M109R:インプレッション(1):デザインとライポジ
長年の愛車であるスズキ「ブルバード M109R」のインプレッションは、昨年(2014年)5月に一度書いたが、いろいろと納得いかないところもあったので、修正・加筆し、写真も一部差し替えて再掲する。
概要
スズキ「ブルバード(Boulevard) M109R」は、スズキ謹製クルーザーの“フラッグシップ”である。最初の年式が「2006年式」なので、はや10年目。決してメジャーではないが、息の長いモデルであることに違いは無い。
私はこのマシンの「2006年式」に2007年のほぼ1年間、「2008年式」に2010年から今年(2015年)までの約5年間、合計約60,000km跨がってきた。
ちなみに「ブルバード」というのはいわゆる“シリーズ名”であり、日本語的に耳に馴染まないので、私は「M109R」としか呼んでいないし、このブログでも「ブルバード」と書いたことはほとんどない。
「DOHC・Vツイン・排気量1,783ccのエンジン」や「リヤタイヤ幅240mm」という特徴は、発売当初こそ強烈なインパクトを持って迎えられたが、モーターサイクル全体の流れとして「電子デバイス」や「快適装備」が持てはやされる現代においては、もはや完全に色褪せている・・・と、私は感じているが、愛がなくなったというわけではない。
デザイン
M109Rを「M109Rたらしめている」特徴のひとつが、このデザインである。
2006年秋、私がオートバイ乗りにリターンして最初のマシン=「ブルバード400」を買った上野のバイク屋さん*1に当該マシンの点検で行った時、店頭にどどーんと置いてあったのがM109R:2006年型であった。
まだ国内で販売されるようになってから間もない頃で、初めて目にした時の、“ひと目惚れ”に似たような感覚は今でもはっきりと覚えている。
流麗ライン
今ではすっかり慣れたのでそれほど感じないが、初めて見た時はこのタンクの大きさにビビった。
対して、このタンクから(シートカウルを含めた)テールカウルにかけてのラインは、見慣れた今でもホレボレする。新車の輝きが懐かしい・・・
ただしシートカウル状態だと、荷物の積載はタンクバックやパニアケースなど、容量の小さい物に限られてしまうので、(実際に行く頻度は少ないとは言え)キャンプツーリングを常に念頭に置いている現在は、やむを得ずタンデムシートを付けている。
「シートカウルを外す=タンデムシートを付ける」と、この「タンクからテールカウルにかけてのライン」が崩れてしまうのが、至極残念ではある。
ビキニとタコ
次に好きなのが、このビキニカウル的ライトケースと、無理やりな感じでライザーに付けたタコメータケース。
リミテッドではこのライトケースのメッキ部分を全塗装してしまっているが、やっぱこのメッキと、それによってはっきりと映えるこの曲線がいい。
タコメータも、2010年型からライトケースに埋込になってしまったが、このタコメータケースの意匠が私は好きである。
よって、2台目を買った当時は2010年型が新車で買えたが、あえて「2008年式」を選んだ・・・ま、「新車 >中古車」の差額20万をケチらなければいけないほどに金欠だった、という理由もあったが。
ネタ元を超えて
確かに、コンセプトは「H-D V-ROD」のパクリに違いは無いのだろうが、デザインにおいては「ネタ元」を完全に凌駕していると私は思う。
もちろん、デザインの好みは人それぞれではあるが、シンプルな線でデザインされたネタ元よりも、クルーザーらしからぬ曲線で描かれたこのマシンには「何かを変えてやろう」という意志が透けて見えて、そこに尊さがあると思うのである。
ライディングポジション
このバイクで一番問題になるのが、ライディングポジションかと思う(平均的な日本人体型の場合)。
ホイールベースが長大なことに加えて、いわゆる「バーハンドル」で、かつステップも前方にセットされた「フォワードコントロール」である。
手を思いっきり伸ばし、足を前に投げ出すカタチの乗車姿勢は、慣れていないと違和感を感じるだろう。
なお、ライディングポジションはあくまで“ツルシ”の状態で、かつ私の身長(176cm)の場合の話。
対象外の人は、読み飛ばしてください。
モーターサイクル・エルゴノミクス
Motorcycle Ergonomics でのシミュレーション結果は下図のとおり。
実際も概ねこんな感じだが、私はもっとケツをシート後方に当てるようにして座る。
ハンドル位置
購入を検討し始めて一番最初に跨がってハンドルに手を伸ばした時、太洋モータースの土井さんに向かって、思わず「ハンドル遠いっすね~」と叫んでしまった。
エルゴノミクス的には、フツーに座った感覚ではハンドルが手前に引いてあった方が(いわゆる「プルバックハンドル」が)自然なのに、ずいぶん前方にあるハンドルに違和感を感じたからだ。
土井さんは購入意欲を削がれちゃマズいと思ったのか、「す、すぐ慣れますよ!」と、ちょっと必死だったのが微笑ましく思い出される。
俯瞰した写真だと、シートからハンドルまでの「遠さ」がわかりやすいと思う。
その後、「すぐに慣れる」ことはなかったが、2台合わせて60,000km以上乗った今では、「遠い」と思うことはさすがになくなった。
でもフルロックでUターンする時は、今でもさすがにキツい、というか、思いっきり前屈みになるか、ケツを前にズラさないとアウト側は届かない。
問題は「身長」よりも「手足の長さ」だと思うが、自分の身長を基準にして、かつ手足の長さが身長に比例するのであれば、やはり身長180~185cm辺りが“適正サイズ”なのだろう。
ステップ位置
ハンドルに対して、ステップはもうちょっと遠くてもいい。
別に「足が長い」と言うつもりではなく、半日以上乗ると下半身が窮屈になって節々に痛みが生じてくるからである。
そんな時は、ケツをシートの後端(一段“盛り上がった”ところ)にズラして凌いでいる。
ちなみに、かみさん(身長167cm)が跨がった時は足が伸びきっていたので、このぐらいの身長だとステップは遠いのかしら、と思った。
さらにちなみに、当該人物はオートバイはおろかチャリンコもまともに乗れないので、実際に操作できるのかどうか(ブレーキングやシフトチェンジに問題があるか/ないか)は不明である。
シート高
なお、クルーザらしくシート高は低い(705mm)が、シート幅がけっこうあるので、その低さほど足付きは良くない。
ただし、かみさんが跨がった時は踵までべったりだったので、身長165cm以上であれば、問題になることはないだろう。
(つづく)
*1:太洋モータース http://www.taiyo-motors.co.jp/