使いにくいエースのビジネスリュックをカスタマイズした:前置き篇

通勤用のリュックサック(いわゆる「ビジネスリュック」)を5年半ぶりに買い換えた。それに関するヨモヤマ話。



 

リュックにしたワケは

私が通勤にリュックサックを使うようになったのは、ちょうど20年前、1997年頃である。Windows95が世に出てから一般にもパソコンが爆発的に普及し、ノートパソコンを仕事で使うようになった頃だ。なぜリュックサックを使うようになったのか。いくつか理由がある。

荷重が両肩に分散されること

昔のノートPCはとにかく重かった。ノートPC+ACアダプタと普段使用する小物をリュックに入れて重量を計ったら、10kgを超えていたこともある。

この国の少年少女が生まれて初めて重い荷物を運ぶために背負わされるのが、リュックサックを起源とするランドセルであることからもわかるように、クソ重いノートPCを運ぶのにリュックサックというのは理に叶った選択なのだ。

そして、片手や片腕で携帯するバッグに対する大きなアドバンテージは、「荷重が均等に両肩に分散されること」である。その昔、「ショルダーバッグを片方の肩に掛け続けていると背骨が曲がる」というマコトしやかな話を聞いてからは、ショルダーバッグの類を持つ気にはならなくなってしまった。

昔からPC運搬に特化した商品があったこと

いちばん最初に購入したリュックサックは、確かサンワサプライのノートPC運搬に特化した商品であったと記憶している。ノートPCの形状に合わせて間仕切りがあって、底面に衝撃吸収剤が仕込まれているヤツ。

実際に落としたことは一度もないので本当に衝撃を吸収してくれるかどうかは定かでないが、間仕切りによってある程度固定されるのは、持ち歩くときに疲労を軽減させてくれる要因だと思う。

両手が自由に使えること

使い始めた頃から、これがいちばん重要な理由であった。もし不意にチンピラに絡まれても、荷物を気にせずすぐに戦闘態勢に入ることができる。「ストリートファイター」なんてオートバイのジャンルがあることからもわかるように、チマタには争い事が溢れている。幸いなことに20年間、「リュックだったから助かった!」なんて事態に陥ったことはないのだが。

後述する日経新聞夕刊の記事によれば「子供と手を繋ぎたいから」なんてホノボノな理由でリュックを使う人もいるようで、世間と自分との感覚の落差に驚いてしまったが、私の理由は半分は冗談だが、半分は本気である。

 

時代はビジネスリュック?

最初に買ったサンワサプライの商品から20年間、いろんなメーカーのいろんな商品を使ってきたが、まったくブレることなく「通勤はリュックサック」である。

1990年代はおろか、つい最近まで「サラリーマンがリュックサックって(笑)」という風潮であったが、どうやらやっと、時代が私に追い付いてきたらしい。その証左であるこの記事▼は、もともと今年4月17日の日経新聞夕刊に掲載されたものである。

style.nikkei.com

20~30代を中心に、リュック型のビジネスバッグを利用する人が増えてきた。〔中略〕

以前の「重い荷物を運びやすく」というニーズから、最近は「両手の自由度」が重視されている。「手をつないで子供を保育園に送っていきたい」との声も。

ビジネスリュック利用広がる 「不相応の印象」なお|出世ナビ|NIKKEI STYLE

この記事の冒頭部分▲を目にしたとき、(ああやっと、こういう時代になったんだなあ)と感涙にむせいだ。「20~30代を中心にビジネスリュックを利用する人が増えてきた」とのことだが、そんな彼等がクソガキあるいは生まれた頃から、私はリュックサックを職場に持参していた。つまり、「私が時代を作ってきた」と言っても過言ではないからだ。

でも読み進めるうちに印象は変わる。日経夕刊掲載時は「仕事リュック 背負うべきか背負わざるべきか 不相応の印象なお 企業訪問時は注意」という長ったらしいタイトルだったことからもわかるとおり、全体的には「ラクだからって、お気楽にリュックなんか背負ってんじゃねえぞ」という雰囲気に充ち満ちた「アンチ・リュック」な記事である *1

そんな記事の中に、「お気楽リュッカー」に警告する意図で「リュックをビジネスで使う場合の注意点」がいくつか書いてあるが、

  • 取引先の受付ではリュックは手に持ち直す
  • 電車やエレベーターなど混雑した空間では前に抱える
  • エスカレーターの上りでも背負ったままにしない

私の場合、これらはすべて昔も今も当たり前にやっていることである。「他人の気配、パーソナルスペースを意識する」ことができないヤツは、リュックを背負う資格がない。

ただし、
「初対面の相手、特に目上の人と会う場合は、まずは利用は避けた方が無難」
とも書いてあって、この点だけは「はあ?」という感じである。登山に使うようなヤツならともかく、ビジネス用として売られているものを拒絶する人がいまだにいるのだろうか。

いかにも、このおっさん▼とかが言いそうな話だ。

business.nikkeibp.co.jp

ジャケットの下に僕らが着ているシャツというのは、本来は下着と同じ。だから、人前でジャケットを脱ぐというのは、下着の露出にほかならない。

頼むから、社内でスリッパを履いてくれるな:日経ビジネスオンライン

私も「社内でスリッパ」は最低だと思うが、このおっさんが鼻で笑う「半袖シャツ」はバリバリに愛用している。だいいち、クソ暑くジメついたこの国の真夏に上着を脱がないなんて、よほどオフィスを寒くするか、汗だくになるかどちらかしかない。

ポリシーにこだわるのは結構だが、きっと周囲は迷惑しているだろうし、ほとんどの人間に共感を得られないであろうコダワリをこうしてメディアで自慢ゲに語るのも、非常にカッコ悪い。

そんなフォーマル(笑)にうるさい牧野さんは、ビジネスリュックについてどう考えているのだろうか。

(つづく)

 

*1:違うのはタイトルだけで、日経新聞夕刊も「NIKKEI STYLE」も本文はまったく同じ