下「ヤマハ」) の企業ミュージアムである「コミュニケーションプラザ」訪問記の2回目。今回は「跨がってもいいんだよコーナー」と「サウンドシミュレーター」について書く。
跨がってもいいんでしょうか?
当然のことながら、どのオートバイも「触らないでください」状態で展示されているわけだが、1階フロアの片隅に、低い柵で囲われていない、"フリー”な状態で展示されているマシンがあった。その状態を見れば跨がっていいのは明らかなのだが、それを言葉で示す案内版の類が一切ない。
ちなみに「スズキ歴史館」では、入口のすぐ脇に稀代の名車・GSX1100S KATANAが「記念撮影コーナー ご自由にお乗りください」と書かれた案内板とともに置いてあって、(あ、これには跨がっていいんだな)とすぐに理解できるのだが、
(▲2015年6月19日、スズキ歴史館にて)
さすがそこは「コミュニケーションプラザ」、来場者にコミュニケーションを強いる施設だけのことはある。
おそらく、(このバイクには跨がっていいのかしら?)と迷った来場者が、「YAMAHA」のロゴが入ったジャンパーを着た社員をとっ捕まえて「このバイクには跨がってもいいんでしょうか?」と尋ねることを促しているのだろう。ヤマハ恐るべし。
私も2秒ぐらい迷ったが、(ま、もし万が一怒られたら、謝りゃいいや)と思っておもむろに跨がった。もちろん、誰かに注意されることはなかったわけだが。
FJR1300 POLICE (白バイ仕様)
まずは、FJR1300 (現行の1コ前の2代目) の白バイ仕様である。
クルマ/オートバイに乗っているときには極力お目にかかりたくない白バイだが、取って付けたようにシールドに貼られた「POLICE」のステッカーを見ればわかるとおり、この車両には本格的な架装はされていなかった (「青色灯」やサイレンやタンデムシート部に取り付けられたボックスは白バイっぽいが・・・青色灯から察するに、海外仕様なんだろうか)。
そう、白バイと言えばスピード違反でパクられたときに確認を強制される「測定速度」表示機能付のメーターパネルが最大の特徴だが *1、
(▲画像出典:スピード違反取り締まり用のプリンターなどが装備されている白バイの秘密 - GIGAZINE)
この車両のメーターパネルは、ごくフツーのFJRのものだった。いつもパクられてばかりなので、少しはパクる方の気分を味わいたかったのに。つまんね。
ま、それはともかく、ライディングポジションはここにあったどのマシンよりしっくりと来た。こんな快適なポジションなら、しがない庶民から金を巻き上げるために・・・もとい、庶民の安全を守るために日がな一日走り続けても、疲労は少ないだろう。
VMAX (現行型)
そして、ご存じVMAX。このシンプルな車体構成ながら「税込2,376,000円」というハイプライスで有名な、ヤマハのフラッグシップである。
ポジションは素直でいい感じだったが、難点がひとつ。左右に大きく張り出したエアインテークが、思いっきりヒザに干渉するのだ。つまり、効果的なニーグリップができない。「慣れ」でカバーできる範疇を超えているように思う。
支払総額が250万円に迫らんとする高額マシンが、これじゃダメでしょう。
MT-01
3台並んでいた右端が、なぜかMT-01。オートバイに興味がある人でも、知らない人も多いんじゃないだろうか。
わが愛車・スズキ「Boulevard M109R」も大概マイナーな車種だが、言うてもM109Rは、発売から10年以上が経過した立派なロングセラー、かつバリバリの現行車種である (海外では)。それに対してこちらは、短命かつ既に生産終了となって久しい。
どうせなら現行のMT-09でも置けばいいと思うのだが、あんまり新しいヤツはもったいないのだろう。それにしても、なぜかMT-01。よもや、現行のヤマハのラインナップを支えるMTシリーズの「祖」としてのリスペクト的な意味合い、というわけでもあるまい (名前以外は共通点がない)。
その不運な生涯にかかわらず、もしかすると「ヤマハの思い入れが詰まったマシン」ということなのかも知れない「クルーザーのエンジンを積んだ変態ネイキッドスポーツ=MT-01」のポジションは、そのコンセプトどおり、思いの外前傾がキツかった。
そしてよくよく観察してみると、スズキには望むべくもない各部の丁寧な作り込みは、実にヤマハのマシンらしかった。
もうちょっと、売れても良かったのにね、と思う。
他に、「TZ (市販レーサー)」も置いてあったが、「ポジションがキツかった」以外に書くことがないので、割愛。
YZF-R1 サウンドシミュレーター
展示フロアの一番隅っこに、来場者にケツを向ける形で、ディスプレイ付きで置かれたスーパースポーツがあった。そのビジュアルは、まさに「シミュレーター」である。これはおもしろそうだ! (▲さすがにこの展示物には「YZF-R1 サウンドシミュレーター 操作の手順」という説明書きが添えられていた)
が、アラフィフオヤジのそんなワクワクは、すぐに裏切られた。
いちおう、アクセルとサウンドはシンクロしていて、スロットルグリップをヒネればサウンドも大きく、甲高くなる。眼前のディスプレイに映し出される景色も、それなりに速く流れるようになる *2。
が、ただそれだけ。
R1のデジタルスピードメーターには、最高で「284km/h」という途方もない値が表示されるのだが、言うまでもなく「疾走感」はまったくない。果てしなく続くストレートをひたすら“走り続ける”だけで、曲がることさえできない。
名称が、単なる「シミュレーター」ではなく「“サウンド”シミュレーター」となっているところがミソである。つまり、あくまで「音」をシミュレートするだけの企画なのだ。その割に、「楽器の方のヤマハ」謹製のヘッドホンから聞こえる肝心の“サウンド”も、いまいち音質が悪かった (私のデカ頭には、オーバーヘッド型のヘッドホンがフィットしなかった、という理由もあったかもしれない)。
この後、そんなショボい「シミュレーターもどき」に楽しそうに群がるオトナ達を何人か見かけたが、私は20秒で飽きた。人間、期待が大きすぎると、得てして裏切られるものである。
(つづく)