伊豆半島一周リハビリツーリング

2019年3月9日、約1年ぶりにロングツーリングに出かけた。行き先は何のクフウもヒネリもヒラメキもない、いつもの伊豆半島である。



 

2018年のテイタラク

前回の記事にも書いたが、2018年はほとんどオートバイに跨がらなかった。

私はどんなに短い距離でも、オートバイに乗った時はGPSログを記録してGoogleマップにインポートかつ保存しているのだが、それらを確認すると2018年の月別乗車回数は、

  • 1月:2回
  • 2月:1回
  • 3月:2回(うち1回は伊豆半島一周)
  • 4月:1回
  • 6月:1回(タイヤ交換)
  • 9月:1回

たったこれだけ。

かつて自身で定義した「700km以上または10時間以上」という「ロングツーリング基準」を満たすのは、3月下旬に行った伊豆半島一周ツーリングのみであった。

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2018年3月28日、西伊豆・富士見彫刻ラインにて

2月・4月の各1回と3月のもう1回は、服装が自由な休日出勤のついでに乗っただけなのだが、そんな状態でも6月に大枚はたいてタイヤを交換したのは、勤続10年のご褒美として取得できる長期休暇を利用して、8月か9月に“夢”の北海道ツーリングに行くつもりだったからだ。

でも結局、「オトナの事情」でそれも断念せざるを得なかった。

そしてそれ以降、9月の終わりに朝の2時間ほどチョイ乗りしただけでオートバイへの興味さえすっかりなくしてしまったのは、“夢”が潰えた反動だったのかもしれない。

 

恐ろしく寒い朝、電熱ウエアに救われるが・・・

気温1.5℃にも耐えられる温かさ

11月に「e-HEATシリーズ」を買ったのは、自分自身に「オートバイに乗る動機」を与える意味もあった。 

toshueno.hatenablog.com

でも結局、最初に着用したのは年が明けた1月中旬。その後、前回記事の6カ月点検の時も含めて2度ほど着用したが、いずれもそこまで気温が低くはない日中であった。

だが今回は違った。
2019年3月9日、朝食も摂らずに拙宅を出たのは、午前6時45分頃。

愛車・ブルバードM109Rには「外気温計」なんていう気の利いた装備はないので実際に何℃だったかはわからないが、気象情報サイト「tenki.jp」によれば、この日の午前6時台の湘南地方の気温は「1.5℃」。電熱ウエアの威力を試すには、“絶好”の気温である。

いつもなら、拙宅を出てすぐに渋滞にブチ当たってウンザリする国道1号も、早朝だけあってまだガラガラ。難なく新湘南バイパスにたどり着いた。富士山が、まるで古びた映画館のスクリーンのように、淡い色合いで佇んでいた。

以前のプアな装備であれば、あまりの寒さに富士山どころではなかっただろうが、今の私には電熱ウエアがある。手の甲と、背中全体にじわりと伝わる温かさといったらどうだ。コイツはスゴい。

ん?腹にも発熱体が仕込まれているはずだが・・・まったく感じない。
ま、いいか。背中だけでも、その恩恵は多大なものがある。

買ってよかった。
楽天ポイント込みだと36,159円も支払ったのに、ヒト冬でちゃんと使ったのは今回が初めてだけど。

ちなみに下半身は、下着と「UNIQLO謹製ヒートテックモモヒキ+UNIQLO謹製フツーのジーンズ」のみである。自称ダテ男たるもの、モコモコしてダサさマックスの「オーバーパンツ」なるモノを身に付けるぐらいなら、オートバイになんて跨がらない。

ザ・雪国の会津で育った幼少期、今は亡きおふくろさんがよく言っていた。

「上にちゃんと着とけば、下は何とかなっから *1
と。まさに、「三つ子の魂百まで」である。違うか。

なに?パンツもソックスも電熱ウエアにすればいいだろって?
世の中にはそんなフル装備なヤツもいるだろうが、そこまでするなら「もうクルマに乗れよ」って言いたいわ。

突然入らなくなった電源

新湘南バイパスから西湘バイパスにかけての、高速走行では本当にe-HEATに助けられた。ジェットヘルメット(ショウエイ・J-Cruise)のシールドのスキマから入り込む冷気で、鼻水ジュルジュルになったこと以外には、何の問題もなかった。

ところが、熱海海岸自動車道の料金所で、急いでグローブを取ったのがいけなかったのだろうか。あるいはケーブルを接続したままで、グローブ本体をちょっとプラプラしたのが良くなかったのだろうか *2

その後、極度の頻尿のため2回ほどトイレ休憩した後、橋本・エリツィン会談(川奈会談)で有名な「川奈ホテル」の少し先にある、「南條たばこ店(車椅子のおばさんは元気だろうか)」でいつものコーヒー休憩を取ったあたりで、電源がまったく入らなくなってしまった。しかもグローブだけでなく、インナーウエアの方もだ。

「っんだよ、これーっ」と年甲斐もなくイラだちながら、インナーウエアを脱いで内部の電源プラグを接続し直したり、M109Rのシートを開けてバッチョクケーブルのヒューズを挿し直したりしてみたが、一向に改善しなかった。

まあこの日は、早朝を除けば帰宅時刻の19時まで気温が高かったので問題はなかったものの、大枚3万数千円も支払った商品がこんなことでは困ってしまう。

シロートの私にはどうしようもないので、2019年3月11日、RSタイチのカスタマーサポートに電話して(相手のおねえさんはとても感じが良かった)、先方にシリーズ一式を送付することになった。

さて、どうなることやら。

 

(比較的)誰もいない海でひとり

この日は好天に恵まれた土曜日ということで、尾ヶ崎ウイングとか奥石廊崎(別名「ケープあいあい(笑)」)とかのアクセスしやすいポイントは、クルマとオートバイでいっぱいであった。

なので、そういう場所は当然スルーである。なに、幹線道路を逸れてグネグネ道を入っていけば、ヒトがめったに来ないスポットはいくらでもあるのだ。

そのひとつが、「入間海岸」。

静岡県道16号からの入口にあった、「一休さん」をオマージュしたシンボリックな看板はいつの間にかなくなっていたが、奥石廊崎方面から行く場合は「入間第2トンネルのすぐ先」と覚えておけば迷うことはない。
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この日も入り江の海岸で、兄弟だろうか、小さな男の子ふたりが元気に遊んでいた以外は、ヒトの姿は皆無であった。

 

伊浜海岸を“ハッケン”する

この日の一番の収穫は、「伊浜海岸」を“ハッケン”したことであった。

これまた奥石廊崎方面から行くと、自然の猿たちをアコギな商売に悪用した稀代のボッタクリ施設「波勝崎苑」への入口の少し手前、 

toshueno.hatenablog.com

右手にエネオスのガソリンスタンドがある交差点の左側に、「伊浜海岸」と書かれたウッディな看板がある。

もちろんその看板はいつも目にしていたのだが、「どうせただの海水浴場だろ」とタカをくくって、一度も“潜入”したことがなかったのだ。

信号待ちをしていたら、後ろから車種は忘れたが250ccと思しきオートバイと、なにゆえ街中でそんなムダにデカい図体のクルマに乗りたがるのかまったく理解に苦しむトヨタ・ランドクルーザーがやって来た。

(コイツらといっしょに走るのはヤダなあ・・・)
(かと言って、ムリにトバすのもアホみたいだし・・・)

そんなことを思って、急きょ左折した。

そして、狭隘なグネグネ道を抜けると、そこにはまさに「誰もいない海」が広がっていた。
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「おー、いいねえ」と独り言ちながら、しばし海を眺める。
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海がまったくない土地に生まれ育ったくせに、キラキラと輝く海を見ているだけで心が休まるのが不思議だ。
中島みゆき師匠に倣えば、私は昔々、魚だったのかもしれないね。

ああ人は昔々鳥だったのかもしれないね
こんなにもこんなにも空が恋しい 

www.oricon.co.jp

ふと山側に目をやると、ガランとした空き地にポツンとひとり、イスに座ったジイさんが数十メートル先からじっとこちらを凝視している。その姿は、実写版テレビドラマ「この世界の片隅に」で、塩見三省氏が演じていた老人役を連想させた。

(あら、ジイさんのジャマしちゃったかな)
少しだけ悪いと思いながら、愛車の写真を撮りまくる。
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ここは海沿いの高台にある道路上なのだが、私が停まっていた10分ほどの間にクルマは1台も通らなかった。

ご覧のとおり、サビついたワイヤー式ガードレールの他にはジャマな構造物もなく、なかなか格好の撮影スポットである。
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近くで見れば“ヤレ”の目立つ、11年落ちのマシンも、こうして海をバックにすればまだまだイケている(ように思い込める)。

しばらくこちらを見ていたジイさんも、いつの間にか私とは反対側の、海の方に身体の向きを変えていた。
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海を独り占めしているジイさん *3 には悪いが、「入間海岸」や「長井崎」と同様に、ここ伊浜海岸も「伊豆で必ず立ち寄るスポット」に加えることにしよう。

 

霊峰富士と井田ブルー

この日は、ほんの一瞬しか太陽が隠れないほどの“ほぼ”快晴であった。

ただ、晴れてさえいれば富士山が見えるわけではない。
晴れていても霞んで見えないことが多々ある、それが伊豆半島から駿河湾越しに望む富士山である。

こうして、望外なほど美しい霊峰を望める日は、ツーリングの楽しさも倍増するのだ。
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井田(イダじゃなくて“イタ”)海岸」は、数少ない「誰にもジャマされない富士山スポット」である。
この日も、有料らしいが一度も金を払ったことはない駐車場 *4 にクルマがわずか3台、オートバイは皆無であった。

こうして毎回同じような写真を撮るのだが、何度撮っても飽きることはない。富士山は偉大だ。
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富士山と「井田ブルー」な海に見惚れていたら、たいそうな重装備のダイバーが3人、陸に上がってきた。

(このクソさみいのに、ご苦労なこったな)
そう思ったことを帰ってからかみさんに話したら、ダイビング経験者の彼女が言った。

「そういう人達って『ドライスーツ』着てるから、ぜんぜん寒くないんだよ」
「『ドライスーツ』って水が入ってこないから、中にセーター着たりすんだよ」

まじか。

私は、今の今まで、海に入る時に着るモノはすべて「ウェットスーツ」かと思っていた。「ドライスーツ」なるものがこの世の中にあることを、ヨワイ51にして初めて知った。

ま、このクソさみいのに海に潜るんだから、水が入ってこないヤツを着てるってのは容易に想像できるのだが、「ウェットスーツ」と「ドライスーツ」という明確な違いがあることを知らなかった。確かに、濡れないのに「ウェット」じゃおかしいもんね。

勉強させてもらいました。
ありがとう、井田ブルー。 

 

ツラいツラいもツーリングのうち

晴れ渡る空。

穏やかな風。

美しい海。

絶景の霊峰富士。

バリエーション豊かなグネグネ道。

伊豆半島一周に必要な要素をすべて満たしたツーリングは、走行距離400kmにも満たなかったが、午前6時45分に拙宅を出てから午後7時ちょうどに帰宅するまで、トイレといつものコンビニ飯休憩を除いても、11時間近くは走り続けた(はず)。

ほぼ1年ぶりのロングツーリングは、さすがにキツかった。
帰ってから、拙宅の階段を上がれなかったほどだ。

そして、2017年ゴールデンウィークに6日間ほぼぶっ続けで走り続けて、完全にM109Rに馴染んだと思っていたこのカラダが、すっかり“初期化”されてしまっていた。

(しっかし乗りづれえオートバイだな・・・)

ずっとそう思いながら走っていた。
そりゃあPCXに慣れ切ったカラダには、バカデカくてクソ重たいM109Rは馴染まないだろう。

それでも、どんなにツラい記憶が残っても、「また行きたい」そう思えた。
これもまた、ツーリングの一環なのだ。
そんな思いは、ずいぶん久しぶりだった。

願わくば、あの違和感が、年齢的なカラダの衰えによるものではありませんように。

  • 走行距離=387km
  • 走行時間=10時間1分 *5
  • 平均燃費=16.96km/L 

 

*1:≒上半身さえちゃんと着込めば、下半身は何とかガマンできるのよ

*2:つか、電源プラグ固すぎ!ちゃんと奥まで挿入しないと電源が入らないから思いっきり奥までブチ込むのだが、そうすると今度は、かなり力を入れないと抜けなくなってしまう。チツケイレンかよ

*3:まあ実際には、高台にある道路から降りた小さな漁港に、漁師だか一般の釣り客だかが数人いたのだが

*4:私はハイシーズンの伊豆には絶対に行かないので

*5:Googleマップ・タイムラインに記録されたオートバイ乗車時間。出発から帰宅まで、12時間15分。どう考えても2時間以上も休憩していない。走行距離もトリップメーターの387kmに対して「329km」しか記録されていない。貴重な個人情報を惜しげもなく提供しているのだから、もっと正確に計ってね、Googleさん!