γ-GTP狂騒曲

「酒をやめたら健康診断の結果が軒並み改善された」

以前このブログで自慢気にそう書いたが、実は唯一変わらない数値があった。それは、まるでハイスペック・オートバイのマシン名のような略称によって大酒飲みの勲章として崇め奉られる、「γ-GTP」である。



 

まさかの「F判定」

ここ数年ずっと健康診断を受診している「アルファメディック・クリニック」では、いちばん最後に医師との面談があり、さっき撮ったばかりのレントゲンおよび腹部超音波の写真や、これまた採ったばかりのフレッシュな血液検査の結果等を見ながら、何か問題があればその日のうちに教えてもらえる。すばらしい。

toshueno.hatenablog.com

去年 (2016年) の健康診断では、3カ月間断酒していたこともあって自信満々で面談に臨んだわけだが、あろうことか、γ-GTPは「105」という驚異の数値を叩き出していた *1。自家製ハイボールを毎日欠かさず飲み続けていた2015年、2014年がともに「100」で収まっていたのにもかかわらず、である。なんで酒やめたのに上がるんだよ・・・。

毎年診てもらっている佐藤医師は、

「まあγ-GTPは、遺伝で高くなることもありますので」
「実際は (病気の疑いがあるかどうかは) 超音波検査の画像や他の数値を見て、総合的に判断しますので」

と慰めて (?) くれたが、約2週間後に拙宅に届いた「結果報告書」には、無情にも

総合判定:F

【要精密検査】

 <肝障害>
 内科または消化器内科で精密検査をお受けください

と書かれていた。

 

“脅し”に屈して精密検査へ

何のことはない、「F判定」も「要精密検査」も、まいどのことである。(ま、「要治療」じゃなきゃ問題ないでしょ)と思って、例年はスルーしていた。

が、今回は違う。7月31日から受診日前日の11月11日まで、3カ月と12日間、1滴も酒を飲んでいないのである。肝臓は「沈黙の臓器」とよく言われる。そして私の父親は、肝硬変で亡くなっている *2。ひょっとして、何かヤバいことになってるんじゃないだろうか・・・。

というわけで、医療機関の“脅し”に屈する形で精密検査の予約をして、2016年の年の瀬も押し迫った12月29日、川崎市幸区にある「第二川崎幸クリニック」に向かった。
f:id:ToshUeno:20161229080257j:plainちなみに、これ▲は昔「川崎幸病院」だった建物である。当該病院が別の場所に新築移転したのに伴い、建物はそのままで“ガワ”だけ新しくして (いわゆる「リノベーション」ってヤツね)、「第二川崎幸クリニック」として生まれ変わったのだ。

 

なぜ3回も行かなきゃいけないの?

予約の電話では詳細について何も聞かされていなかったので、精密検査もてっきり1日で終わるもんだと思っていた。

が、この日の担当だった高畑医師が言うには、

  • 今日はこの後、採血をして終わり
  • 次回はMRI検査
  • その次の回で検査結果を報告

なんと、都合3回も来いと言う。聞いてねえよ。

川崎に住んでいた頃なら、ここまで徒歩15分程で来られたが、現在は遙か彼方の横浜市戸塚区在住である。クルマで片道40分である。ものすごくめんどくさいのである。

ああやっぱり、精密検査なんて受けるんじゃなかったなあ・・・。

 

人生初MRI

年が明けた2017年1月21日。また「第二川崎幸クリニック」に向かう。この日はMRI検査である。午前10時半に受付を済ませ、ほぼ待ち時間ナシで検査“準備”室に通される。準備室の中に用意された狭い更衣室で検査着にソッコーで着替えると、椅子に座って待つよう促される。椅子のすぐ横には、注射台が置いてあった。

MRI検査について事前にネットで調べたら、とあるサイトに「造影剤を注射する」なんて恐ろしいことが書かれていたので、その注射台を目の当たりにして超ブルーになる。

(やっぱ注射すんのか・・・ヤだなあ・・・)

いいトシこいて、注射は大キライなのだ・・・だって、痛いじゃん。

ところが、看護師さんが検査用紙コップを差し出しながら「これを飲んでください」と言う。中には、超薄いガムシロップのような、透明な液体が入っていた。どうやらこれが「造影剤」らしい。ナマぬるくて中途半端に甘くて、なかなかマズい液体だったが、痛い思いをするよりは遙かにマシである。

程なくして検査室に入ると、中央に鎮座する巨大なマシンに圧倒される。

(おお、これがかの有名なMRIか・・・)

正面にはGEヘルスケア社のロゴと、「SIGNA」という製品名が書かれていた。

www3.gehealthcare.co.jp

仰向けになり、両腕を上げてバンザイの姿勢をとるように言われ、ヘッドホン状の耳当てを装着されて、腹部には二輪用プロテクタをひとまわりデッカくしたみたいな樹脂板を被せられる。「クオイイィィーーン」というステキな作動音とともに寝台がせり上がり、マシンの中に吸い込まれる。ヨワイ49、MRI装置の中に入れられたのは生まれて初めてである。まるで、ショッカーの改造人間 (例えが古すぎ) にでもなったような気分だ。このまま、この腐り始めた肉体をサイボーグ化して欲しい・・・。

中はかなり狭い。顔面と、眼前に迫るマシンの壁面との距離は、20cmぐらいだろうか。起き上がることはもちろん、身動きすることもほとんどできない。閉所恐怖症じゃなくて良かった。

そして、かなりうるさい。耳当てを装着されるとき看護師さんに「ものスゴくうるさいですから」と言われて、「ゴゴゴゴオォォ~」といった重機の動作音っぽい音を想像していたのだが、「クァックァックァックァッ」「ビビビビビビ」「ボボボボボボ」みたいな、「警告音」とでも言えばいいのだろうか、さまざまなパターンの不思議なサウンドに全身が包まれる。

「時間はだいたい20分から30分くらいです」

そんな説明も受けていたので、(ここに20分もいるのはキツいなあ・・・)と思ったが、すぐに慣れた。そして我ながら信じられないことに、「寝落ち」していた。「キツい」と思った瞬間からそう経たないうちに、看護師さんの「はい、終わりました~」という声で我に返った。

(▼第二川崎幸クリニックに置いてあったヤツは、もっと古くさかった)
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画像出典:SIGNA Returns: SIGNA Creator and SIGNA Explorer designed for improved patient comfort and productivity

 

結果は案の定・・・

1月26日、とうとう3回目の「第二川崎幸クリニック」。ちなみに、ここは「午前9時診療開始」となっているが、おそらく8時20分頃には中に入って受付を済ますことができる。
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例によって、渋滞を避けるために午前7時には川崎に着いていたのだが、クルマの中にずっといるのも苦痛なので、近くの南河原公園で寒さに震えていたのだ。だから、少しでも早く中に入れてもらえるのはありがたい。

医者の不養生

午前8時50分頃だろうか、看護師さんに名前を呼ばれて返事をすると、彼女はこう言った。

「申し訳ありません、担当の高畑 (医師) ですが、本日体調不良でお休みをいただきまして・・・代わりの者が担当しますので、そのままお待ちください」

なんだよ・・・初診のとき、高畑医師が「私の担当は木曜日だけなので」って言うから、会社休んで来たっていうのに・・・。

画像ぐらいくれてもいいのに

午前9時になって、他の医師に受診する人達が次々に名前を呼ばれて診察室に入っていく中、いちばん最初・・・午前8時25分から待っていた私は、なかなか名前を呼ばれなかった。代わりの医師が見つからないのだろうか。まったく、迷惑な話だ。

「定時」を10分近く過ぎた頃、ようやく名前を呼ばれて診察室に入る。

吉川さんあたりから市民権を得たらしい、最近流行りの「白髪をわざと染めない」ヘアスタイルもバッチリ決まった「代打」藤原医師は、ディスプレイに映し出されたMRI画像を見ながら、コトもナゲにサラリと言った。

「特に異常はありませんね・・・何か質問はありますか?」

健康診断まで3カ月ちょっと酒やめてたのに、なぜγ-GTPが下がらなかったのかと聞くと、

「ああ、そんなにやめてたんですか・・・うーん、やっぱりお酒ですかねえ」

なるほど、たった3カ月ぐらいじゃあ、長年に渡って蓄積されたγ-GTPは減らない、ということなのだろうか。本当に大丈夫なのか?と念を押すと今度は、

「ええ、γ-GTPだけじゃなくて、我々は画像と他の数値を総合的に見て判断しますので、問題ないですね」

結局、「アルファメディック・クリニック」の佐藤医師と同じようなことを言われて、3分にも満たない「診断」は終わった。もちろん、「病気じゃなかった」のは喜ぶべきことなのだが、さんざんパラ金と時間を使ったのに、こうもシンプル極まりない結論を出されてしまうと、安心よりも「拍子抜け」が先に来てしまう。

大枚はたいてMRI検査をしたのだから、せめて、その画像をプレゼントでもしてくれればいいのに。

 

健康診断の「判定」とは何なのか

今回の精密検査で、「第二川崎幸クリニック」に支払った金額は次のとおり。

1回目 = 3,770円
2回目 = 6,450円
3回目 = 380円
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合計  = 10,600円

私の場合、サラリーマンよろしく3割負担なので、単純に計算すれば総額35,000円ちょっとの「儲け」が第二川崎幸クリニックに転がり込むことになる。しがない小市民の不安を煽って精密検査に誘導し、3回も通院させて「無駄金」を巻き上げる。こんなことをしてるから、そりゃ国の医療費も膨らむ一方なわけだ。

「γ-GTPだけではなく、他の数値も総合的に見て判断する」のなら、γ-GTPだけが高くて他の数値はぜんぜん正常値範囲内の私が、なぜ「F判定」なのか。もちろんMRI検査はないが、腹部超音波検査はやっているのだから、健康診断の段階で正しい判断はできないのだろうか。

ちなみに、健康診断の後もずっと酒をやめ続けている私だが、去年の年末 (12月29日) に第二川崎幸クリニックで採血したときのγ-GTPは、「160」だった(笑)。

γ-GTPって、いったい何なんだ?

 

*1:成人男性の正常値は「10~50」IU/L

*2:まあ彼の場合は、医者に「酒やめないと死ぬぞ」と脅されても酒をやめなかった、「キング・オブ・ドランカー」だったわけだが