四国・九州ツーリング2017~5日目後篇:帰ろうか

気づいたら、いつのまにか6月になっていた。単調で色彩もなく、種々の不機嫌で埋め尽くされた日常は、暦の感覚さえ奪い去る。面倒な衣替えも放棄して、上着のままで会社への道を急ぐ。

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思えばちょうどヒト月前は、このワチャワチャした神保町からはるか遠く離れた水俣の、のどかな田舎道で悩んでいたのだった。帰るべきか、旅を続けるべきかと。



 

じゃ、帰ろうか

水俣病歴史考証館を出てしばらく、アテもなくただ走り続ける。もうすぐ16時。

この旅で、もうひとつだけ行きたい場所があった。「やまなみハイウェイ」。ま、「場所」ってより「道路」だけど。絶景大好きオートバイ雑誌「BikeJIN」でも頻繁に採り上げられる、オートバイ乗り垂涎の九州随一(らしい)絶景道である。
(ココからどのぐらいかかるか調べてみるか)
空き家と思しき民家の軒先にM109Rを停めて、スマホを取り出す。愛用のPND「Panasonic Gorilla CN-G500D」では、「道路の検索」はできないからだ。「やまなみハイウェイ 入口」でググってヒットした記事の、正確かどうかはわからない住所をPNDに打ち込み、ルート検索を実行する。到着予想時刻が「19:24」と表示される。
(19時って(笑) そんなに遠いのかよ)
17時頃までに入口に到着できれば、日没まで1時間ぐらいは絶景道が堪能できると思ったが、また九州の広さをアマく見ていた。「山並み」ってぐらいだから、19時半に着いたんじゃあ、ただ真っ暗闇の山道を心細い思いをして走らねばならない。暗黒に沈んだグネグネ山道の心細さは、前日の都城で懲りている。

九州随一の絶景道をこの日のうちに楽しむことが絶望的になったところで、朝には既になくなりかけていた「旅を続ける気持ち」が完全に潰えた。
(じゃ、帰ろうか)
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「熊本県水俣市月浦」という風流な名前の場所にある、空き家からのこの道▲は、既に帰路である。

拙宅までの距離は、1,245km。
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2年前のゴールデンウィークには、山口県下関市から当時住んでいた川崎までの1,000kmの道のりを・・・しかも姫路辺りまではドシャ降り、音羽蒲郡IC手前までずっと雨が降り続く中を、徹夜で走りきった私である。 

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今年はそれよりたった245km長いだけだ。そして、2年前に下関を出たのは13時頃。これまたたった3時間遅いだけだ。さらに、当然2歳トシも喰ってそのぶん体力も落ちている。だが、雨の予報は出ていない。

  • マイナス要素=距離、時間、年齢
  • プラス要素=天候

ま、2年前と比較してプラス要素は天候だけだが、雨の高速道路を走り続ける過酷さは、オートバイ乗りにならわかってもらえるだろう。それがないぶん、総合的に考えて、なんとかなるんじゅないか。徹夜で「横浜までイッキ」はムリでも、朝までに愛知あたりまで行くことができれば、ゴールデンウィークの大渋滞は避けられるはずだ。そう考えて走り出した。

結論から言うと、アマかった。大アマだった。2年前にはまったく感じなかった「今年最大の敵」が、5月に入ってもまた私を襲ってきたのである。

 

九州自動車道

ここからは高速道路をただひたすら走り続けただけなので、休憩や給油をした各SA/PAの風景を時系列で掲載します。

緑川PA

熊本県熊本市南区、5月2日の17時頃。まだ帰る意欲に満ち溢れていた。
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山川PA

福岡県みやま市。17時50分頃。おゲレツ・カスタムのスカイラインクーペを見て萎える。
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このとき新店舗はまだ工事中でフェンスで覆われていたが(スキマから写真を撮った)、5月17日にオープンしたそうだf:id:ToshUeno:20170502174727j:plain

直方PA

福岡県直方市。19時10分頃。まだ福岡なのに、暗くなりかけてきて少し萎える。
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まだこの日は平日ということで、乗用車は少ない。
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中国自動車道

伊佐PA

山口県美祢市。20時30分頃。f:id:ToshUeno:20170502202300j:plain

平日のトイレしかないPAには、20時台とは思えないモノ悲しさが漂う。
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残り1,000kmを切って、「希望」が見えてくる。
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到着予想時刻は5月3日の午前8時29分。一切休まずに走り続ければ、朝のうちに帰ることができる。まあそれは到底ムリだが、このときはまだ、「なんとかなる」そう思っていた。

 

山陽自動車道

佐波川(さばがわ)SA

山口県防府市。21時5分頃。高速道路に入って最初の給油。
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下松(くだまつ)SA

山口県下松市。21時50分頃。
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他のオートバイの、ほぼ「地元」と言っていいナンバーを見て、
(みんな近くていいなあ)
と思う。
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玖珂PA

山口県岩国市。22時40分頃。
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軽・ミニバン・ミニバン・軽・ミニバン・軽・ミニバン・・・。
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この国のクルマ好きたちは、いったいどこに行ったんだろう?

沼田PA

広島県広島市。23時55分頃。
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実は日付が変わろうとする頃、もう限界を感じていた。
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(まず使わねえだろうけど、念のため持ってくか)
そう思ってタンクバッグに入れてきた「UNIQLO ウルトラライトダウン」と「RSタイチ 防水インナージャケット」を2枚とも着込まなければ耐えられないほど、寒さを感じていたのだ。だから、イッキに帰るのはもうあきらめて、とある施設の広島にある店舗に電話をしたんだが、休憩するにしても、さすがに広島から帰るのでは翌日の大渋滞がツラすぎる。そう思って、必死に耐えながらさらに東に向かった。

高坂PA

広島県三原市。25時(5月3日 午前1時)頃。ヒトっコひとりいやしない。
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オートバイ乗りも皆無。いつもは空いているとうれしいが、こういうときは寂しいと思う、自分勝手なおっさんがひとり。
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ちなみに、渋滞ポイントで有名な「高坂SA」は関越道、こっちは「高坂PA」。

八幡PA

広島県三原市。25時55分。寒さのあまり、PAごとに休憩をとる。
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既に限界が近かったのだろう、この何の面白味もないトイレの写真▲が1枚残っているだけだった。

岡山IC

岡山県岡山市。26時(5月3日 午前2時)40分頃。
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岡山に入った辺りで寒さのあまり眠くなってきたので、もう完全にギブアップ。高速道路を下りて、とある施設に向かう。寒くなり始めの頃は、
(寒い方が眠くなんなくていいか)
なんて思ってたが、あまりに寒くて、低体温症状態になっていたようだ。雪山で遭難して「寝るな!寝たら死ぬぞ!」というアレである。深夜とは言えまさか5月に、こんなことになろうとは。

こういうICの施設のトイレに入ったのは、去年の7月に高速道路でパンクしたとき以来であった・・・
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ま、「だから何だよ」って話だが、とにかく建物内の温かさがありがたかった。この長方体の素っ気ない建物が懐かしい。

本当は、とある施設に行くまでが「5日目」の出来事なのだが、日付も変わっているし、そこまで書いてしまうと「6日目」として書くことがなくなってしまうので、そこからは次回で。

 

5日目_走行データ

  • 走行距離=855.7km
  • 走行時間=14時間52分 ※27時まで

(つづく)