新型“ニッサン”スカイラインを見てきた(後篇)

2019年7月某日、日産グローバル本社ギャラリーで「新型スカイライン」を見てきた。2017年12月版“INFINITI”スカイラインを大枚はたいて購入した者として、思いのタケを書く。

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2年も経っていないのに

さすがのミスフェアレディ

私ごときより遙かに優秀な、日産の開発者の方々が懸命に作ったクルマにケチをつけるつもりは毛頭ない。ただ今度の“ニッサン”スカイラインは、今年 (2019年) の9月発売である。2017年12月のマイナーチェンジから、2年と経っていない。

特に私の場合、2018年1月14日に契約したにもかかわらず、例の完成検査のゴタゴタもあって、納車は3月まで待たされた。納車からたったの1年半で、ガラリと新しくなったバージョンが世に出るのは、あまり喜ばしいことではない。マツダのように「いわゆる『マイナーチェンジ』はしません、我々は『年次改良』をしていきます」とハナから謳っているメーカーならわかる。だが日産はそうではない。今回の“ビッグ”マイナーチェンジは、まさに「寝耳に水」であった。

自車と同じオーロラフレアブルーパールの展示車を見ながら、そんな話をかみさんとしていると、見目麗しいミスフェアレディのひとりが「カタログをお持ちになりますか?」と話しかけてきた。これはいい機会だ、ちょっとクレーマーになってみよう。

response.jp

私「ワタシ、オーナーなんですよ、現行版の」

ミスフェ「ああ、“INFINITI”のですよね? ありがとうございます」

私「ちょっとムカついてます、買ってから2年も経ってないのに」

ミスフェ「まあ、いつ出るかわかりませんものねえ、買うタイミングは難しいですよねえ (ニッコリ)」

私「・・・」

かる~くあしらわれてしまった。さすがはミスフェアレディ、ショボいおっさんクレーマーの扱いなど手慣れたもんである。そもそも若くてキレイな女に、私ごときがかなうはずもない。

いまさらの電動パーキング

今回の改良でもっとも複雑に感じたポイントは、「電動パーキングブレーキ」である。

私が購入した2017年12月版は、旧態依然とした「足踏みパーキングブレーキ」であり、そこが最大のガッカリポイントでもあるからだ。 (やっぱマイナーチェンジで電動パーキングに変えるのは難しいんだろうな)なんて自分に言い聞かせてあきらめていた。

ところがどうだ。

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いまさらの電動パーキング

なんだ、できるんじゃん。確かにココのスペースはガラ空きだしな・・・って、スペースの問題じゃないだろうけど。

今回改良の最大のトピックである「プロパイロット2.0」が、「前回のマイナーチェンジには間に合いませんでした」というならわかる。「手放し運転」を実現したいがための様々な技術が、これでもかってほどに搭載されているからだ。

でも、「電動パーキング」はそうじゃないだろう。2017年当時のセレナにだって付いていたはずだ。要は、「やる気」の問題である。

いまさらのツインターボ

もうひとつ解せないのは、スカイラインの“元ネタ”である「INFINITI Q50」には以前からあった400馬力ツインターボが、今さらながら「400R」という仰々しい名前で出てきたことだ。

www.motor1.com

スカイラインにとって「R」の1文字がいかに特別であるかは、スカイライン好きのおっさんなら知っているだろう。

ちなみにその特別扱いを示すように、「400R」はカタログは別になっている。わずか数ページのペラペラなカタログだが、逆に「スカイライン」のカタログには「400R」に関する情報は一切掲載されていない。

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400R

どんなに新しくしたところで、トヨタ・クラウンの20分の1も売れないであろうスカイラインにとって、「プロパイロット2.0」だけでも相当な大盤振る舞いなのに、なぜ今さら、ツインターボまで出してきたのか。というより、なぜ今まで出さなかったのか。

2017年当時はまだ、思うがままに贅の限りを尽くしていたカルロス・ゴーン様が「どうせミニバンと“ケイ”しか売れないニッポンにはそんなもの必要ない、そのぶんオレのワケマエを増やしてくれ」とでもおっしゃったのだろうか。

 

「プロパイロット2.0」はものすごく欲しい

どこかの誰かが監視されてまで自動運転なんてしたくない」なんて書いていたが、私はそうは思わない。

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監視の“眼”

いいじゃないの、自動運転。今でさえ、高速道路に乗ったらすぐ「プロパイロット0.5」とも言える、インテリジェント クルーズコントロールアクティブレーンコントロールのスイッチをONにする私である。

しょせん、チンタラしか走れない日本の高速道路だ。他車がいる状況で追い越しを続けるのは低知能者の行為だし、空いていれば今度は覆面にパクられる。クルマが代わりに「チンタラ走り」をやってくれるなら、永ちゃんばりに「どうよ」とか独り言ちながら悦に入っていた方が、よほど有意義な時間を過ごすことができるはずだ。

今回は展示車に乗り込んだだけで、フェンシングの太田さんみたいに体験したわけじゃないので「プロパイロット2.0」が実際にどんなものなのかはもちろんわからないが、

現行よりフタまわりはデカくなったこのセンターディスプレイを見ただけでも、おっさんの期待は膨らんでくる。

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故障中

ま、この「システム故障」のメッセージだけには、お目にかかりたくないものだが。(これ、ホントに大丈夫?)

 

日産のダメなところは、あきらめてしまうこと

さて新型スカイラインの話はこれぐらいにして、日産グローバル本社ギャラリーに展示されていた他のクルマについても書いておきたい。

まずは、現行「フーガ」。このクルマは(シーマとかGT-Rとかの特殊なクルマを除けば)日産のフラッグシップであるはずなのだが、その旧態依然ぶりにアゼンとしてしまった。

エクステリア・デザインは、まだまだイケていると思う。少なくとも、レクサスLSのワチャワチャして肩肘張りまくったデザインよりは、相当好ましい。そう思う人も、一定数はいるはずである。

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フーガ

ところが、インパネの中央に鎮座するアナクロなインフォメーション・ディスプレイと、ちっさいナビゲーション・ディスプレイを目にすると、売れない理由がわかってくる。

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古くさいインパネ

ええっと、フーガって、日産のフラッグシップだよね?INFINITIにとっても「Q70」はフラッグシップだよね?なんで、こんなモノクロでちっちゃい、10年以上前のディスプレイのまんまなの?

ジャーマン・スリーやレクサスに敵わなくても、せめてフラッグシップぐらいには、あきらめずに手を入れ続ける。これが自動車メーカーとしての正しい姿勢じゃないのだろうか。

 

GT-Rは意外にカッコ良かった

一方、「12年間フルモデルチェンジなし+年次改良でホソボソとその名前を残し続けている」GT-Rである。

スカイラインレベルの債務でさえヒィヒィ言っている私にとってはまったく縁のない“超”高級車ではあるが、その古くさいエクステリアについて、このブログでもボロクソに書いたこともある。

ところが、ショールーム効果なのか、はたまた新色「ワンガン・ブルー」が青いクルマ好きの眼に刺さったのかはわからないが、展示されていた2020年版・GT-Rは、かなりカッコ良く見えた。

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GT-R

新型スカイラインの取って付けたような◎テールと違って、この◎テールは気合いが違う。そしてすっかり見慣れた感はあるが、このスパッと切り落としたテールエンドは大好物だ。

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これぞ◎テール

登場から12年経とうとしているが、シガないスカイライン乗りがGT-Rのドライバーズ・シートに座ったのは初めてである。

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インパネ

フーガ同様の古くさいデザインではあるが、「速く走る」ことに特化しているぶん、さほど違和感はない。そして、ステアリングの手触りやシートにカラダを収めた感覚は、さすがに1,000万円超のクルマである。「いいクルマ感」がヒシヒシと伝わってくる。

ステアリングに手を添え、フロント・ウィンドウ越しに見える風景(ま、そこはショールームなんだけど)を眺めながら、(ああ、コレ欲しいなあ)と素直に思えたのだった。買えないけど。

 

現行オーナーのことも考えて欲しい

これまた前回のフルモデルチェンジから干支がひとまわりしそうな、フェアレディZ・50周年記念車のシートに座ってシフトレバーをコキコキしながら思った。

マイナーチェンジでスカイラインにあれだけ手を入れられるなら、その前にやるべきことがあるだろう、と。

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やっぱマニュアルはいい

どこかのアホな自動車雑誌が、日産エンブレムに変わっただけで「オレ達のスカイラインが帰ってきた」なんて書いていたが、思わず失笑してしまった。エンブレムがINFINITIだろうが日産だろうが、メーカーが「これがスカイラインです」と言えば、それがスカイラインなのだ。だいたい「オレ“達”」ってなんだよ。なんで共同所有なんだよ。買って、自分のモノにしてから文句言えや・・・おっと閑話休題。

日産エンブレムでもいい。◎テールでもいい。Vモーショングリルでもいい。日産が「スカイラインを何とかしたい」と考えて手を入れたのであれば、それはファンとして喜ぶべきことだ。

ただ、2017年12月版の現行スカイラインは、いまだに「SKYLINE NissanConnect」アプリに接続さえできない。当該アプリが更新されないまま、ずっと放置されているからだ。

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次期バージョンの発売を1カ月後に控えたこの時点でされていないのだから、今後更新されることはないだろう。

このアプリでできることなどタカが知れているから、どうでもいいっちゃあどうでもいいのだが、問題はそこではない。現行ユーザをナイガシロにしたまま、次期バージョンの開発と喧伝にばかり精を出す、メーカーの姿勢こそが問題なのだ。「新型スカイラインの開発原資を直接提供した」と言っても過言ではない、数少ない2017年12月版オーナーは、みな立腹しているのではないだろうか。

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沈みゆくINFINITIスカイライン

まあ私ごときがいくら腹を立てたところで、今さら日産の姿勢が改まるとは思えない。結局は「オレのスカイライン」であるINFINITIスカイラインに対する債務を、複雑な思いを抱えながら返済し続けることになるのだろう。

(この項おわり)