ヤマハ・コミュニケーションプラザに行ってきた:その5
ヤマハ発動機(株) (以下「ヤマハ」) の企業ミュージアムである「コミュニケーションプラザ」訪問記の5回目、最終回。よもやま話と、「まとめ」について書く。
教師には見えません
2階フロアで、数の少ない旧車を繰り返し見ていたら、階下に子供たちの歓声が聞こえてきた。声の様子では、ひとりやふたりではない。明らかに集団である。
(ん? なんでこんなところでガキの声が聞こえるんだ?・・・ああ、見学か何かかな)
そう思って間もなく、2階フロアは、歓声を上げながら走り回る赤い体操帽の集団に占領された。
(ま、今日日のガキはバイクなんて興味ねえだろうから、どうせすぐにいなくなるだろ)
姿を見せたときは「おー!かっちょいいーっ」なんて叫んでいた子供たちだったが、案の定ソッコーで飽きて、すぐに姿が見えなくなった。
(ふう・・・┐('~`;)┌ )
その後、場内アナウンスで呼び出された浜松市ナントカ小学校の子供たちは、1階フロアの隅に用意されている視聴スペースに集合していた。これから見学するオートバイ組立工場の「予習」をするそうだ。「YAMAHA体験教室」と銘打ったスクリーンにプロジェクターで映し出されたビデオの内容は、「工場見学ではココを見ろ!」である。
(工場見学か・・・いいなあ、オレも見たいなあ)
コミュニケーションプラザの案内を見ると、ヤマハ二輪組立工場の見学は「小学校から大学までの児童・生徒・学生の団体が対象」と記載されている。
(いっそのこと、引率の教師のフリして付いていってみるか)
子供たちのためのビデオをちゃっかり“盗み見”しながら、相当ムチャな考えが閃いたが、すぐに打ち消した。自分自身を客観視すればわかる。どこをどう見ても、“聖職者”たる教師にはとても見えない。
ひとつぐらいはオートバイ以外の製品を
YXZ1000R SE (2016)
ボートや“マリンジェット(©ヤマハ)”については、散々「スペースの無駄遣い」と書いてきたが、ひとつぐらいはオートバイ以外の製品も取り上げておこう。
マリンスポーツ系のみならず、他にもスノーモービル *1 などという、雪が大嫌いな私にはもっとも縁遠い乗り物まで置いてあって閉口したが (別にヤマハには罪はない)、この「ROV (Recriational Off-highway Vehicles)」なる四輪車だけは、結構カッコいいと思った。
ご覧のとおり▼、サイドにちゃんと“スピード・ブロック”も入っている。
このボード▼では、
荒地や砂漠などさまざまな環境でのスポーツ走行を想定したピュアスポーツモデル
と解説されている。
荒地はともかく、砂漠というと「鳥取砂丘」ぐらいしか思い浮かばないこの国ではまったく馴染みのない乗り物だし、クルマ系のサイトでも見たことがないと思っていたが、「YXZ1000R」で検索すると結構な数のサイトがヒットした。
単に、私自身の興味がそちらに向いていなかっただけだった。世界は広い。私の頭の中は狭い。
それにしても不思議なのは、二輪のオフローダーは全然フツーに走っているのに、こういった四輪の本格的なオフローダーがハナから「公道走行不可」なのはなぜなんだろう、ということだ。ディメンションも「全長3,121×全幅1,626×全高1,834」で「5ナンバー」サイズ、見るからに取り回しもしやすそうなのに。
「カラダが剥き出しだから」って点では、KTM「X-BOW」の方がよっぽどキケンなニオイがするけど・・・
(画像出典:MODEL INFO|X-BOW R|KTM X-BOW JAPAN 公式サイト)
と、X-BOWの画像を見ていて気づいた。まず、タイヤが車体から思いっきりはみ出しちゃってるところがダメなのか。なるほどね・・・。
プラザショップに人影はなく
全体的にこぢんまりとしたコミュニケーションプラザだが、ちゃんと売店はあった。
ただ、Honda Collection Hallの売店「ミュージアムショップ」のように、ミヤゲには最適なお菓子類があるわけでもなく、そもそも店員さんが常駐しておらず (「ご用の方はこのボタンを押してください」的なシステム)、あまりやる気 (売る気) は感じられなかった。よって、このスペースに留まる人もほとんどいなかった。
大好物であるところのミニチュアも、相当ショボかった (相当安いから許せるが)。
このショボさに比べると、Honda Collection Hallにあった「CB92」のミニチュアのハイクオリティさは圧巻である▼。ま、お値段20倍以上 (ほぼ2万円って(笑)) だから、当然っちゃ当然だけど。
(▲2016年2月12日 Honda Collection Hallにて)
(お、こっちのドラッグスターはちゃんとしてん・・・え?)
ドラッグスターの“ちゃんとしてる”ミニチュアは、なぜか「非売品」だった。
ヤマハ・コミュニケーションプラザまとめ
これまで長々と、ヤマハ・コミュニケーションプラザについて書いてきた。
「狭い」「オートバイの数が少ない」と不満も書いた。
「タダなんだから文句言ってんじゃねえよ」というツッコむ向きもあるだろう。だが、それは違う。確かに入館料はタダだが、横浜にある (戸塚だけど) 拙宅から、静岡県磐田市の現地までクルマで行くのに、往復9,900円の高速料金 (高い!) と、超概算で約5,000円のガソリン代 (燃費悪い!)、合計約15,000円もの金がかかっているのだ。
もちろん、その金銭が1円たりともヤマハのフトコロに入るわけではない。でも金を払う側としては、「コミュニケーションプラザのために」金を出していることに変わりはない。同じく入場無料である「スズキ歴史館 *2」には「本当に行って良かった」と思ったし、有料の「Honda Collection Hall *3」も値段以上の満足感を得ることができたが、正直に言って今回は「期待外れ」だった。
タダにしろ、金がかかるにしろ、企業ミュージアムは「来場者に満足してもらう」ことが大事だと思う。なぜなら、ミュージアムの「デキ」が良ければ、その企業のイメージをアップさせ、ひいては、それが企業の成長を後押しすると思うからだ。
「Hondaのみんなが何を考えてつくってきたか。みんなのつくったものを皆さんにお見せすればいい。こんな正直なHondaはどこにもないぞ」
昭和の巨人・本田宗一郎氏のこの言葉が発端になったというHonda Collection Hallは、その言葉どおり、ホンダのすべてを余すところなく私に見せてくれた。
ありがちな“誤解”だと思うが、「ホンダ=スポーツ」という思い込みが私にもあって、(最近のホンダはコンパクトとかミニバンばっかでスポーツカー造らねえし、ほんとダメだな)なんて思っていたが、ホンダはもともとスポーツカーメーカーではないのだ。
F1に代表されるモータースポーツを“有効活用”して果敢に技術革新に挑み、その成果を大衆車に落とし込み、遍く世間に普及させる。それがホンダというメーカーの真骨頂なのだ・・・ということが、Honda Collection Hallに行くとよくわかる。
(▼各時代毎の広告写真を効果的に使っているのもHonda Collection Hallの特徴である。このシビックの写真からは、「大衆車メーカー」としてのホンダの“矜恃”が感じられる)
それに対して、ヤマハ・コミュニケーションプラザはどうか。
「造ったモノを正直に見せればいい」という、Honda Collection Hallの超シンプルなコンセプトに対して、「コミュニケーションがどうたらこうたら」と、その狭さをカバーするための苦し紛れなコンセプトが、どこかマトの外れた展示内容に繋がっているのではないだろうか。
ボートやマリンジェットやスノーモビルを置くのはしかたない。私はまったく興味がないが、それもヤマハの製品だから。
ただ、あの巨大なクリスマスツリーだけは、心から要らないと思う。
(▲3階から見下ろしたら、意外にちっちゃく見えたけど)
(この項おわり)
*1:ヤマハ的にはスノー“モビル”だそうだ
*2:ただし予約は必要
*3:Honda Collection Hallの場合、ツインリンクもてぎの入場料として1,000円かかるが、場内で利用できる商品券が500円分もらえるので、実質500円・・・と言いたいところだが、クルマ/オートバイで行った場合は別途駐車料金もかかる