日産はそんなにダメダメなのか

ここのところずっとオートバイネタばっかりだったので、たまにはクルマのことも書いてみよう。稀代のクルマ関連コラムが「日産」で盛りあがっているので、その件を採り上げる。



 

いま「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」がおもしろい

1日を何倍にもして生きられる人

日経ビジネスオンライン (略称「NBO」) で、2009年から長期連載中の「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」。「フェルディナント・ヤマグチ」と名乗る、友人知人の顔は曝け出しまくるくせに自分の顔は一切公開しないというナゾの卑怯者による、シロウト目線で繰り広げられるインタビュー記事が秀逸な稀代のクルマ関連コラムである。

以前は、「ヨタ話」と称しつつ、フェルディナント氏ご自身のリア充ぶりをこれでもかとひけらかす1ページ目は飛ばして読んでいたのだが、このフェル氏の「リア充」ぶりは、そんなお手軽な言葉で片付けられないほどスゴい。

毎晩のように誰かとの飲み会に顔を出し、週末はやれトライアスロンだ、やれスキーだと日本各地や海外に遠征しまくり、たったの三連休でバリ島へバカンスに行く。「1日を何倍にもして生きられる人」つまり「天才」とは、こういう人のことを言うのだろう。私などとは人体のスペックが違いすぎるのだ・・・そう気づいてからは、無意味なネタみソネみに囚われることもなくなった。記事の1ページ目を額面どおりに受け取るならば、(こんな風に生きられたら、人間に生まれた甲斐があるなあ)と毎回感心するのである。

そんな「~走りながら考える」で現在、21世紀のハコ型スポーツカー「日産・GT-R」が採り上げられていていて、2017年3月現在は開発責任者である日産の田村宏志氏のインタビュー記事が延々と続いている。

business.nikkeibp.co.jp

日産車オーナーのハシクレとしては、日産がその存在意義を保つために守り続けている「GT-R」には当然興味があるし、責任者の田村氏も話はオモシロいし非常に“見栄え”のする御仁なので、いつも以上に楽しませてもらっている。

EVERNOTEのナゾ

ところで話は全然変わるが、ひとつおもしろかったのは「~走りながら考える:第377回」をNBO上からEVERNOTEに保存したら、ノート一覧のサムネイルに、フェル氏がバリ島で食したというブタの丸焼きの画像が“採用”されたことだ▼(赤矩形内)。f:id:ToshUeno:20170329124258j:plain
右側ペインの本文を見てもらえばわかるとおり、トップの画像は“時の人”アッキ-の写真である。ブタの丸焼きは1ページ目の6枚目 (一番最後) の画像なのだが、なぜかよりによって、このグロ画像がサムネイルになった。

EVERNOTEのアルゴリズムは、いったいどうなっているのだろう。非常に興味深い。

 

日産をディスり過ぎな「読者コメント欄」に思う

さて今回、「~走りながら考える」をブログのネタにしようと思ったのは、読者コメントの数々にいろいろと思うところがあったからだ。

中には「正直つまらん。何でこんな記事掲載するのか不明」なんて、それこそ意味不明なことをわざわざ書き込むバカもいるが (タダなんだからツマらなかったら読まなきゃいいだけの話)、「ボロクソ罵倒系=8割:ホンワカ温情系=1割:その他=1割」と分かれてはいるものの、どのコメントからも「皆さんナンダカンダ言って日産のことが大好きなのね~」というのが伝わってきて、非常に“読み甲斐”がある。そして、「クルマ好きにとって日産とはどういう存在なのか」ということに思いが至るのだ。

「スカイライン」のアイデンティティ

例えば、数少ない「ホンワカ温情系」には、こんなコメント▼がある。

レクサス日本展開時からIS、HS、GSと乗り継いできましたが、レクサス車は確かに良いクルマではあるのだけれども、何か「退屈」でしたので、V37スカイラインに乗り換えました。

未成熟かも知れなくても先進技術を惜しげも無く使うクルマがスカイラインのアイデンティティーだと理解しています。記事にもあったDASが不自然だの何だの喧しいですが、クイックからスローまでハンドリングを切り替えられ、まるで違うクルマに変化するし、「やっちゃえ」的な技術も満載だし、その点においても、インフィニティQ50≒V37スカイラインはとても良いクルマで、少なくとも退屈はしません。

レクサスを数台乗り継いだ後で現行のV37スカイラインに乗り換えられるのだから、経済的にソコソコ余裕のある人だと思われるが、「退屈」をキーワードとして挙げつつ、レクサス(トヨタ)と日産を対比させている。近頃の (章男さんが社長になって以降の) トヨタ車が「退屈」だとはこれっぽっちも思わないが、実際に何台も所有した人がそう言っているのだから、何某かのそういう要素はあるのだろう。

この方が「先進技術を惜しげも無く使うクルマがスカイラインのアイデンティティ」と書かれているとおり、「その時代における最先端の技術が反映される」のも、スカイラインというクルマが持つ特性のひとつであったことに異論を挟む人はいないはずだ。

「V35以降はスカイラインじゃない!」などと、「おまえはいったいナニ様なんだよ」的な主張をノタマうヤカラは多いが、DASを始めとした最先端技術を詰め込んだ「INFINITI Q50」を日産自身が「これが現在のスカイラインです」と売っているのだから、V37も立派なスカイラインなのだ・・・

・・・たとえ、リアエンドにうっすらと目立たなく、その車名が掲げられているだけだとしても▼。
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(画像出典:日産 新型スカイライン(ハイブリッド・V37型)【オートックワン】)

「GT-R」 なんて買えるワケない

ボロクソ罵倒系には「そんな昔の車名を並べられてもなあ」ってコメントが散見されるが、既にカタログ落ちしたスカイラインクーペ (CKV36) に乗りつつ、「次のクルマ」が日産のラインナップの中に見出せない私の気持ちを見事なまでに代弁してくれているこのコメント▼には、全面的に賛同する。

田村氏の気持ちは分からない訳ではない。35GT-Rは凄いしいつか乗ってみたいし、可能なら所有したい。でも買える訳ない人が大多数

GT-Rをイメージリーダーとして、現実に買える「普通の」スカイラインが欲しい。GT-Rを造っているメーカーが出しているシルビア/180SXが、プリメーラやブルーバードが欲しい、そういう事なんだけど。

日産のイメージが悪いというのはそういうスタンスに対してなんですよ。技術が低いなんてこれっぽっちも思ってない。86やロードスターが売れている(というかよく見る)理由をどう考えているのか?

〔中略〕2リッター前後の乗用車タイプのスポーティーカーが出せない事情があるならむしろその本音を聞きたい。

「買えない人」ではなく、わざわざ「買える訳ない人」と書いている点に思わず笑ってしまった。もちろん私も「買える訳ない人」のひとりである。個人的にその外観は決してカッコいいとは思わないし、発売から既に約10年が経過してほとんど興味もなくなっているが、評論家諸氏が未だに高評価を与えていることからも「GT-R」がスゴいクルマであることは確かなのだろう。

ただこの人の言うとおり、日産の場合はラインナップの頂点に「GT-R」があるとして、その下に来るクルマがない (いまや2シーターの「フェアレディZ」しかない)、という点が問題なのだ。

「レクサス・LC」には本当に驚いた

それに対して、トヨタはどうか。「トヨタ 86」が世に出たとき、(こんなの買うヤツいるのかな?)と私は思ったが (すみません)、いざフタを開けてみればスカイラインクーペなど比較の対象にならないほど売れている。

そして、「レクサス・LC」である。
http://st.motortrend.com/uploads/sites/5/2016/02/Lexus-LC-500h-front-three-quarter.jpg
(画像出典:2018 Lexus LC 500 Packs 471 HP, Goes On Sale Next May)

よもやこんな超高級スタイリッシュ・クーペをトヨタが発売するとは、10年前に誰が想像しただろうか *1。「GT-R」が欲しいとは全然思わないが、「レクサス・LC」は欲しい。もちろん、こっちも買えるワケはないのだが。

「レクサス・LCがあり、その下に同・RCがあり、さらにその下に86がある」そんなトヨタだから、ひと頃話題になった「S-FR」のウワサ的な記事を目にしても、(今のトヨタだったらホントかもね)と思えるのだ。

自動車雑誌には「シルビア後継車が開発されている」なんて話がマコトしやかに掲載されているが、現状の日産からそんなクルマが出てくるとは到底思えない。事程左様に、日産とトヨタとの間にある壁は、もう二度と越えられないほど高いものになってしまった。

 

すべては「リーフ」のために

「東京には空が無い」と高村智恵子が嘆いたように、「日産には欲しいクルマが無い」と、上記の読者コメント欄に書き込んだ多くの人々は嘆く。(んなワケねえだろ、何かしらあるだろ)と思いつつ、改めて日産車のラインナップを眺める。

www.nissan.co.jp

(・・・ほんまや!)

去年 (2016年) の1月までは、最後の国産大排気量MTクーペ「スカイラインクーペ」が、ゴミ溜めのように鈍くくすんだラインナップの中で唯一の眩い光を輝かせていたが (少なくとも私の目にはそう見えていた)、発売から8年以上が過ぎ、毎月の販売台数が数台 (ヒト桁(笑)) というお寒い状況では、どんな名車でも生き長らえるのは難しいだろう。

現状の日産車の中で、強いて1台挙げるとすれば「フェアレディZ」ぐらいしかないが (もちろんMT)、2シーターだし、あのヘッドライトのカタチがどうにも受け入れ難い。

どうしてこんなことになってしまったのか。理由はカンタンである。リーマン・ショックによって目減りした資金の多くを、100%電気自動車「リーフ」および電気自動車関連インフラに投じたからだ。

この件については、今月 (2017年3月) いっぱいまで日産のCEOであるカルロス・ゴーン氏が、今年の年明けから長期連載した日経新聞「私の履歴書」の中で次のように明言している。

リーマン・ショックには思いがけない成果もあった。昨日の章で書いたが、危機が起きても、将来のために守るべきプロジェクトとは何かがはっきりした。

電気自動車だった。日産は中期計画「GT2012」を凍結したが、そこに盛り込んだ電気自動車の開発だけは、投資の方針を軌道修正した後も継続した。

- 2017年1月21日 日本経済新聞「私の履歴書」

(※ちなみに日経新聞に金を払わなくても、ゴーンさんの「私の履歴書」は日産自動車ニュースルームで公開されている →「私の履歴書 第六章: 危機とチャンス」)

凍結された中期計画「GT2012」の公開資料を見てもそれらしき文言は見当たらないが、もしかすると「シルビア後継車」の開発もその中に含まれていたのかもしれない。「月に200台かそこらしか売れないスポーツカーなんかほっといて、今は電気自動車だ!」そんな議論がなされたのかもしれない。

無論イチ素人ユーザーに過ぎない私に真実を知る術はないが、電気自動車に多額の投資がなされたことだけは、一度「リーフ」をお試しレンタルし、代車でも乗った私にはわかる。要は2回借りただけなんだが、その間に10回以上充電したものの、料金は一度も支払っていない (会津若松市役所で500円“寄付”をしただけ▼)。

toshueno.hatenablog.com

その「電気代」は誰が支払ったのか。そしてすべての日産ディーラーには、モノの見事に高速充電スタンドが設置されている。そこには、相当多額の資金が投じられたことだろう。

すべては「リーフ」のために。

日産車・ラインナップの“頂点”に「リーフ」が配されていることが、日産の“意志”を象徴しているかのようである。

 

最後に「スカイラインクーペ」の件

「“スカイラインクーペ”として販売される」?

「~走りながら考える:第377回」では、ADフジノ氏という人物による最後のコラム欄に「スカイライン」に関する情報が記載されていた。クルマ好き兼スカイラインクーペのオーナーとしてはすべて既知の話だったのだが、次の一節が非常に気になった。

インフィニティは高級ブランドとして、「Q60」というクーペを発表しました。そして実はこれ、国内でも“スカイラインクーペ”として販売される予定です。

「販売される予定」?ADフジノさん、きちんとウラ取って書いてる?どっかの自動車雑誌のヨタ記事を真に受けて、何の根拠もないまま書いてない?確かにそう書いている雑誌もあるが、「販売する予定はない」「(Q60を生産している) 栃木工場では右ハンドル車を生産していない」と明言している雑誌もあるのだ。

はたして、真実はどちらなのか。それを知るための手がかりとして、INFINITIサイトを見てみよう。日本以外で右ハンドルの国と言えば、EU離脱通告でまさに時の国となっているイギリスである。

「INFINITI - UK」の「Q60」はどうなっているかと言うと・・・

www.infiniti.co.uk

はかない私の期待も虚しく、確認できた画像は思いっきり左ハンドルであった▼。
https://www.infiniti-cdn.net/content/dam/Infiniti/2017/Q60/Features/Safety/41009_INF_3072x864_17TDIus_Q60030_F60.jpg.ximg.l_full_m.smart.jpg
(画像出典:INFINITI Q60 Features - Connectivity, Sound & Safety)

(実際は知らないがイメージ的には) 日本より遙かに多くの数がさばけるであろうイギリスでさえ、左ハンドルのまま売られているのだ。

古くは「ホンダ・アコードクーペ」のように、左ハンドルのままメーカーによって正規輸入された例もあるが、日産が「INFINITI Q60」を左ハンドルのまま(笑)、「スカイラインクーペ」として売るなんてことは、まず考えられない。さらにイギリスでさえ左ハンドルのまま売っている「Q60」を、初年度で2,000台も売れれば御の字の日本国内だけのために右ハンドルにすることは、もっと考えられない。

無料サイトとは言え「日経」の名を冠しているのだから、きちんとウラを取った情報だけを記載して欲しいものである。

さらに“調査”して追記

イチ個人のマイナーブログとは言え、いい加減なことは書きたくない。日産が単に手抜きして、右ハンドルの画像を用意しなかっただけかもしれない。ふとそう思って他の車種 (「Q30」や「QX30」) を見たら、どの車種もホームページ上の画像はみな一様に左ハンドルであった。(え?全部左ハンドル?)いやいや、いくら何でもそんなはずはない。

(そうだ、中古車サイトで確認すりゃいいのか・・・)

www.autotrader.co.uk

フツーにありました、右ハンドル(笑)▼
f:id:ToshUeno:20170330170003j:plain
(画像出典:Infiniti Infiniti Q60 2.0T Premium Tech Auto Coupe 5dr)

なあんだ。でも、USアコードのこととか確認してせっかく書いた前段の文章をバッサリ削除するのも忍びない。しばらくこのままにしておこう。

「INFINITI Q60」、ちゃんと右ハンドルも生産されています。でも、これが日本国内で販売されるかは、まだわかりません (国内で販売するに当たって、ハンドルだけ右にすりゃいいってもんでもないしね)。

 

*1:「LFA」はスタイリッシュじゃないし限定生産なので対象外