M109Rで二輪のユーザー車検に行く_2021(後篇)

2021年8月某日に行った、“旧車”ブルバードM109Rのユーザー車検のつづき。 

 

悪いのは僕のほうさ君じゃない

いろいろウンザリすっかりゲンナリしながら受付窓口に書類を提出し、「B棟で検査を受けてきてください」との“お墨付き”を無事もらう。万全の体調で検査に臨むために用を足してから、A棟を後にする。時計を見たら、14時ちょうどだった。

(お、ちょうど時間だな)

そう思いながらM109Rに跨がり、そぼ降る小雨の中をB棟に向かう。

(ひーーヘルメットかぶった方が良かったワ)

B棟ですぐに検査が始まることもあり得るしヘルメットをかぶっていると検査員の声が聞こえないので、前回(2年前)と同様にヘルメットは付属品の“巾着袋”に入れてたすき掛けしたのだ。止まっている状態では小雨でも、オートバイで走り出せば結構な量の雨粒がライダーを濡らす。しばらく乗っていないので、そんな当たり前のことさえ思い浮かばなかった。

ヨワイゴジュウシ波平世代、減り始めた頭髪と弛み出した顔面を濡らしながらB棟に着くと、案の定検査員Aがすぐに近寄ってきた。書類一式を手渡すと検査員Bもやってきて、オドメーターとかウインカーとかブレーキランプとかハンドルロックとかのいわゆる「お気楽テスト」が始まる。私のM109Rは品行方正な“ど”ノーマルなので、ここで引っかかることはあり得ない。

テストをひととおり終えた後、検査員Bは言った。

検査員B「あと残りは14時30分からやりますんでーーちょっとここで待っててもらえますか」

私「え!? あーーはい」

クチでは一応承諾しつつも(なんでだよ、なんで今やってくれねえんだよ)と不満に思ったが、これは検査員が正しい。

緊急事態宣言下の完全テレワークな日々によって早起きがまったくできなくなってしまった私が予約したのは「第4ラウンド」、検査開始時刻は「14時30分」である。そしてその中断時の時刻は14時17分、「第3ラウンド」の終了時刻を2分過ぎていた。時間を間違えてやって来たうっかりオヤジに、その検査員達はむしろ親切に対応してくれたのだ。

(あ)(オレが間違えてんじゃん)

検査員達が立ち去ってから「検査予約事前確認」メールを見直して自分の間違いにようやく気づいた。申請手続きを終えた時刻があまりにもちょうど良かったため、「早く帰りたい」意識によって開始時刻の記憶が勝手に書き換えられたようだ。とんだ迷惑ヤローであった。どうもすみません。

 

暴力沙汰もムベなるかな

待っている間は“記念撮影”をしたりして時間をツブす。ここに来るのも、今度こそ最後かもしれないので。 

 

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“旧”車の輝き

とは言え8年前に初めて来た時からほとんど代り映えはしないし、そもそも棟内は写真撮影禁止だそうなのですぐに飽きてウロチョロしていたら、誰に何を知らせようとしているのか皆目見当が付かないほど目立たない「お知らせ」掲示板に物騒な警告文が掲示されているのに気づいた。 

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物騒な世の中ですなあ

お知らせ

最近、自動車の検査において、安全及び環境に関する基準に適合していないにもかかわらず威嚇等により合格を強要する事態が発生しています。

警 告

自動車の検査において、当法人の職員に対する暴力事件が頻発しています。

掲示された順番としては

  1. 「威嚇による強要“発生”」のお知らせ
    → 効果ナシ
  2. 「暴力事件“頻発”」の警告

ってな感じで、現場の混乱がエスカレートしているってことなのだろうか。

それにしても「暴力事件が“頻発”」って(笑) ホントにそんなヤツが何人もいるのかよ、とオモシロがっていたら、程なくして検査員Bが戻ってきた。ムダにリアタイヤがブッといM109Rにとっては逆アドバンテージな、強烈なヨコGとの闘いを強いられるローラー台での「恐怖テスト」の始まりである。

今回は、5回目にして過去最大の恐怖であった。なぜかって、検査員Bがまともに指示を出してくれなかったからだ。正確には何かを言ってはいたのだが、エンジン音にかき消されてまともに聞こえなかった。彼は「周囲がうるさければ相手に聞こえるように声を張る」とか、そういうまともな気遣いができる人間ではないようだった。

何のテストをしているのか把握できないまま、あれもう終わり?と思っていたら

検査員B「リア・・・(まったく聞き取れず)・・・奥まで移動してください」

は? 聞き返してもフルシカトでとっとと歩き出す検査員B。何が何だかわからないまま誘導され、B棟の出口まで移動させられる。??である。そして今度は、ローラー台の位置まで延々バックしろと言う。ますます???である。ローラー台に戻すだけであれば、なんでわざわざ出口まで行けと言ったのか?

車両重量350kg超かつバックギアなんて気の利いた装備は当然付いていないM109Rを、数メートルもしかもローラー台とかを避けながらだと壁との余裕がほとんどない“狭路”をバックさせるのがどれだけ大変か、コイツはわかっているのだろうか?

イラつきながら、壁にぶつかりそうになりながら中途半端にバックしたら中途半端な体勢でローラー台に乗ってしまい、立ちゴケの恐怖が倍増したまま這這の体でブレーキテストとスピードメーターテストを終えた。

最下層に属するとは言えいちおうサラリーマンなのでよもやこの程度でブン殴ったりするほど世捨て人ではないが、まあこんな態度とられた挙げ句に結果が[×]だったら(後述)暴力振るっちゃうファンキー野郎もいるかもな、と思ったのだった(擁護しているわけではありません)。

 

まさかの光軸アウト

イケメン工場長を変えてしまったもの

車検当日の3日前、毎度御用達のレッドバロン戸塚で「車検前点検」を受けた。

8年前の最初のユーザー車検の際は「普段点検してんだから問題ないでしょ」とばかりに前日は石巻市~陸前高田市を縦断する約1,200kmもの東北沿岸ツーリングを敢行したのだが(当時のガッツぶりには我ながら驚く)、光軸であえなく[×]判定を喰らって現実の厳しさを思い知らされて以来、必ず直前に「光軸調整込みの」点検を受けるようにしている。

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Ninjaではなく懐かしのR1-Zをメインに据えた在りし日のレッドバロン戸塚

店に着くといつものイケメン工場長が出迎えてくれて、点検内容について話し始めた。

工場長「光軸の調整はどうしますか?」

電話でもそう伝えてあったが改めて「お願いします」と言うと、「後になって文句言うんじゃねえぞ」といった勢いで彼はまくし立てた。

工場長「当日に車検場の近くで調整してもらった方がいいと思いますよ、自走してるうちにどうしてもズレちゃうんですよね、(車検を)ウチで全部やる場合は陸送するから大丈夫なんですけど」

前回も確かに彼にお願いしたはずだが(ブログにそう書いてあるので)、前回は何も言われなかったと思う(ブログに何も書いてないので)。2年の間に彼を変えてしまったのは何だろう。昨今メディアを賑わせているようなカスハラムーブメントが、こんな片田舎にも押し寄せて来ているのだろうか。

きちんと車検前点検をお願いするようにした2回目以降は何の問題もなく光軸テストもパスしているので、レッドバロンのメンテナンス部門には全幅の信頼を置いている。「光軸調整に1,700円かかりますけど本当にやりますか?」と念を押す工場長の口ぶりに(そんなに文句言ってくるヤツいるのかな、大変だな)と同情は感じたものの、私の信頼は揺らがなかった。今回の車検を受けるまでは。

打ち砕かれた自信

這々の体でスピードメーターテストを終えた後、自信満々で光軸テストに臨んだレッドバロン信奉者の老眼に映ったのは、まさかの[×]印であった。

(え・・・ウソだろ・・・)

まるで勝ち誇ったかのように「光軸を調整してきてください」と言い放ちながら検査員Bが手渡す書類一式を無言で受け取り、B棟内の小部屋に幽閉された最終チェック担当者にクリアケースごと書類を渡す。

コイツもまた「光軸を調整して来い」的なことを言ったと思うが、クリアケースには「保安検査における不適合状況のお知らせ」というポップなタイトルの紙ッペラが入っていた・・・ことを、拙宅に帰ってから気づいた。

「お知らせ」を入れたのならその旨を伝えるとか、話すのが面倒ならその紙をクリアケースのいちばん上に入れるとかすればいいのに、当該幽閉者もまたそういった社会人であれば当然と思われる気遣いができない人物のようだった。

たかだか十数分の検査に手数料を1,700円も支払っているのだから、川崎自動車検査登録事務所の皆さんにはもっとユーザーフレンドリーな対応をして欲しいものである。 

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“無断で”入れられていた「不適合状況のお知らせ」※一部加工済み

8年ぶりの「テスター屋」

先程より確実に強まった雨の中を、ヘルメットをかぶって走り出す。隣の敷地にある「一般社団法人川崎地区自動車協会」 に向かう。「川崎地区自動車協会」というタイソウなネーミングだが、要はネット界隈で「テスター屋」という蔑称で呼ばれている完全コバンザメ法人である。

8年前は(なんかキッタねえトコだな)と思った記憶があるが、今回は当時よりはキレイに片付いているように感じた。また当時は3人のジj・・・高齢男性がいてコバンザメヨロシク全員が横柄な態度だったが、今回最初に出迎えてくれた若手(推定年齢43歳)は平身低頭親切丁寧でとても感じが良かった。先輩従業員を反面教師にしているのだろう。

現地では「雨がより一層強まる前に早く帰りたい」一心で(というか、要は同時に1つのことしか考えられないバカなので)気づかなかったのだが、後になって(ローラー台に乗った体勢が悪くて光軸ズレたんじゃねえの)と思ったりもしたが、8年前と変わらず客を客とも思っていない態度の痩身ジj・・・ジイさんがヘッドライト周りをイジると、「Image Processing」というちょっと何言ってんのかわかんないマシンのディスプレイ上の数値が確かに変わった *1 ので、まあ光軸はズレていたのだろう。

上述の「保安検査における不適合状況のお知らせ」には「灯火の向き 上方超え」とあるから、「上にズレていた」ということだろうか。そして図は「矩形が適正範囲で『最高光度点』が範囲外だよ」ってことだろうか。知らんけど。

いくら振動の多いM109Rだからって、8年前のように前日1,200kmも走ったのならともかく、点検当日の「レッドバロン戸塚→拙宅」の帰路2km弱+「拙宅→川崎車検場」の30km強程度でそうそうズレるもんでもないだろう。

客にエクスキューズをまくし立てる前に、レッドバロン戸塚のイケメン工場長には光軸測定方法・調整方法の見直しをぜひオススメしたい。

 

まさかのDX

テスター屋に大枚2,200円 *2 を支払い、光軸“再”テストを難なくパスしてA棟で車検証の発行を待つ間、1時間前はスルーしたナゾの端末の正体を確認する。

2年ぶりにA棟に入った際、手書き用カウンターの手前に何やら見慣れない端末があることには当然気づいたのだが、(どうせPCもスマホも持ってねえ人用の検査予約マシンかなんかだろ)と思って一瞥さえせずにスルーしていたのだ。

でもよく考えてみれば今日ビPCもスマホも持っていない人がこんな場所に来ないだろうし、そもそもココで予約するってこと自体がおかしい。いくつになっても思慮が浅い、成長のない初老の男は、ディスプレイ上のステキメッセージを見て軽い衝撃を受けた。

(え、ハナからコレ使っとけば、ヘタクソな字で手書きしなくて良かったじゃん!)

と。 

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フルアナログな世界の“ちょっとIT”

Google検索をすると、いちばん古いモノでは2019年3月にこの実直ネーミングなシステムの存在が確認できる記事があるが(当該記事のロケーションは兵庫県)、2年前に訪れた際こんな端末があった記憶はまったくない。まあ全国一斉導入ってワケでもないだろうし、きっとココ川崎はユーザーが少ないから後回しにされたんだろう。知らんけど。

デフォルトではOFFになっている「OCR申請書」「自動車重量税納付書」のチェックボックスをONにしてスキャナーを車検証のQRコードにピッとやれば、2年ぶりに手書きをすることもヘタクソな字に萎えることもないというワケだ。

さらにDXを進めて(利権が絡んでるとか法律がどうとか、その存在意義は知らないが)クソ面倒で不衛生な現金払いオンリーのなんちゃら印紙も廃止してオンラインのクレジットカード払いに変更すれば、申請用紙さえも不要になるだろう。

そうなるまで、果たしてあと何年かかることやら。

(この項おわり)

 

*1:240→300、単位は不明

*2:8年前比・100円の値上げ