トヨタは「ヨタハチ」を忘れていなかった
トヨタスポーツ800の話
昨年4月(2015年4月)、トヨタ博物館に行った。
数多あるクルマの中で、見たかったクルマのひとつ、見られてうれしかったクルマのひとつが、「トヨタスポーツ800 (1965)」であった。
- 全長 3,580mm
- 全幅 1,465mm
- 全高 1,175mm
現代の軽規格(3,395mm×1,475mm)とさほど変わらない(全幅は収まっている)この小さなクルマは、
- エンジン種類 水平対向2気筒OHV
- 総排気量 790cc
- 最高出力 45ps/5400rpm
- 最大トルク 6.8kg-m/3800rpm
という小さなエンジンで、
- 最高速度 155km/h
- 0→400m加速 18.4秒
という性能を叩き出す・・・って、威張るほどの性能じゃあない。
つまり、「パワー」で他車を圧倒するのではなく、「『空気』や『風』をうまく利用しながらスポーツを楽しむ」という発想に基づいて作られた*1、真のライトウエイトスポーツなのである。
こういう発想については、4代目ロードスター(ND)の開発責任者・山本修弘氏が、白眉のクルマ・コラム「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」で語っている。
僕らNDで速く走ろうなんて思っていないから。そんなクルマ、重いエンジン積んでビュンビュン走るようなクルマは、ほかでいくらでも売っているから。そんなのと競争して「ND遅い」と言われても一向に構わない。僕ら全然気にしてない。〔中略〕僕らは速いスポーツカーを造ることを目的になんかしていない。価値は全く違うところにあるんですから。
山本氏が言う「まったく違うところにある価値」を50年も前に具現化していたヨタハチは、とても魅力的なクルマだが、もしこの旧車を実際に所有するとしたら、維持していくのは並大抵のことではないだろう。
その辺りは、実際にヨタハチ・オーナーであったid:wakumasaさんのブログに詳しい。
平成のヨタハチ
冒頭に貼り付けた過去記事で、ヨタハチについて私は以下のように書いた。
CGTVの田辺さんも昔乗ってたらしい。 当該番組のこの博物館の敷地内でこのクルマとは別の個体(色が違うので)を走らせた回のナレーションで、「トヨタはもう一度こういうクルマを作ってはくれないものだろうか」と言っていたが・・・
絶対作らないと思う。
- トヨタ博物館:日本車編 - 遠くへ、もっと遠くへ
そしたら、どうだ。
画像出典:【東京モーターショー15】トヨタから小型FRスポーツ「S-FR」登場 | レスポンス
まあ正直、まったくカッコいいとは思わないが、自動運転車や、庶民には買えるはずもないスーパーカーばかりに注目が集まるモーターショーに、あの”大トヨタ”がこんなコンセプトカーを出展するだけでも、とても喜ばしいことなのだ。
なにがうれしいって、このコンセプトカーは「3ペダルの6MT」なのである。
マニュアルトランスミッションをこよなく愛する私にとっては、自動運転車の時代になっても、四肢を駆使してスポーツを楽しむクルマが残る(かもしれない)ことが何よりうれしい。
モリゾウさんのことだ。いつかきっと、このコンセプトカーを発売してくれるはずだ。
そのときは、この”カワイイ”んだか ”イカツイ”んだかよくわからないデザインも、大きく見直されていることだろう。
*1:「ノスタルジックヒーロー Vol.63」の記事の受け売りです