「Honda Collection Hall」に行ってきた:二輪市販車篇(3):そして60年代へ

アクセス数増加にもまったく貢献せず、かみさんにも「オモシロくねえんだヨ」と一刀両断されている「Honda Collection Hall 訪問記」だが、それでも私はめげずに書くのである。
頭脳警察による稀代のメッセージソング「それでも私は」を脳内でリフレインしながら。

 

それでも俺は 求め続ける

何かを 何かを

 - 「それでも私は」頭脳警察 



 

「神社仏閣デザイン(笑)」と「ディスカバー・ジャパン」

ホンダ ドリームC70 (1957)

クラシカルかつ華奢な雰囲気のマシンが並ぶ「1950年代のコーナー」において、ヒト際異彩を放っていたのが、この「ドリームC70」であった。
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(ヤケに“ボテッ”っとしてんなあ・・・)と思ったのだが、それもそのはず、本田宗一郎氏が京都・奈良の神社仏閣を見てまわり、そのカタチにインスパイアされて創り上げたデザインなのだそうだ。

神社仏閣の「重厚感」を、(残念ながら説明書きプレートに隠れて見えなかったが)リアサスのカバーに至るまで各部に散りばめた角張った意匠によって表現したのだろう。それゆえ、「神社仏閣デザイン」と呼んでいた、とのことだ。

現地では(なんつーネーミングだよ(笑))と笑ってしまったのだが、冷静に考えると、国鉄の「ディスカバー・ジャパン(1970~)」より10年以上も早く、日本の伝統カルチャーを見つめ直した本田宗一郎氏の先見の明はスゴい(※若干コジツケです)。

現代の感覚で見ると、この「ドリームC70」はこれっぽっちもカッコ良くはないのだが、「欧米のサルマネ」から脱却して、日本独自のスタイルを創り上げようとしようとしたホンダの心意気が伝わってくるデザインではある。

ホンダ ベンリイ CB92 スーパースポーツ (1959)

この各部が角張った意匠は、明らかに「神社仏閣デザイン」の流れを汲んでいる。f:id:ToshUeno:20160212134807j:plain「CB」はホンダの歴代スポーツモデルに与えられる称号だが、それを最初に冠したマシンが、この「ベンリイ CB92 スーパースポーツ」である。よく見るとウインカーがないので、いわゆる「市販レーサー」の元祖なのだろう。

ちなみに、「ベンリイ」というのは字面のとおり「便利」をもじった車名で、現代では商用のスクーターに用いられている。

そんな車名に「スーパースポーツ」を合わせるのは違和感があるのだが、実用車の「ベンリイ C92」を高性能化してスポーツ向けにしたので、こんなことになったそうだ。

いまや「CB」と聞けば「確固たるブランド」をイメージするのだが、始まりは案外いい加減なものだったようだ。

 

そして、真”のスーパースポーツへ

ホンダ ドリーム CB72 スーパースポーツ (1960)

「神社仏閣(笑)」からようやく脱却して、グッと現代的な、流麗なデザインになった。
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さらにフロントフォークも、「ベンリイ CB92」までの古めかしいボトムリンク式から、現代的なテレスコピック式になっている。

このあたりから雑誌等で一度は見た記憶があるマシンばかりで、(うわ、こんなん初めて見たヨ!)ということはなくなった。

ホンダ ドリーム CB450 (1966)

そしてこのマシンになると、もはや「王者の風格」である。
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泣く子も黙る「市販車初のDOHCエンジン」、笑う子もシュンとなる「最高出力43PS / 8500rpm」。f:id:ToshUeno:20160212135003j:plainここまで来れば、いま現在の新東名高速道路でもじゅうぶん流れに乗って走ることができるだろう。

「エリートだけが乗るオートバイの王者!」
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この時代には、オートバイでさえ上級車種にはエリートじゃないと乗れなかったようだ。私のように平凡な負け組庶民でも、「スズキ・クルーザーのフラッグシップ=Boulevard M109R」に乗れる世の中になって良かった、本当に良かった。

昔からそうなのだが、ホンダのホームページでおもしろいのは、過去のプレスリリースがそのまま掲載されていること。

この「ドリーム CB450」もご多分に漏れず、当時の臨場感アフれるプレスリリースが掲載されている。

 

独得のDOHCエンジンを塔載した、高速、高性能の大型モーターサイクル。

豪快でダイナミックな迫力を持つデザイン、機動性あふれる王者の風格。エンジン、フレームともすべてに一段と磨きをかけました。

- 新型 ホンダドリーム CB450 

どんだけ自画自賛なんだよ(笑)。

 

スクランブラーいろいろ

1960年代になると、いわゆる「スクランブラー」タイプのマシンが登場してくる。f:id:ToshUeno:20160212134840j:plain

ホンダ ドリーム CL72 (1962)

名車「ザ・スクランブラーCL72」は、なんと説明書きプレートを撮ったこの写真しかなかった。
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そう、実はあんまり・・・というかまったく、オフロード系には興味がないのだ。 

だいいち、それ専用に整備されたオフロードコースを走るならともかく、わざわざ山の中に分け入って走る意味がわからん。山林を嬉々として走っている連中は、知らず識らずのうちに昆虫を殺し、植物を痛めつけ、引いては生態系に悪影響を及ぼしていることを自覚するべきである・・・ま、オートバイに罪はない。閑話休題。

ホンダ ベンリイ CL125

いわゆる「ストリートスクランブラー」の元祖。f:id:ToshUeno:20160212135228j:plain
ちなみに、奥に写っているのが「ドリーム CL72」である。

ホンダ ドリーム CB450D スーパースポーツ

対米向けの重量級スクランブラー。Dは、デザートスクランブラーを意味する。
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ちなみに、「デザート」は「dessert」じゃなくて「desert」ね。
つか、「メインディッシュの後に食べるヤツ」と「砂漠」って、sの数が1コ違うだけなんだ(驚)。ガキの頃に覚えたような気がしないでもないが、完全に忘れてた。

ヤマハ トレール 250 DT-1

やはり今回も、トリはヤマハのマシンなのである。
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なんでだろう?「DT-1=稀代の名車」というバイアスがかかっているのか、ホンダのスクランブラー群より、こっちの方が断然カッコ良く見える。

▼なぜかヒッピースタイル

第2節 DT-1誕生 - ヤマハオフロードマシン開拓史 “オフロードマニア”

つか、「パッソル」の写真を改めて見たときも思ったんだが、ホンダのマシンがすべて新車のごとくピッカピカなのに対して、ヤマハのマシンは年式なりのヤレた感じがある。

これ、わざとやってんのかな? 

(つづく)

 

*1:1990年頃に“イ”をちっちゃくしたそうだ